10.二次筆記試験合格その後(その2)
中小企業診断士の二次筆記試験合格後について。前回は、二次口述試験についてお伝えしたが、今回は「実務補習」についてお伝えする。通常、口述試験を含む二次試験合格後に、「実務補習」という実際の企業に対し診断業務を行うという研修を3回(一回あたり5日)受けなければ、「中小企業診断士」の資格取得にはならず、名乗る事ができない(例外的な方法もあるがここでは省略する)。
1.申し込み
実務補習は、診断士協会のホームページから申し込む。かつては郵送による申し込みもあったが、今は無いようだ。実施期間は、2月、7月、8月、9月。2月のコースは、15日間コースといって、3月にかけて5日間を3セット行うコースもある。途中インターバル期間が数日あるとはいえ、後述する補習の内容を考えるとかなりハードだ。特に社会人にとっては平日の補習もあるので、仕事の都合をつけるのがきつい。
ちなみに自分は3年間かけて、5日間コースを3回受けた。コロナの影響で、勤務先から研修参加を控える様な指導もあったりしてなかなか参加する事ができず、3年もかかってしまった。試験合格後、3年間で受講完了しなければならないので、ギリギリだった。
開催場所は、二次試験とほぼ同じく主要都市のみでの開催。ここでも地方居住者の負担が大きい。一回の補習が前半2日、後半3日に分かれており、宿泊費用はもちろん、交通費も往復2回分かかる。
2.補習内容
補習が決まると、開始数日前に指導員の診断士の先生から連絡がきて準備が始まる。主な準備は、メンバーの顔合わせと役割分担、対象企業の事前調査。
メンバーとは補習当日に初めて顔を合わせる事になるが、その日にメンバーで対象企業へ訪問して事業に関するヒアリングを行う。時間的にあわただしいため、事前に自己紹介を済ませておくことが多い。自分の場合、メールでの簡単な自己紹介だけの時もあれば、参加可能者同士でzoomで打ち合わせする事もあった。いずれにしても、補習当日に初めて会うより少しでも知り合いになっておくと、その後の活動がしやすいことは間違いない。
上記の顔合わせの中で指導員の指示もあり、事前に以下のような戦略毎の担当を決めておく(訪問する企業により設定する戦略が多少異なる)。
・経営戦略(班長)
・財務戦略
・人事(組織)戦略
・販売•営業戦略
・情報戦略
・製造戦略
この役割分担毎に各自レポートを書いて合体させる事で補習の成果物が完成する。補習の最終日に、対象企業に対しレポートを示しながら改善提言することが最終目的となる。
それぞれの内容は試験で勉強してきたが、各自得意、不得意があると思う。あえて不得意な事を選ぶのも勉強になるとおっしゃっていた指導員の先生もいらしたが、一回目の受講は流れも分からないので可能な限り得意分野を担当することをおすすめする。自分は財務を第一希望としたが通らず、第二希望であった人事となった。
補習を受けた感想として、情報戦略だけは担当できないと感じた。一次試験の合格のためのみ勉強していたため、活用できるほどの知識がない。提言の主流となっているSNSの有効活用についても、自分でほとんど使っていないのでわからない。
これを読んで不安に感じる人は多いと思う(特に自分のような中高年の方)。自分もそうだったが、担当しなければならなくなったらどうしようと思っていた。しかし、大丈夫。指導員の先生にお聞きしたら、各班には必ずといっていいほど、一人はシステムに詳しい受講生がいるように班分けされているとの事。勤務先などから把握している様子。私の時も、いずれの参加回もシステム関連に精通している方がおり、情報戦略を担当されていた。
また、最後のレポートを作る時にもシステム関連に精通した方が活躍する。各自がWordで作成したレポートを合体させ整合させる作業が必要になるが、素人だと相当労力がかかる。段落構成や言葉遣いの統一などをする必要があるが、自分がやろうとすれば、数日かかるような作業も、精通している方は数十分で終わらせてしまう。機能に関する知識もさる事ながら、段取りなども参考になった事が多かった。
担当分けが終わったら指導員から渡される事前資料をもとに訪問企業の分析を行い、面談時のヒアリング事項を考える。面談時間が限られている事から、この準備をしっかりしておかないと担当するレポートが書けなくなり大変な事になる。班毎の作業であり、自分一人だけでなくメンバーにも迷惑をかけてしまうので、普段の仕事や生活が忙しくてもしっかり準備しておく必要がある。
こうして事前準備を進めた上で、補習当日を迎える。補習は、スケジュールも含めハードだがなかなか楽しい。試験と異なり、実際の企業のデータや社長と会い提言する事は、やはり中小企業診断士ならではの醍醐味である。
長くなってしまったので、実際の補習内容は次の機会に。