毒は受け取らなければ本人のもとにかえっていく
はじめまして、ひきこもごもと申します。
メディカルソーシャルワーカーを中心としたひきこもり支援に関する任意団体「ひきこもごも」と申します。 支援員視点と、元当事者のメンバーによる、ひきこもりの状態にある方のいまと、気持ちを一緒に考えています。
いままでひきこもりの方、そのご家族、現行の支援とその課題、支援者のあり方を発信してきました。
今回は「毒は受け取らなければ本人のもとにかえっていく」という内容をお伝えします。
「毒は受け取らなければ本人のもとに返っていく」という言葉は、「他人からの悪意や悪口などの毒は、受け入れなければ、その毒は相手に戻っていく」という意味で使われます。他人からの否定的な言葉や行動があっても、それを受け入れずに軽く見たり、気にしないことで、自分自身を守ることができるという教訓が込められています。これは、他人のネガティブな影響を受けずに、自分の心を守るための考え方です。
気持ちを害するネガティブな投げかけで、人はダメージを受ける
ネガティブな投げかけとはひとによって異なりますが、否定的な感情や状況を表す言葉、他者を傷つけたり批判したりするような言葉や態度などを言います。たとえば
侮辱的な言葉: 人の外見や性格について攻撃的な言葉。「バカ」「ブス」「無能」など、相手の価値を否定するような言葉。
否定的なレッテル: 人否定的なラベルを貼ることもネガティブな表現で「怠け者」「貧乏人」など、その人の特性や能力を低く評価するような言葉です。
脅迫的な言葉: 他者に対して恐怖心を煽るような言葉や脅し文句もネガティブな表現です。「やってやる」「ぶっとばす」「罰が当たる」といった言葉です。
こういう言葉は、感情に悪影響を及ぼし、人をいやな気持にします。友人であればもう関わらないようにしたり、大切な人だとダメージを受けててしまいますが、こういった言葉や態度をとる人は、実はどこにでもいて、すれ違う人、電車で隣になる人、仕事で関わる人、どこにいてもおかしくありません。
出会わない方法はない
こういった人々とは可能な限り関わりたくありませんが、事前に出会わないようにすることは不可能です。絶海の孤島で自給自足をしない我々は、かならず負の人間に出会うリスクは支払います。
だからこそ、受け取らない技術があなたを守る
「毒は受け取らなければ本人のもとにかえっていく」という言葉の出典は特定されていませんが、このような考え方はさまざまな文化や宗教、哲学の教えに見られます。この言葉自体は、多くの人々が経験から得た洞察や教訓から生まれたものと考えられます。
実は毒を口にすることもダメージ
悪口やネガティブな言葉の影響に関する研究は多岐にわたりますが、いくつかの研究がそれらの影響を明らかにしています。
言葉の力に関する研究: 例えば、Andrew Newberg博士やMark Robert Waldman氏は、著書『Words Can Change Your Brain』で、ポジティブな言葉とネガティブな言葉が脳に与える影響を探求しました。彼らの研究では、ポジティブな言葉が脳内の活動を変化させ、ストレスを軽減し、幸福感を高める可能性があることが示唆されています。
ネガティブな言葉と心理的影響に関する研究: 各種の心理学的研究では、ネガティブな言葉や悪口が自尊心や心理的健康に与える影響に焦点を当てています。例えば、バルバラ・フレデリクソン博士らの研究では、ネガティブな発言や態度がポジティブな感情に比べてより強く自身に影響を及ぼすことが示されています。
言葉の影響と生理学的応答に関する研究: 心理学者や神経学者たちの研究では、ネガティブな言葉が生理学的な応答に影響を与えることが明らかになっています。ストレスホルモンの放出や心拍数の上昇など、身体的な反応が言葉の種類に応じて変化することが示されています。
これらの研究では、悪口やネガティブな言葉、態度が本人の心理や身体に与える影響を科学的に調査し、実は毒は双方向的に作用する諸刃の剣であることを示しています。
気にしなければ、敵は自壊して沈んでゆく
諸刃の剣を抜いて攻撃を試みた敵ですが、こちらがノーダメージだった場合、敵は勝手にダメージを受けて沈んでいきます。これが「毒は受け取らなければ本人のもとにかえっていく」という考え方で、防御の技術である一方で究極の攻撃でもあるのです。
我々は友人の落ち込みを励ます際に、「気にしないで」「あなたは素敵だよ」「あんな奴にやられないで」と励ますかもしれませんが、自分も同じように励ましていますでしょうか。「毒は受け取らなければ本人のもとにかえっていく」という考え方において、自分を励まして敵の悪意を軽く見て、気にしないことができればもはや勝利は目前です。
ひきこもりには理由がある
「親がしてはいけないこと」と銘打ち「ひきこもりには理由がある」を合言葉に、いまひきこもっているひとが、いまどういう状態なのかを考えています。ひとは理由なくひきこもりません。根源的な課題解決なしに性急に回復したような状況だけを求められてしまう当事者はたくさんいらっしゃいます。その環境出力だけを達成しても予後がよくない傾向にあります。いまどういう状態なのかをきちんと考える事で、一時的な状態変化に惑わされず、いま必要なものが考えられます。
当事者にとっても、家族などの身近な伴走者にとっても、理解してほしい、一度考えてほしい内容になっています。ご一読くださいませ。