魂が揺さぶられた新刊「マザーツリー」
カナダの森林生態学者、スザンヌ・シマ―ドの新刊「マザーツリー」(ダイヤモンド社)に衝撃を受けました。
―これは「どうすれば私たちが森を救えるのか」についての本ではない。これは「私たちが木々によって救われる可能性」についての本であるー
帯のコピーに惹かれて反射的にアマゾンに発注、550ページに及ぶ紙数を早朝から深夜までかけて一気に読了しました。途中で何度も感動の涙がこみ上げ、活字が滲んで見えました。
同書は、樹木が地中世界でどのようにコミュニケーションを取り合い、精緻なコミュニティを築いているかについて詳しく解説しています。この本の核心は、森の木々が互いに助け合い、支え合い、まるで社会的なネットワークのような共生システムを持っているという発見です。
シマードの研究によると、樹木は地中の「菌根菌ネットワーク(mycorrhizal network)」を通じて栄養や情報を交換し合います。
このネットワークは、母樹(マザーツリー)と呼ばれる大きな木々が中心となって構築され、若い木や弱い木に栄養を分配する仕組みがあります。
さらに、木々は自分の「子ども」にあたる苗木に優先的に養分を送ったり、病気にかかった木が他の木に警告信号を送ったりすることが観察されています。このような共生関係の中で、森全体が一つの生態系として協調的に機能しているのです。
この発見は、自然がただ競争ではなく、協力と共感に基づいているという新しい視点を与えました。そして、この「菌根菌ネットワーク」の考え方は、映画『アバター』のエワと呼ばれる生命のネットワークの発想に強く影響を与えたとも言われています。
『アバター』では、パンドラの世界で樹木や動物がつながり、意識を共有し、協力して生きている姿が描かれていますが、この思想はまさにシマードが発見した森のネットワークに基づいています。
この本を読んでいるとき、私はその驚くべき自然のつながりと調和に圧倒され、感動の涙が込み上げてきました。
自然界がどれほど深く、そして人間がまだ理解しきれていない神秘を秘めているのかを感じ、私たちがこの世界でどのように生きるべきかを改めて考えさせられました。
わたしの脳裏には、ブラジルのジャングルが焼き畑農法によって大地の恵みを奪われた姿や、初夏に踏破した春日山原生林、そして氏神様である枚岡神社の鬱蒼とした鎮守の森が次々と駆け巡りました。
これらの森林の地下で、樹木同士が助け合いながら交わす会話を耳にすることができたらと思うと、再び涙腺が緩んできました。持続可能な社会の実現に向けて、これは人類すべてが読むべき必読書です。
映画化が決定したようですが、心に響く物語がスクリーンに蘇ることを考えると、胸が高鳴ります。物語が新たな形で息を吹き返すその日が楽しみです。
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