親がしてはいけないこと（ひきこもりからの脱却）

いきなり、いやなタイトルになりましたが、思いやりの８割は知識という考え方があります。

「自分がこうしたいから」、「相手にとっていいはずだと私が思うから」、という思いでとる行動は自分本位になり、相手にとってはあたかも攻撃のように届いてしまうことがままあります。

相手がどういう状態にあるのか把握しようと思う「気持ち」が思いやりのスタートです。

今回は「人の意欲ってどういうもの？」を学び、ひきこもりの状態にあるひとがどこにいるのかを考えます。

マズローの欲求５段階説

エイブラハム・マズローという人類史で最も著名な心理学者の３指に入る学者が提唱した「欲求５段階説」というものがあります。
マズローは以下の５つの欲求には順番があり、下層の欲求が満たされている状況にないとより上層の欲求は発現しにくいと仮説を立てました。

一見とっつきにくく思うかもしれませんが、分けて考えるとわかりやすいですし実感とも符合して理解しやすいはずです。

１　生理的欲求

5段階の最下層にあり、生きるために必要な本能的な欲求です。食欲や睡眠欲がこれに該当します。うつなどの疾患でここが脅かされている状態にある方は根源的な困難さと向き合うことになり、上層の欲求以前の課題となります。

２　安全欲求

生理的欲求が満たされると生まれる欲求で、心身の安全が確保された生活を送りたいという欲求です。ひきこもりの状態にあるかたは、「自室にひきこもってしまっている」のではなく、この層の欲求を満たすために安全だと感じる場所として自室を選択している場合があります。リビングで「学校になぜいかないのか」、「ハローワークにいってみないか」など自身の安全が満たされていない状態で次の要求がされた経験などが自室しか安全でないと思わせる場合があります。

３　社会的欲求

帰属欲求ともいわれ、他者から評価されたい欲求です。組織に属し、自分の存在が必要とされることで満たされます。所属の欲求とも言え、仕事をしたい、正社員になりたい、サークル活動がしたい、恋愛したい、など自身がなにものであるかを知ろうとする欲求です。家族がもとめる欲求の多くがこの第３層の意欲と言えます。ここを満たすためにひきこもり状態から脱却する場合が多いと考えることもできます。

４　承認欲求

他者から尊敬されたい欲求。世間や所属する組織から、能力や人としての価値を認められることで満たされます。会社で昇進したい、独立起業したい、資産を形成したい、結婚や育児をしたい、といった意欲的に社会活動をしていく状態に必要な欲求です。

５　自己実現欲求

最上層にあり、見返りは求めず、理想の自分になりたいと思う欲求。下層の4段階すべてが満たされて初めて生まれるとされています。
なりたい自分、総合的なライフプラン、自身の最期から逆算したいま実現したい自分像を形成したいと考える欲求です。定型で健常なひとであってもこの欲求に達するまで自身のいまを肯定的にとらえることは簡単ではありません。相応の現状があって初めてはじまる欲求と言えます。

上層の欲求だけが生まれることはない

下層の欲求が脅かされる状況にあるとより上層の意欲は生まれにくいという考え方で、これを無視したアドバイスや要求、指示や強要は本人にとっては素っ頓狂で、場合によっては現状の否定、攻撃にも捉えられてしまいます。
安全を求めて自室にしかいれない状態で「同年代のだれだれはどこどこに就職して結婚したぞ」と励ましたつもりが本人の現状否定に捉えられて大きく状況を悪化させてしまった、などはよく見られる不適切支援です。

下層欲求の充足を願うことが愛

おいしいものを食べれていて、よく眠れていることが最も根源的な充足で、働く事、結婚すること、家を買うこと、車を買うことはその上に乗っかっている高度な充足です。キャッチボールができていないのにフォークボールの極意を伝授してフォークだけが身につくわけではありません。たとえ仮に身についたとしても応用が効かず、素早いフィールディングや送球が出来るでしょうか。
国や自治体がひきこもりに就労を求めるのは仕方がないとしても、家族であるあなたは、子どもの状態を観察して、いま足りていないものを一緒になって考える、伴走者であってあげることが、ひいてはひきこもりの状態の改善や脱却の近道になる場合が多いと感じています。

ひきこもりデビュー

「ひきこもりは、だれでも、いつでもなりうる未来の自分」をテーマに、ここではひきこもり像を統計をもとに再確認しています。
ひきこもりのデビュー年齢は人口の分布に近いことや、性別も人口とほぼ一致していて決して自分と無関係の対岸の火事ではない、自分事として捉えるべき普遍的な社会問題であること、そしてそれに我々ができることについて考えています。

以下ではご協力をお願いしております。福祉活動は地域の社会福祉協議会の助成金に支えられていますが、一部に回転率の報告を求められております。
もしあなたのお気持ちでご協力いただけますと大変心強いです。ご一緒いただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。