夫が目の前で気を失って、訪れた変化

結婚して、今年で4年になる。夫とはそれなりに仲良くやっていると思う。お互いのことも分かってきて、喧嘩することもずいぶん減ったし、毎日穏やかに楽しく過ごしている。

ただ、ふたりとも在宅ワークなので一緒にいる時間が長く、最近はお互いの存在が良くも悪くも当たり前になっていた。良いところは当たり前になり、悪いところは気になってくる。改めて感謝の気持ちを伝えたりすることも、あまりなくなっていた。

でも先日、穏やかな日常が揺らぐ出来事があった。

詳しい状況は伏せておくけれど、夫が目の前で意識を失ったのだ。気を失う少し前、気分が悪そうだったので、大丈夫？と声を掛けて、飲みものを渡そうとした。

差し出した飲みものを受け取らず、ふっと目をつぶった夫。一瞬寝たのかと思ったけれど、呼びかけても反応がない。すると、顔はみるみる白くなり、白目になり、低い唸り声を出し始めた。

失神してる！と気づき、肩をたたいて名前を呼ぶが反応はない。体の力は抜けてぐったりとしている。

「すみません！」

外出先だったので、近くの人に助けを求めた。

状況的に、これは迷走神経反射の症状だった。

迷走神経反射とは、何らかの苦痛やストレスが原因で、心拍数と血圧が下がり起こる、めまいや失神などの症状のこと。

看護師として働いていた頃も、迷走神経反射で気を失った患者さんを見たことがあったので、頭では理解しているつもりだった。でも、家族が突然、目の前で意識を失うのは、私にとってかなりショックな出来事だった。

私の声に反応しない夫。
動かなくなる夫。

救護に来た人が車椅子に乗せようとしてくれたのだけど、一人で乗せようとしたことで脱力していた夫は壁に頭を強く打ってしまった。そこから軽い痙攣のようなものが起きて、苦しそうな表情。明らかに様子がおかしくなったので、私も気が動転してしまった。最悪の事態が、一瞬頭をよぎる。

少しして、夫の意識が戻ってきた。とても長く感じたけれど、2分くらいの出来事だったと思う。

目の焦点が定まり、私と目が合う。何が起きているのか分からず、不思議そうな表情の夫。まだぼーっとしている様子だったけれど、意識が戻って、心の底からほっとした。

その後、救護室でしばらく休ませてもらい、話したり起き上がったりできるまでに回復した。血圧を測ってもらうと正常値。やっとこわばっていた体の力が抜けていくのが分かった。

何事もなかったから、夫に許可をもらってこの文章を書いているのだけど、とても怖い経験だった。

今回のことを通して、感じたことがある。それは、夫へのささいな不満や、家族としてこんなふうに過ごしていきたいという理想はあるけれど、「夫が生きていてくれるだけでいい」ということ。

夫と目が合い、話しているだけで嬉しい。美味しそうにご飯を食べている。楽しそうにゲームをしている。笑ってる。それだけで、こっちまで笑顔になってしまうくらい嬉しかった。

本当に怖い経験だったけれど、当たり前なんてものはないなと改めて思ったし、何より夫の存在の大きさを身に沁みて感じた。人間は思っているより、ずっと脆い。ささいなきっかけで、今ある日常が簡単に崩れてしまうくらいに。

一緒に暮らしていると、あれもこれもとつい欲張りになってしまうけど、一緒にいられることは当たり前じゃない。今ある日々は、永遠には続かない。

だからこそ、ちいさな幸せを分け合って、喜びや感謝は口に出して伝えて、日々を楽しんでいきたいな。

今ある幸せが、できるだけ長く続きますように。

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夫はもうすっかり元気になりました。
迷走神経反射の原因はわかっているので、これからはしっかり対策をしようと思います。

もし近くの人が迷走神経反射で気を失ってしまったら、安易に移動させずに、その場にゆっくり寝かせて、脳に血流がいくように足を高くしてあげてください。

今回のことを経験して、慌てて移動させるのは危ないなと本当に思いました。頭を打ったり怪我をしたりすることのほうが怖いから、冷静に対応できたら。びっくりしてしまうので、難しいのですが…。

とにかく、夫が無事でよかったです。もうこんなことは起こってほしくはないけれど、日々の見え方が変わるきっかけになりました。みなさまの大切な人との日々も、やさしく穏やかに続きますように。

＊　＊　＊

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