決算からみる大学がつぶれない理由

18歳人口の減少が顕著な日本では、

これから大学がどんどんつぶれる

と思われていますが、経営の観点から見ると少し違った様子が見えてきます。

大学の財務情報

「大学名+決算書類」と検索すれば、大抵の大学の財務諸表が出てきます。

僕は簿記の知識がないのであまり専門的なことは言えませんが、偏差値が低めの大学の財務諸表を見ていると、

いくつかある項目のうち「資金収支計算書」(損益計算書に相当)の次年度繰越支払資金(利益剰余金に相当)が年度ごとにほとんど変動していないことに気が付きます。

また、貸借対照表(左に資産、右に負債・純資産をまとめたもの)を見ると、
流動資産(一年以内に現金化できる資産)と
流動負債(一年以内に返済する負債)
の比率(流動比率)が100%を余裕で超えています。(というかほとんど無借金経営)

なんなら、キャッシュリッチですべての負債を現金で返済可能な状態だったりします。

まとめると、
・繰り越し資金が一定=トータルで赤字も黒字もほとんどない
・資金ショート(借金が返せなくなること)が起きる可能性が極めて低い

という大学が多そうです。

定員割れ大学のつぶれる状態を妄想する

例えば、収容定員が1学年250人、4学年合計で1000人の大学を考えます。

学費が年100万円とすると、1000人で10億円。

0年目に定員充足率100%(学生総数1000人)だとして、そこから毎年入学定員充足率が80%(200人)になったとすると、学費による収入は

0年目:10億円
1年目:100万円×750人+100万円×200人=9.5億円
2年目:100万円×500人+100万円×400人=9億円
3年目:100万円×250人+100万円×600人=8.5億円
4年目:100万円×800人=8億円

となり、4年間で合計5億円の収入減となります。

従って、現時点での学費収入の半分程度しか繰越支払金がない大学は、現時点での入学者の80%程度しか学生を獲得できない状態が4年続くと繰越金を使い果たすことになります。

何校かFランと呼ばれる大学の財務諸表を見ましたが、この条件に当てはまる大学は一つもなかったです。

こうしてみると、大学がつぶれる大きな理由は経営的な要因よりも、学生が減りすぎて存在意義を失うことにありそうです。

大学がつぶれ始めるのは早くても10年後?

こんな計算をしなくても、「募集停止しても今の1年生が4年で卒業するまで維持する資金」は残しているだろうから、普通に考えてどの大学もあと4年くらいはつぶれずに維持されると思います。

18歳人口の変動を見るとあと2年くらいは横ばいなので、最短でも3+4=7年後にならないと大学倒産ラッシュは到来しないでしょう。(文科省が補助金カットを強行しない限りは)

実際には3年後(2028年)くらいから18歳人口の減少スピードが上がり、7年後(2032年)に私大入学者数が2025年比マイナス10%程度になると予想されるので、このあたりから耐えられない大学が出始めるのではないかと予想しています。

すると、7+4=11年後ぐらいが大学倒産ラッシュのスタートとなるかもしれません。

ちなみに、
・11年後(2036年)の私大入学者数は2025年比マイナス22%
・14年後(2039年)の私大入学者数は2025年比マイナス40%
と予想されているので、倒産ピークは15年~18年後でしょうか。

終わりに

大学が減るということは、そこで働く教員の雇用も喪失することを意味します。

今、50代の人は逃げ切れる可能性が高いですが、40代以下の現役教員や、これから大学教員を目指す世代は覚悟を決めて自分の仕事と向き合った方がいいと思います。

自戒をこめて。

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