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関節拘縮に思考停止でストレッチはまずい

リハ塾の松井です!

以下のような質問をいただいたので、今回はこれについて回答していきますね!

私は1年目の作業療法士です。
拘縮のある患者さんのリラクセーションを依頼されることがありますが、基本的な筋肉のほぐし方すらも学んでいないので、困っています。
理学療法士の方が学生の頃に習う基本的なことから、臨床で使える知識まで教えて頂けたら幸いです。

専門学校ということもあったのかもしれませんが徒手的な手法は、触診での筋肉・骨の触り方、MMTしか習っていません。
実習で習うことも、基本的な評価やADLやIADLの支援についてだったので、リラクセーションの技術はどのように身につけたのかバイザーの方に質問するくらいしか出来ませんでした。

OTさんの卒前、卒後教育は詳しくは分かりませんが、PTでも拘縮のある関節に対して介入することはたくさんありますよね。

少なくとも、僕はPTですが学生時代にリラクゼーションや筋肉への介入方法などを具体的に学んだ記憶はありません。(僕が覚えていないだけかも…笑)

実際、僕が若手の頃もここの筋肉が緊張しているなーとか、短縮しているなーとかは何となくわかっても、じゃあどうする?ってところが不十分だったかなと思います。

質問にもあるように、今回は拘縮に対する考え方や筋肉への介入方法について解説します!


そもそも、関節拘縮とは、関節可動域の減少、または受動的関節運動に対する抵抗の増加を指します。

原因は神経性、非神経性に分かれますが、ラットを用いた介入研究では関節不動2週間以降の拘縮の原因は関節包が中心となって起こるとされています(参考文献①)。

これにはコラーゲン繊維の増殖が関与していると考えられています。

通常、関節包はコラーゲン繊維が密で、その繊維は関節包の長軸に沿って並行に配列しているため、伸張性には非常に乏しいとされます。

一方、関節包の内膜にあたる部分は滑膜と呼ばれる部分ですが、ここは脂肪細胞が存在しており、コラーゲン繊維はわずかなため、関節包の中では伸張性に富んでいる部分です。

ですが、関節不動期間が延びるにつれて、脂肪細胞の萎縮と消失が認められ、コラーゲン繊維が増殖、より密になっていくとされています(参考文献①)。

つまり、比較的伸張性に富んでいる脂肪がコラーゲン繊維に置き換わっていくことで、関節拘縮が進行していくと考えられます。

ここで冒頭を思い出してほしいのですが、質問者様の質問には「拘縮のある患者さんのリラクセーションを依頼される」とありましたが、関節包が拘縮の原因だと考えると、筋肉へのリラクセーションは効果的ではありません。

もちろん、筋肉が原因として大きいのであれば、それも効果的だと思います。

ですが、2017年の関節拘縮とストレッチの効果を調べたシステマティックレビューでは、7か月未満の期間ではストレッチが関節可動性において重要な影響を及ぼさなかったという高いエビデンスが報告されています(参考文献②)。

予防的な介入としてのストレッチは有効性は報告されてはいますが、関節拘縮に対する有効性が示された介入方法は確立されていないのが現状です。


個人的な考えとしては、ストレッチをしても関節包に伸張が加わる前に筋・腱に伸張が加わり、それらに短縮が認められる場合は関節包に十分な伸張が加わらないので効果も上手く出ないのではと思います。

なので、関節拘縮に対する治療としては、まず表層の皮膚、脂肪、筋肉、腱から介入し、最後に関節包という流れを意識することが重要です。

そこで、今回は筋肉に対する介入を少しだけお伝えしますが、前提として以下の筋肉の生理学的特性を押さえておきましょう。

・Ⅰa抑制(相反神経抑制)による拮抗筋の弛緩
・Ⅰb抑制(自原性抑制)による主動作筋の弛緩
・反回抑制による主動作筋の抑制
・筋ポンプ作用による発痛物質に排出
・筋収縮による発熱作用で結合組織の粘弾性低下
・筋腱移行部への伸張による筋節の合成と再生

全て解説すると長くなるので、ここではⅠb抑制の臨床での活用方法について解説します。

Ⅰb抑制は、ゴルジ腱器官に加わる伸張刺激がゴルジ腱器官と接続する筋肉を抑制することを指します。

ゴルジ腱器官は閾値が非常に低いことが言われているので、徒手による介入でも十分な効果が期待できます(参考文献③)。

例えば、膝伸展を促すために大腿四頭筋の収縮を促通するとします。

大腿四頭筋の中でも広筋群の収縮を促し、大腿直筋を抑制したい場合は大腿四頭筋腱を圧迫、近位へ誘導することでゴルジ腱器官を介したⅠb抑制により、大腿直筋は抑制され、他の広筋群を優位に収縮させることを狙えます。

それによって、膝伸展方向への適切な動きが起これば、結果的に膝伸展拘縮の改善にもつながりますよね。


まとめると、

・関節拘縮の原因の中心は関節包
・関節拘縮に対するストレッチの効果はあまり高くない
・関節包が伸張される前に表層組織の筋肉や脂肪が伸張される
・筋肉による制限を改善するためには生理学的特性を理解する



参考文献

1.Ryo Sasabe et al : Effects of joint immobilization on changes in myofibroblasts and collagen in the rat knee contracture model. J Orthop Res. 2017;35(9):1998-2006.

2.Lisa A Harvey et al : Stretch for the treatment and prevention of contractures. Cochrane Database Syst Rev. 2017;(1)

3.Shaffer SW, et al : Aging of the somatosensory system: a translational perspective. Phys Ther. 2007 87:193-207


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