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知っておきたい末梢神経の解剖学

リハ塾の松井です!

腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など、神経根や末梢神経が痛みなどの機能障害に関与する場合、神経系の解剖学の知識は必須です。

何となく、「神経が圧迫されるから痛いんでしょ?」という理解では不十分です。

そのような理解では、結局何となくストレッチして、何となくマッサージして、何となく筋トレして、というような内容で終わってしまいがちです。
そして、患者さんの痛みもあまり変わらないという残念な結果になってしまいます。

そうならないためにも、まずは基本的な神経系の解剖学を理解し、何故痛みが起こるのかを知っておきましょう。
そうすると、リハビリで何をすべきなのかも見えてきますよ!


まずは以下の3つの特徴をおさえておきましょう。

末梢神経:発達した神経周膜と神経上膜を持ち、圧迫や牽引などの機械的ス
     トレスに強い
神経根:神経周膜と神経上膜を持っておらず、末梢神経より機械的ストレス
    に弱い
馬尾神経:第2腰椎より下位での神経根の集合したもので、第2腰椎以降の神
     経根は上位の神経根より長い

ここでのポイントは、末梢神経と神経根の違い。
末梢神経は周膜と上膜によって保護されているので、機械的ストレスに強い。

ヘルニアや脊柱管狭窄症が他の末梢神経障害に比べて如何に多いかを考えると納得できますね。

神経根は周膜と上膜がなく、椎間孔という狭い、かつ、骨性の硬い組織で覆われた空間を走行するため、末梢神経と比べると機械的ストレスを受けやすいことが言えます。

そして、先日の記事でも書きましたが、神経は圧迫だけで痛みが出現するわけではなく、圧迫による虚血と浮腫、脱髄、炎症によって神経支配領域に痛みが出現します。

さらに、神経根は前枝と後枝に分かれています。

前枝:体幹前外側、四肢の筋肉と皮膚を支配
後枝:固有背筋群と皮膚を支配

後枝は後内側枝と後外側枝に分岐し、大半を後内側枝が占めています。
後内側枝が何を支配するかというと、椎間関節、棘上靭帯、棘間靭帯です。

これを踏まえて、腰痛を大きく分けると、神経根症状のあるものか神経根症状のないものに分けることができ、後者は椎間関節由来の腰痛である可能性が考えられます。

椎間関節由来の腰痛は椎間関節に限局した疼痛に加え、臀部や大腿部にも関連痛を出現させることがあります。
古い研究ですが、実際に脊髄神経後内側枝を刺激した研究では、各椎体レベルの後内側枝ごとにある程度決まったパターンの関連痛が出現したことが報告されています(参考文献①)。

これは後内側枝への刺激が後内側枝を伝って、後外側枝や前枝へ伝わり、それが各筋肉や皮膚への痛みとして出力されたことが予測されます。

Sinclairらは一次侵害受容ニューロンの中には軸索が枝分かれして異なる領域を支配するものがあり、軸索反射によって一方からきた侵害刺激が脊髄へ向かう過程で、もう一方の支配している領域へ向かうことで異なる部位にも痛みを感じるという仮説を立てています(参考文献②)。

本当のところは分かりませんが、実際に関連痛として出現しているので、可能性としては頭に入れておいた方が良いと思っています。

こういった末梢神経の解剖学や痛みが出現する機序を理解しておくと、ヘルニアや狭窄症などの痛みにも落ち着いて対応することができますね!


参考文献

1.福井 春偉 ほか : 脊髄神経後内側枝の電気刺激による腰椎椎間関節性疼痛の分析 日本ペインクリニック学会誌 Vol.3 No.1,29~33,1996.

2.Sinclair DC et al : REFERRED PAIN AND ASSOCIATION PHENOMENA. Brain,
1948; 71: 184-211.


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