松戸市VTuber戸定梨香交通安全PR動画削除は「スラットシェイミング」問題である

結論から言う。
松戸市のVTuber戸定梨香(とじょうりんか)の交通安全PR動画が「全国フェミニスト議員連盟」の公開質問状により削除された件は、

スラット・シェイミング(ふしだらだと言われ差別される)

によって消されたと言っていい。

今回のVTuber動画削除の件は、第二波フェミニズム(1970年代から)である「ラディカルフェミニズム」の思想の「性的対象化」という概念が、社会にどれだけ大きな悪影響を与えたか(恣意的に「性的対象物だ」と言えば作品を抹殺できる)を明確に示したものである。文面の「性的対象物として描写し、かつ強調」の部分がまさに性的対象化の文言だ。
対して、「スラット・シェイミングに反対」「スラットウォーク」の概念は「第三波フェミニズム」の思想である。この概念や第三波フェミニズムの思想は、比較的時代にマッチしたフェミニズムであり、みなさんが受容しやすいものといえる。
つまり、古いフェミニズム思想(性的対象化)と新しいフェミニズム思想(スラット・シェイミング反対)の対立とも言える。

※追記(2021年9月18日)
次の記事は、第二波・第三波・第四波フェミニズムの解説の上、現代のTwitter上のフェミニズムについて解説しているので、是非ご一読することをおすすめします。

また、第三波フェミニズムの思想の場合、次の原則(統一見解)に賛同できるはずです。ところが、日本のTwitter上のフェミニストの反応は芳しくありません。その意味で日本のフェミニストの思想は第二波フェミニズム(それもラディカルフェミニズム)と思われます。


ラディカルフェミニズムの性的対象化という問題

「ラディカルフェミニズム」は「性的対象化(Sexual Objectification)」「性的消費」と見られるものに対して強く反発する。しかし、その基準はとても曖昧である。
フェミニストが気がつかなかった作品等については、社会に特に問題は発生していない。しかし、フェミニストが気がついた途端に、フェミニストが集中的に攻撃をしかけ営業妨害・表現弾圧等をし、炎上する。そして、性的対象化の論理には、科学的に否定されている強力効果論を用いている。
性的対象化の概念が生まれたのは、おそらく1980年のポルノグラフィ撲滅運動が関わっているだろう。そして、(現在科学的に否定された)強力効果論を用いて、性的な作品を見続けると性犯罪を助長する、性的搾取であるという論理展開をする。

※追加(2021年9月18日)
「マンガ等の影響を受けて、性犯罪を起こす」等の強力効果論の言動については、次の2012年の記事で否定されている。

以下は、なぜこれほど絵に対する「性的対象化」「性的消費」がきつくなっていったのかを私なりに紐解いている。
以降は余談なので、読み飛ばしてもらっていい。

1980年前後のポルノグラフィの歴史

1980年の時代背景としては、ピンク映画( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%B3%E3%82%AF%E6%98%A0%E7%94%BB )が全盛期を迎えていた時代である。当然、実写・漫画のポルノ本・雑誌も存在している。
1970年代中盤にVHS( https://ja.wikipedia.org/wiki/VHS )が発売され、1970年代後半から1980年位にはアメリカなどでアダルトビデオが発売され普及する。
1981年に日本でアダルトビデオ( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%80%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%93%E3%83%87%E3%82%AA )が発売され、1985年に普及する。
アメリカのピンク映画・アダルトビデオの動向については「Pornographic film」( https://en.wikipedia.org/wiki/Pornographic_film )(※英語)を参照して欲しい。

2010年東京都青少年健全育成条例改正騒動から見るラディカルフェミニストと日本キリスト教婦人矯風会(性的保守)のつながり

Twitter上では、2010年の東京都青少年健全育成条例改正に伴って、表現規制反対の動きが高まった。
相手は、東京都の青少年・治安対策本部だったが、その背後には次の団体が関係している。
ポルノ・買春問題研究会(通称:APP研)
 角田由紀子氏はラディカルフェミニスト
 中里見博氏は強力効果論によるポルノの悪影響を主張している
●APP研の外郭団体のポルノ被害と性暴力を考える会(通称:PAPS)
 理事長は金尻カズナ氏金尻和也氏と同一人物。昔Twitterでdiscaのハンドル名で活動)
 副理事にAPP研の中里見博氏と北原みのり氏
日本キリスト教婦人矯風会を母体とした団体のECPAT/ストップ子ども買春の会(通称:ECPAT東京)
 元運営委員に金尻和也氏(金尻カズナ氏と同一人物)
 元顧問に警察庁生活安全局出身の後藤啓二氏
 代表に日本キリスト教婦人矯風会幹事の斎藤恵子氏
 同じく代表に、ラディカルフェミニストで、日本キリスト教婦人矯風会の性・人権部幹事の、宮本潤子氏
●日本ユニセフ協会

