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骨折の保存療法の考え方とリハビリの関わり方の1例

リハ塾の松井です!

今回はこんな質問をいただいたので、回答していきます!

<ご質問内容>
80代後半の入所者についてです。
大腿骨頸部骨折を受傷して、高齢という事と呼吸器疾患があり、保存療法の方がいます。
受傷してから9ヶ月経っています。
受傷時から強い痛みがあり、徐々に軽減していますが、下肢を動かすと強い痛みがあります。
痛みの原因で考えられるものや骨折部はどういう状態だと想像できるかが知りたいです。
股関節の拘縮も出来てしまい、痛みのない範囲内で関節運動をしてますが、どういうリハビリの進め方が正しかったのかとても悩んでいます。

この質問を踏まえて、痛みの考え方、骨折の保存療法の考え方、リハビリの進め方について僕の考え方をまとめていきますね。


まず、大腿骨頚部骨折で保存療法ということなので、骨癒合するまでは積極的な関節運動はリスクがあるので、控えないといけません。

骨癒合までは、一般的に以下のような流れをとります。

  1. 骨折、それに伴う出血

  2. 骨折部を中心に炎症が起こる(炎症期)

  3. 肉芽組織、仮骨形成(修復期)

  4. 骨の吸収と新生(リモデリング期)

ただ、何をもって骨癒合とするかは医師によって異なるようで、リモデリング期を経て骨の連続性を取り戻した時を骨癒合とする方もいれば、仮骨形成の時を骨癒合とする方もいるようです。

一般的に言われている大腿骨頚部骨折の骨癒合期間としては、Gurltの表が有名で12週と言われています。

それを目安にしつつ、医師と相談しながら関節運動や抵抗運動、荷重時期を決めていくのが良いかと思います。

骨癒合時期を無視して関節運動や荷重を進めてしまうと、偽関節や変形癒合してしまうリスクが高いので、その後の疼痛や可動域制限にも繋がってしまいます。

なので、医師との相談が大前提で、骨癒合が進んできた段階で少しずつ関節可動域運動や軽めの自動・自動介助運動から始めるのが良いかと思います。

骨折部がどういう状態かと聞かれると、受傷時のレントゲンを見ていないので、どういう骨折型なのかも分かりませんし、9ヶ月の経過の中で患肢がどういった管理をされていたのかも分かりません。
なので、答えられないのが正直なところです。

管理方法などによっては、上記で説明したように、偽関節や変形癒合してしまっている可能性も考えられると思います。


痛みについてですが、まずは大枠に当てはめて考え、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、侵害可塑性疼痛のどれに当てはまるのかを考えましょう。

既に受傷後9ヶ月経過しているということなので、慢性疼痛の定義である3ヶ月を超えており、侵害可塑性疼痛に当てはまると言って良いと思います。

そして、骨折後の保存療法で十分に患部を動かせなかっただろうことも踏まえると、軟部組織の短縮や過緊張、筋委縮、筋痛が起こりうることが予測され、侵害受容性疼痛の要素も含んでいると考えられます。

保存療法で患肢を動かせなかったと考えると、当然患肢は不活動に陥っていたと考えられます。

不活動の状態が長期間続くと、皮膚、筋肉、関節包といった軟部組織のコラーゲン増生に伴う繊維化が生じるとされています。(参考文献①、②、③)

なので、不活動性の疼痛と筋スパズムなどによる筋性の疼痛、これに加えて末梢神経感作や中枢神経感作などによる侵害可塑性疼痛が混在していることが予測されます。


ここまでを踏まえ、どういったリハビリの進め方が良かったか、これからどういう進め方をするのが良いかを考えてみましょう。

骨折部に関しては、骨癒合するまでは基本的に動かせないので、患部外の運動が中心になりますし、荷重もできません。

かと言って、その間何もしないのが最善ではないので、振動刺激などの機器があれば、運動ができない期間の感覚入力として疼痛を緩和させる効果も期待できます。

振動刺激の機器がない場合は、関節は動かせませんが、関節周囲の筋肉は動かせるので、筋の長軸に沿って徒手的に長さを作ったり緩めたり、あるいは長軸に対して左右の動きを引き出したりすることは効果的だと思います。

また、荷重はできませんが、足底にタオルやクッションを当てたり、何かしら感覚を入力することは、疼痛を緩和させる、感覚入力の観点から考えてもした方が良いので、僕だったらそういう環境設定やリハビリ時に足底にも積極的感覚入力を行います。

さらに、患部外の運動を行うことも患部に直接作用するわけではありませんが、疼痛の緩和、慢性疼痛の予防にも繋がるので、患部外の関節運動や患部を使用せずに自転車エルゴメーターを漕いでもらうなどもありでしょう。

これからのリハビリについてですが、質問者様の言う通り、痛みのない範囲で関節運動を行うのがまず1つ。

そして、この方の場合は様々な要因が混在した痛みだとは思いますが、基本的には関節の安定性を高めつつ、運動性を出すのがベターかと思います。

なので、股関節が安定するのは、骨盤前傾位で骨頭被覆率が高まり、腸腰筋が働いて骨頭を求心位に保てている状態です。

例えば、端座位で骨盤前傾を強調してお辞儀動作をしてもらったり、骨盤前傾を出すためにハムストや大殿筋の柔軟性を引き出したりするのが有効です。

これも患者さんによって何がベストかは異なりますが、基本的にはこのような考え方で良いかと思います。

中々結果も出にくく難しい症例かと思いますが、色々と工夫して関わっていってほしいと思います!


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