姿勢と嚥下の関係から考察しよう
リハ塾の松井です!
今回は嚥下に関するご質問をいただいたので、姿勢から見る嚥下について解説していきます!
以下、ご質問内容です。
今、嚥下機能が低下している利用者様がいるのですが、家族や本人から、飲み込みや発語が悪いので、リハビリをして欲しいと話がありました。 僕がいる職場は、STがいないので、困っています。
PTやOTでも対応できる範囲になると思いますが、何かお薦めの本や論文はありますでしょうか? 現在の対応は、パタカラの発語体操や舌の運動をしています。
嚥下機能とか言語機能ってPTやOTからすると専門外みたいな意識が強く、いざ嚥下や言語にアプローチしようと思っても何をしていいか分からない…なんてことになりますよね。
僕も去年から老健勤務になって、食事介助をしたり食事の評価をしてください!みたいに頼まれることもあって、同じように悩んでいました。
でも、よくよく考えると、嚥下機能や言語機能も中枢の問題はあったとしても、動きを作るのは筋骨格系です。
なので、肩関節の屈曲制限の問題は何だろう?歩行中体幹が左へ傾いてしまうのは何でだろう?と考えるのと同じことです。
ということで、今回はPT、OT的な視点で嚥下を考えるには?という所に焦点を当てて解説します。
嚥下と姿勢の関係
まず、手っ取り早く評価、介入できるポイントとしては「姿勢」があります。
食事時の姿勢が嚥下にどのように影響しているかを考えましょう。
ポイントは以下の通りです。
・姿勢によってむせ込み回数は減るのか、増えるのか?
・嚥下時間は延長するのか、短縮するのか?
・むせ込みが出現する回数は減るのか、増えるのか?
・口腔内の残渣物は減るのか、増えるのか?
・食事時の疲労は軽減するのか、増強するのか?
などなど、食事時の姿勢に対してポジショニングした結果、現状と比較して良くなったのか悪くなったのかをきちんと評価しましょう。
決して左右対称が良いというわけではなく、例えば、右片麻痺の方の場合、頸部を左回旋や側屈して嚥下した方がしやすい場合もあります。
嚥下と姿勢分析
ここで、PTやOTが日頃からやっているであろう、姿勢分析が役に立ちます。
流れとしては以下のような感じ。
骨アライメントを評価
↓
そこから筋アライメントを推測
↓
実際に触診して骨、筋アライメントを評価
↓
嚥下への影響を考察
例えば、接触嚥下の5期モデルから考えてみましょう。
1.認知期
2.準備期
3.口腔期
4.咽頭期
5.食道期
口腔期では、舌を前方から硬口蓋へ押し付け、口腔内の圧を高めることで食塊を後方へ送ります。
もし、舌を上顎へ押し付ける力が弱い、左右で差があり隙間でできてしまうなどがあれば、上手く食塊を後方へ送れないことが予測されます。
この時、姿勢と関連させて考えると、よくあるのが円背が強く、下位頚椎が屈曲位、上位頚椎が過伸展していると、外舌筋や舌骨下筋群は伸張され舌骨は下方へ牽引されます。
すると、口を閉じにくくなり、舌を上顎へ付けるのも難しくなることが考えられますよね。
僕の施設で嚥下評価をお願いされた時は、舌の前後左右上下の動きや頬を膨らませられるかを評価します。
何故かと言うと、舌の動きや口腔内の圧を高められないと嚥下までできないからですね。
この時、ポジショニングによって舌の動きや頬の膨らませが改善するのかを評価するのも大事です。
姿勢との関係を考えるには、嚥下に関わる筋肉は勉強しておかないといけません。
主に、外舌筋、舌骨上筋群、舌骨下筋群を勉強しましょう。
嚥下と体幹・四肢の影響
嚥下は四肢や体幹の影響を受けます。
なので、姿勢をポジショニングすることで嚥下に良い影響を与えます。
だからこそ、良い影響を期待してポジショニングするわけですが、何故体幹や四肢が嚥下に影響するのでしょうか?
例えば、足底をつけるかつけないか。
たまに、車いすが利用者に合ってなくて、足底が浮いたまま座っていることがあります。
当たり前ですが、足底がついていたほうが上行性の運動連鎖は起こりやすく、筋出力の発揮もしやすいです。
足底がついていないと、運動連鎖が起こりにくく、姿勢制御が難しくなります。
となると、どこかで姿勢制御を代償する必要が出てくるため、体幹や上肢、頸部で代償するわけです。
代償動作で緊張が高まったまま適切な嚥下ができるかどうかということですね。
姿勢の悪さで舌骨周囲筋の持続収縮、収縮タイミングのズレが生じることが報告されています(参考文献①)。
なので、そういう方の場合は足底をつけるとか、下肢や骨盤帯の安定性を高めるようなポジショニングやアプローチで嚥下機能に良い影響を与えることが予測できます。
まとめ
嚥下や言語に対してPTやOTの強みを活かすなら、嚥下に関わる筋群を学び、姿勢分析から嚥下筋にどんな影響があるのか。
どうしたら嚥下が良くなるのかを評価することが大事です。
お勧めの文献などは申し訳ありませんが、分かりませんが、普段から筋骨格系の知識を使い、姿勢や動作を分析しているPTやOTであれば、それを嚥下に活かすことは十分可能だと思います。
なので、まずは舌外筋、舌骨上筋、舌骨下筋を解剖学の教科書などで走行や作用を学びましょう。
パタカラ体操や舌の運動をするのも良いですが、せっかくなら姿勢を分析して、嚥下ができる状態をポジショニングしてから実践するとより効果的だと思います!
参考文献
1.内田 学:嚥下障害の運動学的特徴-舌骨上筋と舌骨下筋の筋活動と協調性の関係性-. 日本病態生理学会雑誌 24(2):41-41, 2015.
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