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運動療法に応用できる!股関節屈伸角度における筋活動の違い

リハ塾の松井です!

今日は股関節角度の違いによる筋出力の違いについて、屈曲と伸展運動に着目して解説します。

股関節屈曲は腸腰筋や大腿直筋などが働き、股関節伸展は大殿筋やハムストリングスが働くということは知っていても、関節角度によっては出力が変化するため、運動療法を指導する際には関節角度を考慮した肢位での実施が求められます。

そうでないと、求めている反応とは違った反応になってしまうことが考えられますし、運動療法の効果も十分に発揮することはできません。

今日は股関節の運動療法に関しての一助になれば幸いです。


まずは股関節屈曲から考えていきましょう。

僕も臨床で考察する際に用いる考え方ですが、股関節屈曲角度が小さい場合と大きい場合との違いを考えます。

股関節屈曲角度が小さい場合、大腿直筋と腸腰筋は同じくらいの筋出力を発揮し、屈曲角度が大きくなると腸腰筋が優位に働きます。

小栢らは、股関節屈曲10~30度では大腿直筋と腸腰筋はほぼ同程度のトルクを発揮するのに対し、屈曲30度以上では腸腰筋の方が大腿直筋より大きいトルクを発揮し、大腿直筋のトルクは小さくなったと報告しています(参考文献①)。

大腿直筋は屈曲角度が大きくなると骨盤前傾を伴って筋長は短縮するため、筋出力は弱くなります。
このことから、相対的に股関節屈曲角度が大きいと腸腰筋による屈曲トルクの比率が大きくなります。

これを考えると、股関節屈曲角度が大きい場合での屈曲出力の低下は腸腰筋の筋力低下を示唆するので、評価としても用いることができます。

一方、股関節伸展では伸展域では大殿筋が、屈曲域ではハムストリングスのトルクが強くなります。

モーメントアームから考えると、大殿筋は腸骨に付着、ハムストリングスは坐骨結節に付着するため、股関節伸展時は骨盤後傾に伴って坐骨結節は前方へ移動し、ハムストリングスはモーメントアームが小さくなるため、トルクも小さくなります。
それによって、相対的に大殿筋の伸展域でのトルクが大きくなるので、伸展域では大殿筋の出力が大きいと考えられます。

Photillaらは、骨盤前傾時の股関節伸展モーメントアームについて、大殿筋と半腱様筋を比較すると、骨盤前傾角度が小さい場合は両筋のモーメントアームはほぼ差がないが、前傾角度が大きくなるにつれて大殿筋モーメントアームは小さくなり、半腱様筋モーメントアームは大きくなっていくことを報告しています(参考文献②)。

また、世古らは股関節角度毎における筋活動量(%IEMG)を比較しており、伸展15度において大殿筋上部繊維は88.6±26.3、大殿筋下部繊維は96.6±32.1、大腿二頭筋は34.9±20.3と大殿筋の方がはるかに大きい結果でした(参考文献③)。

このことからも、大殿筋は伸展域、ハムストリングスは屈曲域で働きやすいということが分かります。

まとめると、

股関節屈曲角度が小さい→大腿直筋、腸腰筋
股関節屈曲角度が大きい→腸腰筋

股関節伸展角度が小さいor屈曲位→ハムストリングス
股関節伸展角度が大きい→大殿筋

このようになるため、運動療法を実施する際はこれを参考に反応を見ながら評価、介入してみると良いですよ!


参考文献

1.小栢 進也 他 : 関節角度の違いによる股関節周囲筋の発揮筋力の変化-数学的モデルを用いた解析- 理学療法学 第38巻第2号 97~104頁 2011年

2.Photilla JF et al : kinesiology of the hip extension at selected angles of pelvifemoral extension. Arch Phys Med Rehabil. 1969;50:241-250.

3.世古 俊明 他 : 股関節肢位と運動の違いが大殿筋、中殿筋の筋活動に及ぼす影響 理学療法学 29(6):857-860. 2014年


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