![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/143237402/rectangle_large_type_2_e02acd501c421e2582675b6f6aded944.png?width=1200)
無理にかかわらないこと
子どもたちが幼かったとき、夫の職場のちかくに急遽引っ越すことになり、数年間賃貸マンションの一室に住んだときのこと
周辺はマンションやビルが多く、公園もちかくになく、幼い子どもがいる身としてはなかなか寂しい場所だった
偶然にもちかくのマンションに父方の親戚が住んでいて、12才年上のおしゃれで料理好きな伯母は、引っ越しをしてきた私たちをずいぶんと可愛がってくれてしょっちゅう手料理でもてなしてくれた
ある日のこと
子どもたちとわたしが伯母の作るランチをご馳走になっていたとき、なんのきっかけか伯母は自分の霊体験を語りだした
そこに住むまでは、冠婚葬祭で会うくらいの間柄だったので、まさか伯母がそういう霊体験のしやすい人だとは知らなかったし、そこまでハッキリと霊が視える人は知り合いでもなかなかいなかったので、どの話もものすごく興味津々で聞かせてもらった
伯母のいくつかの体験話を聞いたあと、
『この人だったら話してもいいかも。理解してもらえるかも』
と、わたしは、初めて『9月の彼』の体験話を他人にした
9月の彼はnotoでも書いたが、わたしにとってはあまりにも寂しくて哀しい体験だったし、なによりも、はっきりとした"霊体験"ではないので、誰かに話したとて、信じてもらえそうにもないとずっと思っていた
でも、何度も霊体験している伯母であれば、この寂しさや経験が確かなものだと理解してくれて共感をもって聞いてくれるはずだと確信し、7年ぶりに思い出す亡くなった彼との不思議な体験を初めて他人に話したのだった
伯母は神妙な顔で聞いてくれていた
そして聞き終わって唐突にこう言った
「霊体験なんて、ないと思いなさい」
「そんなのは経験したと思い込んでいるだけ」
… わたしはショックだった
そしてなぜか怒りもわいてきた
自分の体験はいくつもいくつも聞かせておきながら、そんな塩対応ってなに?
その不満は顔にもでたんだろうと思う
「おばさんだって(似たようなこと)体験してるじゃない!」
と、不満げな物言いのわたしに、伯母はよりいっそう強くピシャリと釘をさしてきた
「霊は怖いものだから、安易に首を突っ込んではぜったいにダメ!」
そのあとは、口答えのとりつく隙もあたえないほど持論を展開しまくられてしまった
全否定されるなんて、、、
そして心の奥にしまっていた大切な思い出を話してしまったことをひどく後悔したのだった
おばけの話は子どものころから好きだ
TVではめったにやらなくなったので今はたまにYouTubeで観ている
学生の頃は、やはりそういう話が好きな者同士で盛り上がるし、友達のなかには、実際によく体験するひともいた
が、
思い出すことがある
小学のときから友人の桜子はそういう体験がしやすい子だった。どちらかというと法事がらみの親戚の虫の知らせてきなものだったりして、そうそう怖い体験はしていなかった
桜子は小中が一緒で高校から別々だった
彼女が大学生のときのこと
桜子いわく彼女よりもずっと霊体験が多いというB子とは、大学に入学してすぐに友達になって四六時中一緒にいる仲になっていたらしい
ある日、ふたりは、自宅のいちぶを学生寮にして近所の大学の生徒に貸している友達C子の家に遊びに行った
初めてC子の家にはいるとB子が「なにか感じる」と言い出した
桜子とC子は、興味津々で「なになに」と問い詰めた
ところがB子は、
「怖いから無視したい」
と言いはじめた
霊を怖がって頑なに霊視を拒否するB子に、2人はそれでも面白がって「もしなにか見えるなら視て!」と懇願したのだという
B子はあまりにも2人にお願いされるので、自分の感じるものはなにかしぶしぶ霊視したのだった
「男の人がこの家にいる。そしてわたしたちをじっと視ている」
彼女は霊視した自分たちを見ている者の正体を克明に話し出した
「まって、、、 やめて、、」
C子が震えだした
「その人、知ってるわ」
大学が近いC子の家は敷地内に学生寮を経営しており、C子の母が寮母として働いていた。なのでC子は学生たちと飲食を一緒にとることもあったという
その寮の一室で数年前首を吊って亡くなった学生がいた。B子が話す霊の風貌はその彼に間違いないとC子は泣き出した
「だからイヤだって言ったのに、、」
B子も怒りだし険悪な空気になった
彼女が透視するその彼の顔はものすごく異様に黒く、なにかを恨むようにドアの影から、壁の隙間から、じっとりと自分たちを見続けているのだと言った
結局、楽しい会話も続かず、C子の家を出て桜子とB子は帰宅した
「なんか帰りも重い空気だった。しかもB子は具合悪いって言い出してさ、、、」
それがB子を見た最後になってしまったと桜子は言った
後日、B子は大学に来なかった
「どうしたの?」
そんなやりとりを数秒でLINEでできるわけもなく、わざわざ家に電話して親に呼び出してもらわなくてはならない時代だった
「具合悪いって言ってたから風邪かな?」
その頃はそれくらいに思っていたという
ところが結局彼女はその後行方不明になってしまった
桜子の良いところなのかどうかわからないが、人にはとても好かれるくせに人に対して淡白すぎる面がある
普通、そんなに仲良しだったら心配しないか?と思うが、
「いなくなっちゃったんだよねえ」
の一言でその話は片付けられていた
わたしはその話を聞いてとても怖かった
そして何故かわからないけれどまるでその場にいあわせたように、彼女が霊視した家の隅々を記憶してしまっている。どす黒い顔の青年の姿とともに
『祝山』(加門七海) という小説がある
ホラー小説となっているが、おどおどろしい描写や恐がらせる霊の描写はないのでホラー小説として賛否両論らしい。わたしはこの本を子育てもすんだころに読んで、めちゃくちゃリアルで怖い本だと思った
伯母が言う、
『できるだけ霊とは関わらない』ことは大切であり、関わったがためにおこりうる結末は哀しい
私自身、思い返せば、霊体験をリアルに共有した友達とは結果すべて絶縁になってしまっている
『霊がこの場に存在する』ということは、その時点で『負のエネルギー』なのだと思う
『関わらない』
このことは、生きるうえで大切なことなのだと改めて感じるが、
怖い話を見聞きするのをやめられないのも私のサガなのかもしれない