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疼痛が強い症例との関わり方と介入のポイント

リハ塾の松井です!

今日は以下のような質問をいただいたので、これに回答していきます!

<ご質問内容>
3年ほど前に大腿骨顆上骨折、OPEをされた方で、当初は90°まで膝屈曲できていましたが、現在安静時、動作時ともに痛みが強く、20°ほどしか屈曲できません。
経過の詳細は不明です。杖を使い歩行可能です。痛みがあり積極的なリハビリは拒否されますが、以前のようにもう少し膝が曲がってほしいとの希望もあります。
週2回の通所リハビリの中でどうアプローチをすればよいか悩んでいます。

経過が分からないので、何とも答えられない部分はありますが、歩けるけど、痛みが強くて膝の屈曲ができないという状態というわけですね。

この場合、考えるべきは2つありまして、「痛みの原因」「膝屈曲ができない原因」です。

まずはこれを整理して考え、原因として何が考えられ、何ができるかを考えていくべきかと思います。


まずは痛みの原因から。

大腿骨果上骨折後、3年経過していることから骨折自体が痛みのきっかけにはなったかもしれませんが、今現在の痛みは骨折とは関係ないと考えて良いでしょう。

痛みを考える上で、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、侵害可塑性疼痛のどれに当てはまるかをまず考える必要があります。

膝OAやTKA後の場合ですが、侵害受容性疼痛に中枢性感作が組み合わさって神経障害性疼痛様の症状を呈することがあります。
今回の場合、膝OAではありませんが、膝の遷延痛ということで当てはまる部分はあるのかなと思います。

今回の質問では、安静時と運動時に痛みが強いとしか記載がないので、具体的には分かりませんが、安静時痛もあることから、侵害受容性疼痛だけではなく、中枢性感作などの病態が組み合わさっている可能性は高いと思います。

侵害受容性疼痛の場合、炎症がある場合は安静時でも疼痛の訴えが聞かれることもありますが、炎症がない場合は関節運動や筋収縮を伴った際に疼痛が出現することがほとんどのはずです。

対して、神経障害性疼痛様の症状の場合、疼痛の種類としてはビリビリ、ピリピリのような痺れ、電撃痛や灼熱痛を呈します。

なので、まずはいつ、どこに、どんな時に、どのように疼痛を訴えるのかを整理した方が良いと思います。

それによって、上記3つの疼痛のうちどれに当てはまるのか(必ずしも1つに当てはまるわけではない)をかなり絞ることができます。

侵害受容性疼痛の場合は、軟部組織のマッサージやストレッチ、関節運動、運動療法が有効です。

中枢性感作のような侵害可塑性疼痛の場合は、認知行動療法や有酸素運動による下行性疼痛抑制系の賦活が有効です。

認知行動療法はここで書くと長くなるので割愛しますが、ポイントは痛みに対する考え方を変え、行動変容を促すことです。

痛みにフォーカスせず、その人の生きがいや活動にフォーカスし、達成できそうな簡単な目標から始めることが大事です。

少しずつ目標を高め、「痛みのせいで何もできない…」というような考えから、「痛いけど、これはできる。こんなこともできる。」というような考え方にシフトさせることが重要です。

直接痛みと関係がなくても、痛みのせいで何もかもできないというネガティブな思考に陥ってしまう傾向があるので、それを断ち切るように促しましょう。


そして、膝の屈曲ができない原因ですが、筋短縮など構造的な問題で屈曲できないのか、痛みのせいでできないのかと分けて考えることが大事です。

構造的な問題の場合は、大腿四頭筋のストレッチ、膝蓋上嚢やprefemoral fat padなどの滑走性を引き出すなどの方法が挙げられます。

屈曲20°しかできないということで、相当頑固な拘縮が予測されるので、限界はあると思いますが、根気よくアプローチするしかないです。

痛みが強い症例だと思うので、そこへアプローチするとどうなるのか、何が悪さして屈曲制限を起こしているのかをきちんと説明した上で実践するのが好ましいと思います。

変に不信感や不安感を持ったままアプローチを続けると、中枢性感作など侵害可塑性疼痛による疼痛を強めてしまう可能性もあるので。

痛みのせいで屈曲できない場合は、構造的な問題ではなく、まず痛みを何よりも鎮静させないと制限は解消されないでしょう。

痛みについては先に述べましたので、それを元に考えてみてください。


個人的には、この症例のように痛みが強くて積極的なリハビリができない場合は、膝ばかりにアプローチするとどうしても痛みに固執してしまうと思うので、自転車エルゴメーターやトレッドミルなどその方ができる形で有酸素運動を取り入れたり、患部以外の運動を取り入れ、根本的な体力の向上や下行性疼痛抑制系など鎮痛機構をちゃんと働かせることが大事かと考えます。

このような症例は即時的な結果が出にくく、一筋縄ではいかないとは思いますが、要点を整理して関わっていくことで、少しでも突破口は見えてくると思います。

以上、参考にしてみてください。


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