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ロンドン大学院留学で4ヶ月で感じたこと:期待と現実
年末年始でバタついてましたが、今月からロンドンの大学院での2学期目が本格スタート。大学院での活動について度々尋ねられることも多く、良い機会なので1学期での取り組みを振り返ってまとめてみます。
海外大学院への留学を検討されている方、あるいは日本以外での学校の樹氷に興味のある方のご参考になれば嬉しいです。
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年間授業と1週間の過ごし方
1. Full-time or Part-time
学校毎に多様な方針がありますが、イギリスの大学院に関して言えば大きくFull-time(1年制)または Part-time(2年制)で過ごし方が変わります。
基本的には通算の授業時間は変わらず、PTだと約2倍の時間をかけて講義に取り組むことになります。(同じ学校内でも専攻によってPTを募集している/いないがあるので応募の際は要確認)。わたしは所属する Master of Research RCA にPTで参加。2年間をかけて授業とリサーチに取り組んでいきます。
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2. 平日の授業スケジュール
1週間あたり平日週3日で講義があり、残り2日は自由。授業は時間にして1日あたり3〜6時間程度です。内訳として、専門のリサーチに関わる必修科目が1コマ/他学部からの選択科目が1コマといった割合。
とは言え、講義のない残りの日は大学院の図書館で自主勉強(だいたい論文を調べてまとめる)をしたり、研究計画を練って学内外プレゼンしたり、院内で主催される様々な講義やワークショップに参加したりと、講義以外の日程でも大概は毎日朝から夕方まで学校に行っています。
Term1 (1学期)での取り組み
ざっくり Term1 で行ってきた取り組み以下の2つ。
(1) 専門科目:個人研究「組織学習」のリサーチ計画
(2) 選択科目:学部外の講義「Education for Change」の受講
* * *
1. 個人研究「組織学習」
1つめの個人研究は、所属の Master of Research 専攻としてのメイン授業。生徒それぞれが個人テーマを設定して研究に取り組んでいます。
生徒によって年齢や国籍、専門領域、興味も本当に多様で面白いのですが、ある人は「かたつむりがコンクリートを歩いた後の軌跡(自然科学)」、またある人は「母親の手紙を元にした家族のルーツ(人文芸術)」、他の人は「公共建築のサインと人流の関係性(建築)」「色彩学(アート)」etc.
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わたしは「組織学習 (教育・コミュニケーションデザイン)」の観点から、「過去の教育理論を現代の労働環境に適応しながら、チーム内のコミュニケーションを促して創造的に業務を行うための学習モデルを、どのようにデザインできるか?」をテーマしています。
というのも背景として、これまでの仕事で10年ほどブランドデザインに関わる立場でビジョンを策定して社外/社内に浸透を目指し、ゴールを共有しながらアウトプットしていくという中で、組織活動の中で互いの考えや行動から学び合いコミュニケーションをとっていくことの重要性、そして職域や働き方が多様化にあたって一層その必要性が増していくように感じられたからです。
この授業はこれらのテーマをもとに、「なぜいまこれを探求する必要性があるのか?」というリサーチクエスチョンを育み、その深掘りの方法をクラスメイトやチューターと議論したり、研究の学科の最終提出物として15,000 wordsの論文にしたためていくにあたっての論理構成の立て方、論拠となるアーカイブの見つけ方/活用の仕方をアカデミックスキルとして学んでいくという授業でした。詳細は機会を改めて。
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2. 「Education for Change」の受講
2つ目は、学科を超えての選択講義です。わたしは Creative Education の分野に興味があり「Education for Change」というユニットを選択。「これからの社会で求められる 21st century skills を、いかに育むか?」というテーマのもと、欧州の高等教育/社会人教育で実践されている教育理論を学びながら探求していく授業です。
The skills needed in the 21st century
https://widgets.weforum.org/nve-2015/chapter1.html
最終的には学んだ理論をもとに、グループでワークショップを企画・実行する(+受講生同士で互いのワークショップに参加しあい批評し合う)というのが成績項目です。
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わたしたちのチームでは写真のようなワークショップを実施。「過去に経験した失敗をどのように協働性を伴って共有し、ノーマライズできるか?」という内容。
グループメンバーは国籍も経験値も多様。それぞれのコンテクストからアイデアを出し、意見を述べ、役割を分担し、アウトプットを集約していく過程そのものが、協働性を基にした学びの在り方に示唆深いものでした。
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期待と現実
駆け足でしたが Term1 で実際に取り組んだことをまとめてみました。最後に、これらの体験をもとに学校での学びに期待していたことと、実際に取り組んでみて気づいたことを簡単にまとめていきます。
①グループワークで多様性がもたらすチャレンジ
国籍・年齢・背景・経験値の違うメンバーがたまたま集まって何か一つのことを成し遂げる…それは大きなチャレンジです。得意なことや目指しているもの、またモチベーションも違ったり。けどそんな中でも、互いに意見を聞き合う中でなにか一つでも納得して進められた時は嬉しいもの。またグループのなかでみんなのために自分に何ができるを考える視点を得られるのも学びです。
②英語でのコミュニケーションはまだしんどい
色々な国から生徒が集まるので「英語」といってもイントネーションや言葉の表現ひとつとっても英国/ヨーロッパ/中央アジア/東アジア…それぞれに多様です。大人数で話すときにあたまの切り替えがうまくできなかったり。もちろん自分の意見を英語で伝えるのも一苦労。
一方で、これは筋トレみたいなものなのでコツコツ親しむのが一番の改善かなと思ってます。わたしは毎日英文音読を45分/AI英会話を30分、週に数回オンライン英会話をするなど、地道に続けてます(そして半年やったら一定の効果があった)。このあたりの英語勉強法はまた別途!
③研究が一歩ずつ進んでいくのは達成感がある!
最終提出の修士論文で15,000words…!!なかなかなボリュームですが、序文から本文、結論まで構造化しながら論理構成を確認しつつ、ブロックごとに区切って分解していくとそれほどでもないのかなと思ってます。何より、私は本を読んで自分の知らなかったことに気づくのが好きなので、性格的に論文を読んだりするのがそこまで苦痛でないのが救い。
④自分の好きと向き合う時間を作れた
クライアントワークとはまた違い、学校での授業や研究は自分の中から生まれた疑問と向き合うもの。といいつつ、私は周囲が感じている課題や、他人の依頼に応えることが好きなので、自律的に何かを始めることには戸惑いがありました。しかし、長い人生の中でこれだけ自分と向き合う時間を作れることははかなかないので、前向きに悩んでいこうと思っています。
* * *
以上がTerm1に取り組む中で感じたことです。
続く2学期ではいよいよ個人研究が本格スタート。加えて新たな選択科目も開始。母国語と異なるコミュニケーションには、時にとまどい落ち込みますが、引き続き頑張ります!