親知らずを一度に2本抜いた女
23歳、正月。歯並びの悪い私は磨き残しを気にしつつも、適当に歯を磨いていた。歯並びが悪すぎて、自分の口腔内を見るのは好きではないのだが、なぜかこの日は鏡を見て歯を磨こうと思ったのだった。
なに、これは・・・
右の一番奥の奥歯の影に、なにか透明なものが見える。まさかと思い、台所から爪楊枝を持ってきてつついてみると硬い。食べ残しではなさそうだ。次に自分の指を突っ込んでその透明に触れてみる。
「歯だ、これ」
親知らず、爆誕である。小学生のころ、友達がまだ生えてもいない親知らずをほじくって抜歯した話を聞き、なんで生えてもない歯を抜いてるんだろう、生えないかもしれないんだし痛い思いする必要ないのでは?と思っていた。両親も親知らずは生えていないし、20を過ぎても生えてくる気配はなかったのにまさか23歳にして親知らずが生えてくるだなんて思ってもみなかった。
動揺しつつ、他の場所からも生えてきてるのではないかと思ってライトで照らしながら口の中を見たが、どうやら生えてはいないようだ。痛みもないしちゃんと磨けば大丈夫だろうと放っておくことにし、歯磨きを終えた。なんともめでたくない正月である。
二か月後、兄弟現る
3月、なんだか歯茎がかゆい日々が続いていた。右上の親知らずポジションである。舌で痒い所を探る癖がついたころ(キモ過ぎ)、何やら小さい突起物二つがあることに気が付いた。絶望。もう一本、親知らずが遅れて生えてきたのだった。こいつも厄介な生え方をしていて、ゆっくりゆっくり生えてきたのだが、完全に外を向いているのだ。つまり、奥歯の食べ物をすりつぶすという機能を歯の側面で行っている状態である。また、下の親知らずはほぼ埋まっているため、ペアとしての機能すら果たしていない。
ただ、正月に顔を出した親知らずも弟分の親知らずも、他の歯に直接痛みをもたらすわけではないため、様子を見ておくことにした。
一年後、急に抜歯したくなる
小見出し通り、急に親知らずを抜歯したくなった。というのも、私には同居人がいるのだが、この同居人は歯並びがすこぶる良いのだ。歯医者に行けば「矯正したんですか?」と聞かれ、学生時代の歯科検診では思わず医者も歯並びをほめてしまう。そんな歯並びなのだ。
一緒に写真を撮った時、なんだか自分の歯並びの悪さがすごく目立つなと思ったのがきっかけだ。矯正のことを調べていたら、「あれ?どうせこの親知らず抜歯しないと矯正できなくね?」と思ったのである。私の歯は、大きくそれでいて捻転しているため、普通の矯正はきっとできないからだ。親知らずを抜くと顔がめちゃくちゃ腫れると聞いていたが、タイミングよく休職中。このチャンスを逃してはならない!ということで抜歯に至る。
いざ歯医者へ!
実に二年ぶりに歯医者に行き、歯石取りや歯周病チェックをしてもらい、抜歯の日時を決めた。一週間後の午前11時。この日が運命の日となった。
当日、ものすごい不安を抱えながら手術室へ通された。モニターには自分の親知らずのレントゲン写真が映し出されていた。うがいをして待っていると、院長があらわれ手術の流れを説明してくれた。
・下の親知らずは神経に近いため少なからずリスクはあるが、抜かないリスクのほうが大きいため注意して抜歯する。(割愛してるけど予定決めた日にも説明を受けてサイン書いてる)
・上は下よりすぐ抜ける。
とのことだった。もう逃げることもできないため適当に頷きながらシートを倒され、目元にタオルを掛けられた。「麻酔していきますね、痛かったらいつでも左手を挙げてくださいね」と物腰やわらかに言われた後、鋭い針が私の歯茎に3回くらい突き刺さった。何度経験してもなれない不快感である。
その後、麻酔が効いているか確認し、下の親知らずの抜歯が始まった。タオルを掛けられているし麻酔も効いていたためよくわからないが、最初はフックみたいなものでカリカリと歯を削られているような感じ。全く痛くない。そして、ドリルのようなもので歯を削られ何度か強く押された。痛くはないが圧迫感がすごかった。こんなもんかと思っていたが問題はここからである。
歯を引っぱられるたびに左の下あごも引っ張られるのだ。(抜いているのは右側)冗談じゃなく、あごが外れるんじゃないかと思った。ただ、自分の親知らずが頑固なのが悪いんだと思い、お医者さんも痛いと言われてもどうしようもないよねと遠慮し、「痛いです!」とアピールはしなかった。また、同様にどうしようもない問題が発生した。口が痛い。これ、抜歯の影響というより口を開けたり締めたりし続けているからだと思う。手術の予定は1時間だったのだが実際は1時間半かかったため、少なく見積もっても1時間は口を開閉していた計算になる。しかも、器具を入れる問題で無理くり口を引っ張られ、それが痛かった。生理的に涙が一筋零れ、タオルに吸収されていった。
あと、これ運でしかないと思うのだが、親知らずが根深すぎて、先生が一生懸命引き抜いた際ほっぺの内側をざっくり切られた笑
何の器具が当たったのかは分からないが、麻酔のきいていないところを切られたのが一番痛かったかもしれない。ちなみに、めっちゃ切られてたのに気づいたのは家に帰ってから口の中を確認した時。ほっぺたも縫われてた笑
上の抜歯は本当に一瞬で終わった。体感3秒くらい。ありがとう先生。
抜歯終了後親知らずを見せてくれたのだが、下の親知らずは骨に癒着していたようで頑張って砕きながら抜歯してくれて、小さいかけらが3個くらいあった。4000円払って無事に抜歯が終了した。
顔、小さくなる?
手術について調べていた時、親知らずを抜歯すると顔が小さくなったように見えるという記事をみかけた。せっかくだから記録に残そうと思い写真を撮ったのだが・・・。
確かに歯を抜いたほうは心なしか顔がすっきりして見える、かも。角度の問題もあるかもしれないため、一概にはそういえないけどなんとなーーーーくすっきりした?
しっかり親知らず生えてる人!いたくないよ!
今回の抜歯で分かったことはそんくらいである。逆に、横倒しの親知らずの抜歯は、痛いというか疲れることが分かった。私の口の中には、まだ左に一本ずつ眠っている。起きないでほしい。切実に。
自由気ままに生えてきて、親である持ち主を苦しめる姿はまさに「親知らず」といったところか。
以上、親知らず抜歯レポでした。