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718 今までディスってた女神
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玄関の梅がなんと、つぼみをつけた。
数日前から、枝のようすがグンと変わっていて
「つぼみを膨らませるぞう!」っていう気配なのかエネルギーなのかが満ち満ちていて、思わず、おおっと二度見してしまうほどの存在感だったんだけど、ついに今日その最初のひとつが、白い小さな花びらをプクッとしてみせてくれたのだった(ピント的にこれが寄るのギリギリだったんだけど。見えるかな?)。
捨てられるはずの枝だった。
お正月飾りワークショップの材料として、トモさんのお庭から切り出された梅の枝。余ったからいいよ〜といただいたのだけど、持って帰ったときは、正直これは花が開くかわかんないなぁと思っていた。
切られてからまる1日、水に挿されず置かれていたのだ。それに、茶色くて細いガリガリの枝は、素人のわたしには、じっと眺めていても生きているのか死んでいるのか、まるでわからなかった。
水を吸っているのか、吸っていないのかもよくわからないまま、とりあえずわたしたちは同じ家で過ごした。
咲かなくても仕方ない。
だけど春がくるまで、いっしょにいよう。
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ああ生きてたのか。梅さん。
つぼみの膨らむ予感を枝が伝えてくれてから、わたしは毎朝、家を出る瞬間が楽しみになった。
わ、また少し、ふくらんでる。
暖かいほうが早く咲けてうれしいかな。
こんなとこにいて寒くないのかな。
いやいや!梅の木は外にあるもんなんだから!
そんなストーブの近くにとか、だめだろう。
可愛いからって、過保護にするんじゃない!
自然の掟になるべく近くするんだ!
などと、ひとりでぶつぶつ言いながら、早く咲いてほしいような、でも咲いたら散っちゃうのだからまだずうっと咲いてほしくないような、どっちやねんというような心境で毎日、梅を見ていた。
辛い苦しい重たい消えたくなる夕暮れを。
大声でわめいて泣き叫んだ真夜中を。
この枝は、みんな知っている。
いっしょに耐えてくれていたのかと思うと
愛おしくてぎゅっと抱きしめたくなったけど
枝がボキボキに折れるので我慢した。
痛いだけだし。
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