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スターが銀幕で風に揺れた映写会
朝、玄関を開けると、蝉の抜け殻が落ちていました。異常気象で地球が喘いでいますが、小学生の頃のわたしの夏休みの思い出は、校庭で見た映写会です。
銀幕が風に揺れて、映像もマジックミラーのように変形します。鞍馬天狗や、化け猫騒動などの時代劇を楽しみましたが、朝鮮戦争のニュース映像が頭に刷り込まれました。
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ブラジルで開拓農をしていたときには、数ヶ月に一度の映画巡業を待ちわびていました。娯楽のない日本人移住者を対象に、自家発電機を携行して、奥地の日本人入植地を巡回する業者がいたのです。
星空が見える粗末なバラックに、日ごろは顔を合わすこともない移住者が、トラックやトラクターの荷台に、鈴なりになって集まってきます。
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映像も音声も乱れがちですが、観客は映画よりも、懐かしい故国に触れにきているのです。歌謡曲や浪曲のレコード(SP盤)を売る行商人もいました。
農作業のBGMに、広沢虎造の「清水次郎長伝」が、鳴り響いていたのを目撃したこともあります。
ネット社会の現代では、おとぎ話しのような懐古談になりますが、過度な便利さは、人の感性を鈍化させ、ステレオタイプの人間を産んでいる、寂しさを感じる今日この頃です。