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「人は無能になるまで出世する」
ビッグモーター社の不正を知りながら、シェアを維持するために取引きを続けた、損害保険会社社長の引責辞任報道で頭をかすめた言葉です。
彼は数十人のライバルをごぼう抜きにしてトップの座に君臨しましたが、一転して奈落へ落ちるスピードも早かったようです。
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人は出世したとしても、それまでのやり方が通用しなくなる段階がいつかやってきて、どこかで「無能な上司」になってしまうというのが、ピーターの法則です。
上級管理職にとって重要なのは、学習能力、逆境に立ち向かう能力、心の知能指数が重点的に評価されますが、リーダー育成のアプローチとして、「リーダーシップ・パイプライン」が注目されています。
グロービス経営大学院の竹内秀太郎氏によると、
トップ・オブ・トップの経営責任者に至る最終転換点では、職務意識において大きな変化が求められる。
全社のリーダーとして、長期的な思考や洞察力が必要になると同時に、四半期ごとに業績を把握し改善していく仕組みを開発しなければならないし、自らの強い意志で経営する一方で、取締役会の助言にも耳を傾けなければならない。
何より、こうしたトレードオフに意義を見出すことを学ばなければならないのである。
このモデルのねらいは、管理職全体の育成の目詰まりを解消し、より多くのリーダーが職位の階段を上って成長していけるようにすること、そして、少数のスーパーリーダーに依存することなく、組織全体に十分な数のリーダーがいるようにすることにある。
と、述べておられます。
人は権力者としての地位が長くなるほど腐敗するのは、古今東西の歴史が物語っています。
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ロミンガーの「7:2:1の法則」では、リーダーの学びは7割は経験から、先輩の薫陶が2割、そして自ら自己啓発に努めることが1割だと説いています。
企業経営者だけでなく、国家興亡のカギをにぎる政治家や官僚こそ、自戒して欲しいものです。