圧倒的な存在感と強さが欲しくて黒を着る

私は長いこと、黒を着るのを避けてきた。きっかけは、高校生のとき。色白で、小柄で、目がぱっちりしていて、瞳のぎりぎり上で切り揃えた前髪がよく似合う同級生がいた。彼女に、「あなたって、黒、似合わないよね」と言われたのだ。

その頃、とりたてて黒を着ていたわけではない。だから、なぜ彼女が唐突にそれを私に言おうとしたのかはわからない。ただ、彼女はあまりにも黒がよく似合った。自分によく似合うものが似合いすぎていると、他人がそれを着ているときの違和感に気付きやすくなるのかもしれない。

そういうわけで、その当時、大してファッションに明るかったわけでもない私は、あっさりとその言葉を受け入れ、以後、黒を避けるようになったのだ。

とは言え、黒は便利な色でもあり、多汗というコンプレックスを隠すためにも、私はときどき黒を着た。その度に、本当は、私って、黒、似合わないんだけどな、と思った。

そのうち、生活の環境が大きく変わることがあり、持っている服を整理するためにも、私は完全に黒を手放した。その頃、パーソナルカラーという概念を知ったということもあり、それを参考に、「似合う」色だけを残してクローゼットを再構成した。

再構成されたクローゼットはそれなりに使いやすかった。とりあえずトップスとボトムスを手に取れば、なんとなく色味も合うから、悩む時間は減った。しばらくはそれで満足していたけれど、あるときからまた悩みのループが始まるようになった。

「それで、どんな服を着たいんだっけ?」

この悩みは、自問自答ファッションでいうところの「コンセプト」が定まっていなかったのだと思う。この頃、人生の方向性に迷っていたこともあり、服の悩みがそのままどういう自分になりたいのかという悩みに直結していた。

あきやあさみさんのブログに出会ったのはそんなときだった。それからの流れはガールズの皆さんとそう変わらないと思う。とても楽しくて充実したもぐら活動を続けている。怠け者なので、穴の中で寝転がっていることの方が多いけれど。

過ぎること数年。あるときふと、黒が着たくなった。黒の圧倒的な存在感と強さを身につけたくなった。似合わないのは相変わらずだけど、今回は自信を持って「今こそ黒を着よう」と思った。

黒と言えば Yohji Yamamoto かなと思って、新宿伊勢丹の Y's と Yohji Yamamoto  に行った。意志を持って着るので、上半身かなと思って、トップスで探した。色としては似合わなくても他はなるべく見た目も含めて自分に寄り添っているものがいいなと思って、苦手なアシンメトリーは避けて選んでもらった。それで、なんともないカットソーを手に入れた。とっても肌触りが良くて、お気に入りである。




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