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性同一性障害 社会生活上不便なことリスト
ども、洸です。
手術無しで戸籍上の性別変更の申立を行った当時 盛岡家庭裁判所一関支部へ提出した「社会生活上不便なことリスト」を全文ママ 開示いたします。
注意
一当事者が考えた「不便なこと」であり、何を不便に考えるかは人それぞれです。
また 下記の文書は 裁判官宛に 社会生活不便なことは何か説明し、また 特例法の 手術要件に対する反論を書いたものですが、いわゆる 性別適合手術 自体を否定するものではないことを 予め述べます。
社会生活上不便なことリスト
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2023 年 12 月 22 日
盛岡家庭裁判所一関支部御中
社会生活上不便なことリスト :
① 戸籍上の性別通りに契約書類に自署、申告しているにも関わらず、携帯電話の契約やクレジットカード等顧客情報の登録、勤め先での健康診断の予約等において、誤った性別で登録事務処理され、後日不備として電話がかかってきたり、窓口で混乱を招くことがある。
② 個人オーナーとの賃貸借契約において、戸籍上の性別と外見が異なるため、後で仲介会社に「先ほど内見した人は誰だったのか。」と連絡があり、収入等信用に何の問題もないにも関わらず一悶着あったことがある。
③ 仕事上 本人確認を必須とする取引(不動産取引)において、大手業者を相手にする場合に、取引担当者として運転免許証の他に念のための措置として健康保険証の提示を求められることがあり、性別欄を見た取引業者が顔をしかめる。
④ 接待等でゴルフ等にやむを得ず行く場合に、戸籍上の性別によって渡される更衣室の鍵やシャワールームの案内が異なることから、シャワールームを利用しないことを前提として、混乱を招かないように便宜上「男」と窓口に申告する等 嘘をつかなければならないこと。
⑤ 戸籍上の性別の問題かはわからないが、選挙の投票時の本人確認において、明らかに 他の人より時間がかかる
⑥ 性別が記載された資料を落とし、落とし物(健康保険証)の確認の電話を駅や交番にした際に、戸籍上の性別の表記と声色が一致しないために、本人ではないものと疑われる。
⑦ 女性と結婚する場合、戸籍上の性別を理由に同性婚に該当し婚姻することができない。
補足 : 戸籍上の性別を変更するにあたって要求される過大な負担と機会損失について、それらが解消される意義
現在、私は 戸籍上の性別を理由とする不便さを抱えつつも、その他 性同一性障害であることを原因とする いかなる不便・不都合、また困難についても、17 歳から現在までの約 10 年間をかけて克服し、社会生活を送っています。そのために要した労苦は過去のものとなっており、現在の私が同様のことで窮することは まずありませんが、当時は、私が持ち得る金銭について その殆どを注いできましたし、自ら進んで行っていたことについても、改めて振り返ると、その全てが苦行だったのではないかと思うほどの時間的労力と、日々受けてきた精神的苦痛などの金銭換価できないもの含
めると、これら負担は計り知れません。
且つ戸籍上の性別の取扱いの変更にあたっては、戸籍上の性別を変更するだけの基準を満たした、私にとっては ただそれだけであって、性行為できなければ女性を妊娠させることもない、はたまた生物学的性別の根拠となる、女性であること示す XX 染色体が、男性である XY 染色に置き換わることがある筈もない、殊更に、結果 手術による後遺症を生ずる場合があって、その後遺症の内容によっては、社会生活を寧ろ困難にする不可逆的変化やリスクを伴う、更なる多大な金銭的負担を求めるような性別適合手術を強いられることは、私に科される負担として過大であると言わざるを得ません。
不便なことリストの⑦を除き、戸籍上の性別による不便は、私にとって 軽度であり、この不便が生ずる場面、頻度はごく少数であると考えます。その賃貸が借りられなくても、他にあたればよく、銀行口座は数行作ればそれきりであり、性別を訊かれたら毎度 説明・訂正すればいいからです。ただ非当事者にとっては、社会生活上重大な障害であると捉えられ、驚愕し、時にその事実に泣き出す者もおり、それに私はとても驚きました。
さることながら、戸籍上に性別を原因とする不便・不都合の殆どは、私にとって軽度であると、そう思ってしまうほど私自身の”痛み” に対する感覚は麻痺していることは 先述の私の過去から察するに言うまでもなく、しかし そうでもしなけれ
ば ここまで生きては これませんでした。
本年 10 月 11 日の性別取扱い変更申立審判許可及び、10 月 25 日の違憲判決による 4 条要件の死文化は、現在の日本司法に何ら期待しなかった私にとって寝耳に水ではあったものの、だからと言って上記 2 つの司法判断のみが 私を本申立に後押ししたものではありません。ただ一人の女性の、結婚に伴う 諸事情の悩みに対して私が何ら寄り添えなかったこと、私自身は結婚する権利が無いという前提によって、パートナーができたなら婚姻したいと考える筈であるところ、それを考えることが現実的ではいことから、結果 精神的に非常な労苦を強いられることで、むしろ婚姻から遠く離れるように、結婚から先全てのライフプランを諦め、これにより多くの機会損失をしていることに気づいたことが、本申立を行うに至る理由となりました。
しかしながら、他の当事者の話をお聞きするに、その不便さ・不都合さは私の比どころではなく、枚挙に暇がありません。要は、これでも私は幸せ者なのです。
「戸籍上の性別を変更しなければ、人生がスタートしない」と話す当事者に、ここまで露骨な尋ね方はしていませんが「戸籍上の性別が問題になる場面は少ないように思われますが、何故そこまで執着するのでしょうか。」と尋ねたところ「外科的手術以外できること(おそらく、ホルモン療法や改名手続でしょうか)を全て尽くしたとしても、現に非当事者の目に映る私は”女性” (この方は男性としてみられたいようです)であるから、就労すらままならない。もし戸籍上の性別を変更することができたなら、どれだけのことができるようになるであろうか。たくさんのやりたいことを、夢に見ます。」
私は自分を恥ずかしく思いました、私自身の思慮の足らなさに。彼らにとって、戸籍上の性別が記載された本人確認書類は 人生を渡り歩くための唯一の切符であって、自身でできること全てを尽くしてそれ以上何もできなくなったら、この切符にすがる他なく、文字通り お守りなのです。
この申立を認容いただけたら、私だけでなく、どれだけの当事者が救われるか、考えてみてください。そして誰も損をしないこと、分かっていただきたい。
今までの苦しさを、約 10 年積み上げたことを ただ紙に起こしてお読みいただけることが、審判の土台に立てると思えた、それだけのことが、どれだけ嬉しかったことでしょうか。
憲法や法律に拘束されながらも、その良心を以て、寛大な判断をいただけること、切に願います。
大滝 洸
補足
社会生活上不便なことリスト は 下記のnoteにて 一般の方でも読みやすいよう まとめています。
よろしければ ご一読ください。