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dabchick
受心した青年のこころ⑨ 告白
その夜、夫がいつものように帰宅。
「ただいまー」と言って2階にあがったきり降りてこない。
「ご飯できてるよー」
と声をかけても、「うーん!」と言うだけ。
「なにやってんの?」と、2階にあがると、喪服のズボンを履いて前屈みにごそごそやっていた。
「…なにしてんの?」
「いや、ちょっとキツイかなぁ… 苦笑」
「…なに?お葬式?」
「まぁ…」
「誰の?」
「いやぁ…」
はっきり、言わない。なんで?とは思ったが、先に下に降りた。
それでも夫は、やはり言わなくては、と、思ったらしい。
1階に降りてきて、ここ1週間の流れを説明してくれた。
わたしが喪服を叫んだころ(ほんとうに申し訳ないほど不謹慎な叫びだったと思う… ごめんなさい )、アルバイト先の社長の息子さんが自宅で激しい頭痛に襲われて倒れこんだのだという。
脳内の動脈瘤破裂。素早く救急車で運ばれたが、手術では不可能な場所だった。彼は昏睡状態に陥った。
社長は、息子を助けるべくありとあらゆるツテをつかってその道で優秀な医者と連絡をとることができ手術を希望したが、画像をみて助けることは不可能だと診断されたということだった。
ご夫婦でどれだけの葛藤があったことか…
打つ手もないままに、脳死の診断がつくことになった…
その話を聞いて、とにかく涙がとまらなくなってしまった。
「ありがとう」の意味が強くこころによみがえったからだった。
ほんとうに彼はお母さんが好きだったのね…
そう思うだけで今も涙がでる。
お葬式に参加して「ありがとう」を会って言うだけでも、彼のこころは癒されるかもしれない…
↓つづく