(短編小説)納豆
とある掲示板に、「納豆にカラシ要らなくね?」というスレッドがたった。
スレ主の主張はシンプルだ。
「カラシを付けないだけで、値段は格段に下がるはず」
この意見に対して、SNSでは賛否両論が飛び交った。
「カラシは必須。付けないとかあり得ない!」という意見もあれば、メーカーからも「実はカラシを付けていない商品もございます。」というコメントが寄せられた。
やがて、「納豆には何を掛けるのが正解か」という論争がSNSや掲示板で巻き起こった。
「やはり基本の醤油だ!
(『とある関東民』氏)」
「砂糖だべ!
(青森県民と思われる『名無し』氏)」
「マヨネーズ!以上!
(『マヨラー続けて20年』氏)」
「いや、キムチだ!(『辛党代表』氏)」
といった意見が飛び交う。
中には、「何も掛けない派」も現れた。
あるSNSユーザーが、こうコメントする。
「そういえば魯山人って、豆の形が無くなるまで掻き回したって聞いたんだけど、マジ?」
別のユーザーが答える。
「マジやで。」
それを受けて、更に別のユーザーが一首詠んだ。
「魯山人納豆 作りて想うこと アイツ絶対 筋肉ムキムキ」
すると、筋肉ムキムキのインフルエンサーが動画投稿サイトで、
『【SNSで話題沸騰中!】魯山人納豆、実際に作ってみた【筋肉は命!】』
という動画を投稿し、現実世界で話題になる。
「彼こそ現代の魯山人かもしれない…」
いつもの例に漏れず、全国のスーパーの棚から納豆が姿を消した。
最後に、『納豆好きの人たち』が「『噂の真相』解決団」という番組名のテレビ特番に集まり、和解の場が設けられた。
それぞれの好みを尊重し合い、結局は好みは人其々ということで話はまとまった。
◆
その日の打ち上げの二次会で、黒幕たちが笑い合っていた。
メンバーは、
「掲示板のスレ主」
「納豆メーカーの担当者」
「筋肉ムキムキのインフルエンサー」
「テレビ局のプロデューサー」
担当者「『納豆好きの人たち』を演じてくれた人には、本当は納豆嫌いの人も居たそうです。余程バイト代、弾んだんですね?」
プロデューサー「必要経費ですよ。黒字は取れてます。それにしても『魯山人納豆 作りて想うこと アイツ絶対 筋肉ムキムキ』でしたっけ。上手い一首を考えましたね?」
担当者「短歌が趣味でしてね。たまにはこういうのもいいかと思いまして。」
スレ主「次のターゲットはラーメンですね?味噌ラーメンを流行らせましょう!」
インフルエンサー「良いっすね!俺、ラーメンは味噌派なんすよ!」
こうして、夜は更けていくのであった……。
―――
私は『納豆+卵+醤油』をメレンゲ状にして食べてます。