斜陽産業~大学~
2024年の出生数が70万人を下回ることがほぼ確定しているこの国において、大学という産業は生き残れるのでしょうか。
過去の出生数から大学進学率を(希望を込めて)58.4%と仮定して学生数推移のグラフを作成してみると次のようになります。
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2025年の大学生数予測が63万人程度
2041年の大学生数予測が45万人程度
いずれも進学率58.4%としているので、2025年の学生数はもっと少ないだろうし、逆に2041年は進学率が高くなる可能性があるのでもう少し学生数は増えるかもしれない。
しかしながら、今後18年の間に学生数が20%~30%程度減少することは回避できないでしょう。
私立大学の6割が定員割れ
2024年度の入学者が定員割れした四年制の私立大が354校で59.2%に上り、1989年度の調査開始以来で過去最高を更新したことが13日、日本私立学校振興・共済事業団の調査で分かった。前年度(53.3%)を5.9ポイント(34校)上回り、4年連続で増加した。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE069XP0W4A900C2000000/
この記事にもあるように日本の私立大学の約6割が定員を充足できていない状態です。
仮に学生数が20%減となった場合、乱暴な計算で2割の大学がつぶれるとしたら、160校あまりが倒産することになります。
今から18年で160校。結構現実的な数字な気がします。
2017年までは進学率の上昇が子供の減少に勝っていたため学生数が増えていたので、つぶれる大学がほとんどない状態が続いていました。しかしながら、これからは進学率の上昇が子供の減少に追いつかず、大学市場が縮小していくことはほぼ確定しています。
どこの大学に就職するべきか
これから大学教員を目指す方には、次のいずれかを目指すことを勧めます:
・国立大学
・学生数が4000人(1学年1000人)を超える規模の大学
・学生充足率が100%前後の大学
国立大学は学費の安さから根強い人気がありFラン大学になることはまずありません。大学がバタバタつぶれていっても最後まで生き残るでしょう。
学生数が多い大学は受験生が減ってもキャッシュを多く持っているので倒産リスクが比較的小さいです。充足率が低下しても学部を減らすという禁じ手を残しているので、短期的な倒産リスクは小さいと言えます。
現時点で充足率が100%大きく下回っている大学は非常に危険です。キャッシュがある限り倒産はしませんが、充足率の低下は黄色信号が灯っている状態と言えます。附属高校などで収入がある学校法人は大学の運営が少し傾いたくらいでは揺るぎませんが、経営陣から損切りされるリスクもあります。
意外と教員の職はある
そんな大学業界ですが、意外とここ数年の公募の数は増えています。
僕の勤務校(地方の大型私立大学)でも、特定の世代が抜けるタイミングでひっきりなしに公募を出していますが適任者が見つからずなかなか苦戦しています。
現時点で段階ジュニア世代が50代前半であることを考えると、前述した学生数が20%減となる18年後の少し前に団塊ジュニア教員が抜けることになりますので、その付近まで教員の需要は保たれると期待しています。
(大学の倒産ラッシュ→教員の再就職希望者増加→公募戦線激化、なんてカオスな流れになったりして)
終わりに
これから大学教員を目指す20代の若手研究者にとって、今の大学業界は夢も希望もない残念な市場なのかもしれません。
そんな世界で生き残るには、「弱小私立でもいいから大学教員として就職でできればいい」なんてケチなことを言わずに、結局は研究を頑張って成果を出して上位大学への就職を目指すしかないのでしょう。
中堅地方私立にとどまっている僕も明日は我が身と思って、ぬるま湯につからず刃を研いでおこうと思います。
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