猫とのお別れ◯日前。
永遠には一緒にいられない事は分かっている。
いつか来る別れに毎日怯えながら過ごすわけにはいかないけれど、
イヤな言い方をすると、出会った日から一日一日、確実にお別れに向かって時間は進んでるんだよな。
もうあと何日、何時間この子と一緒にいられるのだろう…
首に2回目のしこりを見つけて病院に行くと、1回目に手術で取ったリンパ腫の再発だと言われた。
この子は病院が大嫌いで暴れてしまうので、いつも鎮静をかけて検査をしてもらっていた。
2回目のしこりを取ってもまた再発する可能性があるのなら、何回も嫌な病院に連れて行くのはもうやめようと言う話になり、症状を緩和する為の投薬だけする事になった。
余命2ヶ月ですと言われた時は「そんなすぐには死なない、しこり以外は何も変わった所がないのだから」と思っていたが、
獣医さんの言う通り、1ヶ月半を過ぎる頃からみるみる具合が悪くなっていった。
2ヶ月目には鼻水が止まらなくなり、苦しいのだろう、少し開口呼吸をするようになってしまった。
そうなると飲食は当然無理で、目の焦点も合わなくなって、グッタリという表現がピッタリの状態になってしまった。
もう病院には連れて行かないと決めていたので、人間だけが行って、症状を話し、追加のお薬と皮下点滴をもらって帰って来た。
点滴の針を刺す時は猫も痛いだろうが、こちらの心も痛い。「もう一回ご飯食べようね」と一生懸命声をかけながら点滴を続け、止まらない鼻水を人間の乳児用の器具で吸ってみたり、考え得る全ての事をした結果、呼吸は穏やかになり、
何とかシリンジで高栄養のご飯を流し込むことができるようになった。
数日後には、元気が出て点滴を嫌がって暴れるので中止した。願った通りもう一度、カリカリと音を立ててご飯を食べるまでに回復してくれた。
そんなの絶対長くは続かないのに、一瞬以前のように穏やかな日常が戻って来たように思えたし、このまままだ何ヶ月かは大丈夫、きっと年も越せると思った。
そこから2週間、薬のお陰で鼻水は止まっているのに、また2日前からちゅーるも食べてくれなくなってしまった。でも、2階に上がって日向ぼっこをしたり、目力もあるので、再度シリンジでの給餌を始めた。
この子は元々は夫の飼っていた猫。13歳。
私が一緒に暮らすようになっても、
やっぱりこの子が一番好きなのは夫。
なのに、どうしても抜けられない仕事で夫が9日間家を空ける事になってしまった。
夫が出発する前に二人で点滴を再開した。
すると、点滴後、夫の膝に上がってゴロゴロと甘えていたので、また私は安易に「このまま行けるかも!」と思ってしまったが、
夫の留守初日、夜になって5回、胃液や泡のようなものを吐いた。
2日目の今日、この子の点滴、投薬、給餌を全部一人でやる私は「嫌な事をする人」と認定され、
ものすごいシャーと猫パンチを頂いた。威嚇する元気があるのか、とちょっと嬉しくも思ったが、この子が付けた腕と指の傷が治るまでこの子は生きていてくれるだろうか。
さっき、夜のお薬4粒を2回に分けて飲ませ終えて、自分の膝から降ろしたら、あろうことかこの子は床に転げ落ちてしまった。もう自分を支える力がなくなって来ているのだと愕然とした。自分の目の前で起きていることがうまく受け入れられない。
猫を看取るのは初めてではないが、6年ぶりだ。
今、目の前で穏やかに寝ているこの子を見ていると、まだ看取りと言う言葉を使うのは早い気もするが、もう一回可愛い声でカリカリをねだるこの子の姿は見れないんじゃないかなと思う。ただ「おやすみ」と言って次の日があると信じて眠っていた日々は戻って来ない。
夫が帰宅するまで生きて待っていてくれるだろうか。あと7日もある!
それより私は眠ってしまって良いのか?も分からない。
と書いていたら、
この子ったら、伸びをしてアクビをすると、立ち上がって、トイレにオシッコをしに行った…。
ウソー!嬉しいけど、どっちなの。
私寝て良いの?ダメなの?
(つづく)