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【新風三佳】・第14章(物欲)

第14章・物欲

【物に執着するは虚しい事
   想いを軽んじるは悲しき事
    物に宿る想いを尊むは尊き事】

祖母の葬儀も無事終わり親族が
新たに集まるのは49日法要の時となる。

その間に祖母の残した遺品整理の為、
叔父から私達に声がかかり夫Yさんと共に
亡き祖母の自宅へと車を走らせていた。

叔父と母親(実母)はもう到着していた。

叔父が夫Yさんと話があるとの事で先に
祖母宅に上がったのだが驚きの光景が
目に飛び込んできたのである。

『えっ!! 何これ? 付箋?』と言葉が漏れる

何故かと言うと祖母宅のありとあらゆる物に黄色の付箋がペタペタと貼ってあったからである。1つ2つでなくありとあらゆる物に!!

少し戸惑いながらも母親に呼び掛けた。

『お母さん!! いるんでしょ!!
  この黄色の付箋はお母さんが貼ったの?』

すると聞き覚えのある声が返ってきた。

『えっ!! 三佳もきたの? そうよ!
  その付箋はお母さんが貰う物だから
         持ってかないでね』と

『分かった!! 』と返し

『これが印ねぇ~』とぼやいてしまった。

まるで
母親の物欲満載の部屋に居るみたいだった。

部屋を見渡しながら

『貰えそうな物は無さそうだなぁ〜
  全て母親が付箋で意思表示してるし』と

独り言を言いながら久々の祖母宅の中を
見て回っていた。

すると叔父との話が終わり帰ってきた
夫Yさんの手には長方形の少し小さめの
箱があった。

『それは何?』と夫Yさんに聞くと

『これ叔父さんが三佳ちゃんに
      渡して欲しいんだって!!』と

『えっ!!  貰っていいの?』と聞くと

夫Yさんは頭を縦に振り小声で私に
こう言ったのである。

『これだけは車に入れておくね!!
    あの人に見つかると厄介だから』と

私に言ったのである。
後から聞いた事ではあるが

叔父は欲深い母親の行動を先読みし祖母の
ネックレスだけは先に私にへと確保していたらしい。母親は叔父の読み通り大半の物に
付箋を貼り全て手中に収めていた(苦笑)

物に執着する母親の姿は
        見るに堪えなかった!!!

祖母を懐かしむのでもなく祖母の物を確実に手にしたいその焦りが見えたからだ!!!

母親は常に祖母に金銭的な援助や物質的な
事でも甘えていた人だ!!!

私も若き頃は母親と同じ感覚で
祖母に甘えていた1人!!!

母親を頭ごなしには責められない!!

だがやはり寂しいものではある。

だからこそ母親を見ていると昔の軽率で
欲深い自分を見ているかの様で堪らなく
嫌だった。

祖母が亡くなる前に改める事ができ
祖母との尊い想い出を作れた事は本当に
良かったと思う。

少し話を戻し

夫Yさんが車にネックレスを置きに行く所
まではお話したと想う。

夫Yさんと離れ私は母親に呼ばれ片付け整理などの手伝いをしていた。その間に叔父と
一緒に夫Yさんも母親と私のいる部屋へと
上がってきた。

そして叔父が1言、母親に向かって
言ったのである。

『三佳にも何かお袋の物を渡さないか!!』と

『・・・・!?』

母親は叔父の言葉に一瞬黙り込む

すかさず目の前に入って気になっていた花柄のポーチを手に私が叔父にすかさず応える。

『これを貰うね!!』と
ポーチを手に叔父に応えた

『それだけでいいのか?』と
叔父の言葉に私は頭を縦に振り応えた。

色々と整理する中で

私の名前の書いた紙に包まれた綺麗な帯も
見つかり母親の承諾を得てポーチと一緒に
持って帰る事も出来た。

ポーチの中には数珠と経本が入っており
祖母が愛用していた物であると実感する。
私はそれだけで十分だった。
それ以上の想い出と愛情を貰っていたから

この時、手にした綺麗な帯は今も大事に
自宅に保管してある。
叔父から手渡された祖母のネックレスと経本と数珠入りポーチはずっとそばにある。

祖母の面影を残しながら⋯

そして49日法要は後日、
無事に終わり次回の100ヵ日法要で納骨し
終わりを迎えるのだが⋯

この100ヵ日法要で私は母親(実母)に
強い怒りと憎しみを抱く事になる。

今でも消えぬ憤りの想いを⋯


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