ピッチで見た決死の「三本指」
政治とスポーツのはざまで苦しむ選手たち
昨夜は千葉で、サッカー・ワールドカップのアジア2次予選が行われ、日本は10対0でミャンマーに圧勝しました。ワンサイドゲームとも呼ぶべき試合運びでしたが、無観客でもありピッチは、特にミャンマー選手に元気がなかったように見受けられました。
軍事クーデーターから4か月経ったミャンマーでは、国軍の弾圧で幼い子どもや女性も含め、非武装の国民が800人以上も殺されています。国軍の広報官が記者会見で、「雑草は取り除く。今は催涙弾やライフル銃で制圧しているが、機関銃なら一度に数百人は殺せる」と威嚇。薄ら笑いを浮かべた発言に、耳を疑うと同時に、腹の底から怒りがこみ上げてきました。
昨夜の競技会場周辺には、約70人の在日ミャンマー人たちが、「軍の命令を守る選手たちは応援できない」と、抗議の声を上げていました。本来なら熱烈なサポーターになるはずの同胞のシュプレヒコールが、選手の闘志を萎えさせたことは容易に想像できます。
「ミャンマーサッカーチームは、国民の代表ではない」
「スポーツにミャンマー軍事政権介入、強く反対する」
横断幕に書かれた抗議文が、軍事政権に届くはずもなく、日本政府が代表チームを入国させるべきではなかったという声も、政府要人に届いているのでしょうか。
ミャンマーの代表選手の中には軍への不服従運動で、出場を拒否した者が複数いるとも伝わっています。衝撃的なシーンを目撃したのは、国歌斉唱のセレモニーのときでした。控えの選手の1人が、軍への抵抗をこめた3本指を掲げるポーズをとったのです。一瞬のできごとですが、帰国すれば軍部に拘束されることは火を見るより明らかなだけに、命を賭した勇気ある行動に目頭が熱くなりました。
人さし指と中指、薬指を立て空を突き上げる、3本指は独裁への抵抗ポーズですが、コロナ対策や五輪でダッチロールを続けている、この国の為政者に対しても、3本指を突きつけたい気持ちです。