起業について最近思ったこと
起業へのアドバイスとして、「好きなことをしましょう」とか、「やりたいことをしましょう」といったものがよく見られます。
起業そのものは誰でもできると思いますが、続けることはとても難しい。そして何らかのピンチになることもあるでしょう。ピンチがない方がごく稀なことである以上、そのピンチをどう切り抜けるかが大切になってきます。
そんな時、「好きなこと」であれば、「やりたいこと」であれば、踏ん張りが効き、乗り越えられるということで、冒頭のアドバイスということになるのでしょう。
確かに、そのアドバイスの趣旨は理解できるのですが、自分自身のことを振り返ってみると、そうとも言い切れません。
というのも、「やりたいこと」と言われても特に「これだ!」っていうものが自分の中にはないのです。
これまで10数年にわたって、自分自身に何ができるのだろうか、何をやりたいのだろうかと考えてきました。
市役所職員でいるうちは、やるべきことは指示されます。指示された分野の中で「やりたいこと」は出てきますが、自分の内側から「これがやりたい!」ってことではなかったように思います。
経営コンサルタントとして仕事を始めてからは、クライアントの要望に応じて、その解決に向けた取り組みを提案し、実行を支援してきました。ここでも自分の内側から「やりたい!」ってことではありません。
10数年にわたって、自分の「やりたいこと」を探してきましたが、最近、ある本に出会って考えが固定したというか、ぶれなくなりました。
それは古野俊幸さんの「あなたの知らないあなたの強み(日経BP)」です。
FFS理論を説明するものですが、人の強みを5つの因子で分析するものです。
・凝集性:固定・強化させようとする力の源泉
・受容性:外部を受け入れようとする力の源泉
・弁別性:相反する二律にはっきりと分けようとする力の源泉
・拡散性:飛び散っていこうとする力の源泉
・保全性:維持するために工夫改善していく力の源泉
この本には、特典としてFFS診断を受けることができます。やってみたところ、「弁別性」と判定されました。
「弁別性」は、他の4つの因子と大きく異なった因子であることが次のように説明されています。
4つの因子については、それぞれの因子の特性が活かされたリーダー像について、事細かに説明されていますが、「弁別性」だけが説明されず、さらに記述自体もかなり少なくなっています。
この本に出会う前にも、自分の特性についてエニアグラムやウェルスダイナミクスといったもので探求してきました。
しかし、この「弁別性」が決定的になったのです。
この本にも書いてありましたが、「弁別性」の高い人は、リーダーというよりも参謀タイプが多いということ、創業者の中にも「弁別性」の高い人はいるが、経営者というよりもファウンダーとして存在する人が多いということを読んで、確かに自分はそうかもしれないと思い至りました。
つまり、自分がやりたいことではなく、自分が心から応援したいと思う人のやりたいことを参謀として関わっていくことが向いているのだと思った次第です。
そう考えてみると、自分の心が惹かれる参謀といえば、高橋克彦さんの「火怨 北の燿星アテルイ(講談社文庫)」に描かれるアテルイの盟友「モレ」です。
モレは、アテルイという蝦夷のリーダーの参謀として、知略によって大和朝廷軍をことごとく打ち破りますが、坂上田村麻呂が将軍として派遣され、戦いが20年にも及び、このままでは民を困窮に陥らせてしまうというギリギリのところで投降し、京の都でアテルイとともに処刑されます。
蝦夷の尊厳と民の安寧のために戦ったこの物語は、自分の心の奥にある想いを強く滾らせてくれます。
取り留めのない話になってしまいましたが、時代が大きく変わっていく中で、これから何を基軸としていくかを考えてみた次第です。
自分はアテルイを探しているのかもしれません。