Remember, remember The fifth of November
私は毎年この時期になると観たくなる映画があります。
「Vフォー・ヴェンデッタ」
ご存知でしょうか。
日本では2006年に公開された映画です。
私にとって11/5は必ずこの映画を思い出す日なのです。
11/5は「ガイ・フォークス・ナイト」あるいは「ガイ・フォークス・デイ」と呼ばれる日で、主にイギリスでの記念日です。
記念日の背景としては、
「1605年11月4日深夜に、翌日に開かれる予定の議会開会式で、国王ジェームズ1世を爆殺すべく、その議場となる貴族院の地下に大量に運び込まれた火薬と、その管理を行っていたガイ・フォークスが発見・逮捕された出来事及び、翌5日の夜にジェームズ1世が事件の未遂による自身の生存を祝い、市民たちがロンドン中で焚き火を行って祝った出来事に由来する(火薬陰謀事件)。その数か月後に「11月5日の遵守法」が制定され、事件が失敗したことに感謝する毎年恒例の祝日となった」
というものらしいです(Wikipediaより抜粋)
この映画の主人公はこのガイ・フォークスの仮面を被った男"V"。
上記の火薬陰謀事件についての映画ではないけれど、Vによる「火薬陰謀事件」のお話なのでこの作品の前提となっている出来事になります。
私は公開当初2回くらい映画館で観て、あとはDVDを購入してたまに観たり、毎年11/5がやってくる度に思い出していた作品なのですが、ここ数年はなかなか観られていなかったので久しぶりに観てみました。
そして何年越しかも分からない感想文を書いてみました。
が、大好きな作品なので言葉でうまく感想を書き切れないし書きたくないという気持ちもあります。
正直私の感想はどうでもいいからとにかく作品を観てくれ!そんな気持ち。
Remember, remember
The fifth of November
The Gunpowder treason and plot
I know of no reason
Why the Gunpowder treason
Should ever be forgot
(忘れるな、忘れるな11月5日を
火薬を使った反逆と陰謀を
この事件が忘れ去られるべき理由は
どこにもないはずだ)
冒頭でイヴィーが言っているこのセリフはイギリスでは有名なマザーグース。前述した「ガイ・フォークス・デイ」にちなんだ詩の一節です。
この作品の舞台は、第三次世界大戦後。かつてのアメリカ合衆国が事実上崩壊し、独裁者アダム・サトラーによって全体主義国家と化したイングランド。(サトラーという名前で皆さんピンと来たと思うけど、そう、あの◯トラーのような独裁社会なのだ)
そんな社会で暮らすヒロインのイヴィーが、復讐に生きる仮面の男、"V"と名乗る人物と出会うところから始まり、共に復讐を成し遂げるという話(簡単に言ってしまえば)。
と、ここまでわりと丁寧に説明をしてきたのに以下からはただの散文が始まります(笑)
(未見の人にも分かるようにと思って書き始めたけどすぐに面倒くさくなった人)
ネタバレも勿論あります。
↓
Vが秘密警察からイヴィーを助けて、最初に自己紹介するところがもうね、セリフ回しがとにかく秀逸でまずここで心を掴まれた!
自己紹介でVが話している言葉は全て「V」から始まる単語で構成されており、そのまくし立てがとにかく圧巻なのです!(下記リンク先に全セリフ記載あります)
https://dic.nicovideo.jp/a/v%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%BF
この作品はこういう言葉の仕掛けがほんとすばらしいの!
で、自己紹介からの「音楽は好き?」と、Vからイヴィーへの「演奏会」へのお誘い。
街に流れ始めるチャイコフスキーの「1812年」
曲に合わせて爆破されていく裁判所。
物語の始まりを告げる序曲。
ワクワク感がたまらないよね。
全編を通してだけどVという人物を印象付ける演出がとにかく秀逸で、セリフ回しがいちいち演劇的で、所作やアクションでの立ち振る舞いも美しく、会話でサラッと出してくる言葉の引用などもスマートで、でもお茶目な面もあって、とにかくVが魅力的な人物に描かれているのだ。少なくとも私には刺さりまくったのだ!
