歩いて、エッセイを残す。【大自然編】
今年のうちに、苦手なことをひとつしておこうと思った。
ゲッターズ飯田の本にも「12月からは、やる気と行動力が幸運をもたらす」って書いてあったし。
わたしは、一人でどこかに出掛けるのが苦手だ。
見た景色、食べた物などを共感できないのが、寂しいと感じてしまうから。
けれど、歩きながら感じたことを書き留めてみたら、それはそれは、とても楽しかったし、寂しくもなかったし、エッセイも書けた。
今日わたしが、どんな一日を過ごしたのか。
読んでいる皆さんも、一緒に歩いてくれたら嬉しい。
12時。私市駅着。
ふつうにお腹が空いている。着く時間ミスったな、と思った。
コンビニが近くにあるそうなので、何か軽く食べられるものをと思って足を向けた矢先、「壺焼きいも」の文字が。秒速で横断歩道を渡る。
おじちゃんが、「帰って食べるの?」と聞いてくれたので、「星のブランコで食べます」と言ったら、透明の手袋を付けてくれた。
蜜がすごくて、手が汚れるほどらしい。期待大。
わたしは今日、星のブランコに行く。
ロマンティック&ファンタスティックネーミングセンス。
ずっと行きたいなって思ってたけど、なんだかんだ理由を付けて、行けていなかった場所だった。
【引き分けが、ハイキングコースにログインしました】
ということで、意気揚々と歩き出す。川のせせらぎが、キラキラ光って眩しい。
舗装されているような、されていないようなハイキングコースを歩く。
太陽が木々の隙間から出たり入ったりして、わたしの眼を交互に照らした。地球に住んでるなぁと思った。
吸い込んだ空気と頬が同じ温度で、体の外からも中からも、その場と一体になっていくような感覚があった。
自分の足で、違う場所に来たことを実感する。嬉しい。
どんどん進む。まだ疲れない。
時に立ちはだかる、ぬかるんだ地面や岩路。
転ばないような歩き方を知っているのは、転んだことがあるからだろうな。なんだか大切なことを知れた気がした。
さっき写真に収めた山が、ひとつひとつの木々となって目の前に現れる。
それらは、わたしが歩くペースで、わたしの目の横を通り過ぎて行く。なんと贅沢なことか。
その速さは、わたしが決められることなんだ、と感じたとき、「人生」と思った。
うん、ありがとう。
ちょっと不安になってたのよ、合ってるかな〜って。
こういうのは、必要なタイミングで現れるからおもしろい。
陽の光のおかげで、目の前にぜったいに蜘蛛の巣が張っていることがわかったので、くノ一の体制で前に進む。蜘蛛に顔を食べられないようにするための、最善の選択ができたと自負しています。
13時。ピトンの小屋、到着。ピトンてなに?
周りは、売店で買ったフランクフルトとか、期間限定味のチロルチョコとか食べる中、わたしはさっき買った壺焼きいもを食べる。
山でサツマイモ。モンキーか?
期待に胸を膨らませ、リュックを開ける。
蜜がすご過ぎて、リュックがびたびたになってた。食べるの先越されちゃった。
いざ実食。
な、な、な、なんやこれぇ!
お芋のジュースやないかぇ!!
喉乾くかなーって思ってたけど、逆。
────皆さんは、お芋で喉を潤したことはありますか…?
わたしは今日、はじめて潤しました。
食べきれなかった壺焼きいもをリュックにしまう。おじちゃんが付けてくれた透明の手袋の中に入れた。ここで、人間とモンキーの知能の差を見せつけます。
ウキウキしながら進む。(モンキー)
目的地までもうすぐっぽい!
と、そこで立ちはだかる2つの選択肢。
こんなもん、ぼうけんの路、一択やろがい!
(3秒後)
おい、崖か?やめといたらよかった。
そんな気持ちを押し殺し、目的地まで400m?トラック一周分!トラック一周分!と自分を鼓舞する。(元陸上部員)
何となく、いままでのことと、これからのことを考えていた。
28歳くらいで結婚して、30歳くらいには子供もいて、そんな「普通の人生」みたいなものを歩むんだろうなって思っていたけど、実際はぜんぜん違っていて。
なんなら、30歳、独身、彼氏なし、無職になろうとしている。(仮決定)
思うようにいかないなって、ほんの少しだけ浮かんだけれど、これ、ぜんぶ自分で選んどるんやないか。
ぼうけんの路だって、自分で選んできたし、潜在意識みたいなものがあるのであれば、わたしは、普通や安定を望んでいないのかもしれないなと思った。
着きました。(唐突)
目的地までの描写がほぼないのは、そういうことです。エッセイを書くか、生きるかだったら、誰だって、「生きる」を選択すると思う。
ゆっくり歩いたし、一度モンキーになったので、駅を出てから1時間半くらいかかったけど、着いたぞ〜〜〜!!!!
美しいものを見たときとかって、すべての語彙力を失いませんか?そうですよね?
言葉で語るより、見てもらった方が伝わると思うので、写真だけ載せますね。
自分の低身長と撮影技術のなさを呪いたい。
リーチが短いと、ろくな写真が撮れんのよ。
これは、ちょうど和田アキ子と同じ鳴き方をするカラス。
おわかりいただけただろうか。
晴天と絶景に恵まれ、本当にいい日に来たなと思った。
思いつきで行動するのって、先入観ゼロで飛び込むからいい。
うっかり、吊り橋、2往復もしちゃった。(照)
このままでは橋の上に住んじゃいかねないので、後ろ髪を引かれながら下る。
急勾配の階段は、土俵入りの力士さながらの体勢を取って、なんとか降りられた。
くノ一にモンキー、力士と、今日は大忙しである。
下る途中、ダウニーの柔軟剤の香りを、強烈に放つ男とすれ違う。
いい匂いだよね、ダウニー。わかるよ。でも、いまはいいかなって。
15時。ピトンの小屋、到着。
行きと同じ場所で、残りの芋ジュースをチャージ。まだほんのりあったかい。
お手洗いに向かう途中、ペッッシャンコに潰された空き缶を見つけた。
ここまで潰す労力 < ゴミ箱に捨てる労力
ということか。なるほど。わからん。
来た道とは違った道で私市駅を目指す。
ピトンの小屋でまったりし過ぎて、全身が冷えていた。冷えてない部分を探す方が難しいくらいに冷えてる。
銭湯はどこだっ!銭湯を出せっ!
(スタジオジブリ 千と千尋の神隠しより)
そんなものはないので、偶然リュックの中に入っていた銭湯でなんとか生きようとする。(錯乱)
スーツケースに大量のハンガーと、布団。
神に試されている。生きるために、拾おうか迷った。
そんなこんなで、わたしの「苦手なことをひとつしておく」は終了した。
なんや、めちゃくちゃ楽しいやないかい!
一人でどこかに行くと、いろんな発見がある。
共感するのも幸せだけれど、一人だと、すべて自分がしてきた選択の連続から、いまここに生きているんだということを痛感する。
無理して、急勾配の道を駆け上がったとき、息があがって苦しくなった。
立ち止まって、息を整えてから、また進んだ。
いまの自分には、こういう時間が必要なのではないかと感じた。
30歳、独身、彼氏なし、無職。
そう、胸を張って言える日が、もうすぐそばまできている。気がする。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?