ラディカルフェミニストと日本キリスト教婦人矯風会の関係者でいっぱいですね。
日本キリスト教婦人矯風会は売春防止法制定に積極的で、純潔運動(婚前交渉を控えさせる運動)にも積極的である。
なお、PAPSの北原みのり氏は、「私たちは買われた」で有名なColabo代表の仁藤夢乃氏とつながりがある。

ちなみに、2010年東京都青少年健全育成条例改正時に青少年・治安対策本部が有害図書として、各地で説明に回った時に取り上げたのが、松山せいじ先生の「奥サマは小学生(→マンガ図書館Zサイトへ飛ぶ)」だった。


人工知能学会誌の表紙批判

2013年12月に発行された人工知能学会誌の表紙。(魚拓)

画像1

この表紙に対して、Twitter上で批判が噴出した。これが、女性キャラクターに対する批判の最初のように私は思っている。

(魚拓)

この中で、saebou氏こと武蔵大学人文学部英語英米文化学科准教授でフェミニストの北村紗衣氏(プロフィール)の発言を見てみよう。

さて、この方、過去にこんな発言をしています。

ちなみに、ヴァレリー・ソラナス(英語Wikipedia)はラディカルフェミニストである。

話を戻そう。
この表紙が出るまで、比較的Twitter上で女性キャラクターへの批判は見られなかったように思う。
しかし、創作物キャラクター批判の原点は、人工知能学会誌の表紙というのが大方の見方だ。

転換点となる2015年

そして、2015年夏に碧志摩メグが問題視され、冬にのうりんが問題視された。萌え絵が頻繁に批判されるようになったのは、この頃からだ。
まず、三重県志摩市の萌えキャラとして提案された碧志摩メグに対して、反対署名運動が始められた。

そして、次のまとめが注目を浴びた。

「キモオタ」という単語が出ている時点で、社会でのオタクへの差別意識が強いことがわかる。これは「宮崎勤事件」から続く、オタク差別である。それを端的に示したのが、ある漫画のこのページだろう。

画像2

画像3

話を戻して、その後は、非公認という形で碧志摩メグが生き残った。その経緯は次のまとめのとおりである。(読めばわかるが、ある活動家が登場する)

そして、2015年11月にのうりんのポスターが炎上する。

絵はこちら。

画像4

スタンプラリーのポスターに描かれた「良田胡蝶」のキャラクター絵は、たしかに「腕で」胸を強調している。そして、ラディカルフェミニストの「性嫌悪者」「性的保守」からすれば「性的対象化」とみなして騒ぎ立てるのはあるだろう。
この騒動でのうりんのポスターは消えることとなる。

さて、この時に後に問題となる「宇崎ちゃんは遊びたい!×日赤献血ポスター騒動」「茜さや広告騒動」といった「巨乳差別」への懸念があった模様であり、その批判のまとめが2015年12月時点でありました。

どうも「のうりん」騒動が、その後の「性的対象化」「性的消費」の概念の転換点のように思う。

ここまでで、北村紗衣准教授は次のようにツイート。
「政治的な正しさ」「芸術性」とは、具体的になんだろうか。

そして、宇崎ちゃんは遊びたい!までの表現規制については、次のツイートの画像でまとめられている。

「性的にまなざす」という単語が誕生

アカウントは凍結されているが、次のまとめの2015年12月30日のツイートに「性的にまなざす」という単語が現れる。これは「性的対象化」の別の言い方だろう。

後者のまとめで「性的にまなざす(実質的に「性的対象化」)」とは具体的な基準は何かの議論しているが結論が出ない。
そして、両方のまとめとも「二次元キャラクターがどこから性的だといけないのか」については、恣意的な判断しかできないという結論に。
つまり、「性的対象化」「性的消費」の言語化に失敗してしまった。このことは、現在も続いており、恣意的な判断をごまかす意味でラディカルフェミニストの中で「一人一派」「一日一派」「一言一派」というのを都合良く使うしかなくなっている。

「FCP-086 フェミニズムは一人一派 ⇒ 一日一派 ⇒ 一言一派」を参照

結論

ラディカルフェミニズムの「性的対象化」「性的消費」の具体的な定義は今も定まっていない。

そして、冒頭の「性的対象物として描写し、かつ強調」の「性的対象物」の具体的な定義が定まっていない以上は、全国フェミニスト議員連盟は「この動画は私たちが性的対象物(ふしだらだ・slut)と『思った』から動画を削除しろ」という意味にしか取れない。これは、全国フェミニスト議員連盟が「スラット・シェイミング」を言ったことになる。

したがって、全国フェミニスト議員連盟の質問状の内容は第三派フェミニズム的に不適切である。


追記

千葉県警の回答を得られたとのことで、ツイートを引用します。

おすすめ記事


いいなと思ったら応援しよう!