マクベスの十二夜の一節をサラッと出してくる教養のあるところとか、それを聞いてすぐに「マクベスね」と答えるイヴィーも素敵だった。シェイクスピアとか岩窟王とかファウストとか、色んな作品からの言葉が引用されていて、言うて私はそれぞれ詳しく知らないんだけど、他作品でもこういった演出が好きなので、刺さった要素のひとつ。
Vの部屋の鏡に書かれていた
「Vi veri Veniversum vivus vici」
(真実の力により、我、宇宙を征服せり)
これはゲーテの「ファウスト」から引用されたラテン語らしいのだけどすごく好き。
この言葉も全てVから始まっていて、こういう演出がたぶん私の厨二心をくすぐりまくりなんだろうな。
(訳あってファウストは昔から好きでその昔ゲーテ先生著の本を読んだのだけど大部分を忘れてしまっていてとてもかなしい)
あと、Vは仮面を着けていて表情が読み取れない人物のはずなのに感情によって仮面の表情が違って見えるのが素晴らしいなと思った。
仮面をつけての演技ってかなり難しいと思うのだけど、角度なのか光の加減なのか分からないけど、Vの表情としてちゃんとそこに存在しているように見えてヒューゴ・ウィービングすごいな、と思った。
喜怒哀楽や照れてるところはちゃんと照れて見えるんだよ!
作品全体の構成も好きで、過去の出来事と似た状況のリピテーションが要所要所にあって、より今の出来事が強調されているのが好きな演出だなと思った。
子供の頃に目の前でイヴィーの母親が政府に連れ去られた状況と同じ状況でゴードンさんが連れ去られたり、ラストにイヴィーがフィンチ警視に「音楽は好き?」と尋ねるシーンは、冒頭でVがイヴィーを「演奏会」に誘ったシーンと同じだし。
他にも色々あった。そもそも作品自体がガイ・フォークスの火薬陰謀事件のリピテーションだしね。今回は失敗じゃなく成功してるけど。そしてこれでもかと登場する「V」のつく言葉や文字!
あとこれは繰り返しとは違うのかも知れないけど、Vがクリーディーの元へ最期の戦いに行く直前、イヴィーが仮面越しにVにキスするシーンで私は、亡くなった女優ヴァレリーの手紙で初めて彼女が女優のルース(後の恋人)とキスしたシーンがフラッシュバックした。「初めてキスしたときもう誰ともキスしないと思った」というヴァレリーの言葉を思い出してしまって、それをVとイヴィーに重ねてなんだか泣きそうになった。
(ヴァレリーの手紙もほんと良いので作中の回想を観てほしいのだけど、この手紙は隣りの独房にいる誰かも分からない誰か(Vのこと)に向けて、死を覚悟した彼女が残した最初で最後の自叙伝なのです。特に好きなのが上記で書いたルースとの出会いのシーンと、ルースと結ばれたあと、ルースが政府に逮捕されて自分も間も無く逮捕され、永訣を覚悟した彼女の「でも私には幸せだったバラの3年間がある」という言葉がすごく胸にぎゅっときた。こういう何事にも変えられない大切な思い出って本当に美しくて尊くて、これがあるから自分は大丈夫みたいな、そんなものって本当に尊いと思う)
あと、シーンが前後してしまうのだけど、革命前夜にVとイヴィーが一年振りに再会した時、Vがイヴィーにダンスを踊ってくれと頼むシーンがあるんだけど、一年前にVが「ここ(※Vの部屋)の曲を全て聴いたけど一人で聴いていたからダンスは踊ったことがない(意訳)」という話をしていて、この時はイヴィーにはスルーされてたんだけど、この振りがあっての一年越しの二人のダンスシーンは観てる側としてはとても胸熱でしたね!
二人が再会した時のVの話し方もイヴィーに対する感情が溢れそうなのを必死に抑えているような話し方でとってもよかった。
最初から最後までVの正体や仮面の下が明かされることはなく、"V"として描かれたことによってVは何者でもある存在となり、「仮面の下にあるのは理念だ」と自らが言っていたように、彼は人々の「理念」そのものになったのだな、とラストの広場に集まる人々を見て思いました。
肉体としてのVは居なくなっても、人々の中に存在するVはこれからも生き続ける。
「理念は死なない」
そんな復讐(Vendetta)と勝利(Victory)の物語。
と、まぁ思いつくままに書いた感想文なのでまとまりがないままの散文をそいやっ、と投稿してしまいました。
繰り返しになりますが、
私の感想はどうでもいいからとにかく作品を観てくれ!です。笑