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感性がひらく秋

8月のおわり。冷房の効いた部屋を出て、玄関のドアを開けると、むわりとした暑さが体を包む。「今日も暑いなあ」と思いながら鍵を閉めると、ふわーっと涼しい風が肌の上をすべっていった。

「秋だ」と思った。秋をかすかにふくんだ風。まだまだ気温は高いけれど、ちいさな秋を感じて嬉しくなった。秋はわたしにとって、感性がひらく季節だから。

夏はどうしても、心で感じることが少なくなってしまう。暑すぎて外に出たくなくなるし、外の暑さと冷房の風で体もだるくなって、なんだかぼーっとしてしまうのだ。

夏から秋、冬から春になるときのような、とじていた感性がすこしずつひらいていく、季節の移ろう瞬間が好きだ。

秋は、散歩をするのが楽しい。

公園を歩いていると、そよそよと吹きぬける自然の風が心地いい。どこからか漂ってくる金木犀のみずみずしい香りに気づくと、思わず深呼吸したくなる。

毎日すこしずつ色を濃くしていく葉っぱたちの変化を見るのも楽しいし、どんぐりが落ちる音や、鈴虫の音、落ち葉がカラカラと転がる音も好き。夏の暑さと騒がしさが過ぎ去った、静かな秋の海も良い。風に揺れるコスモスやすすき、満月を眺めるのも楽しみのひとつ。

頭のはたらきよりも先に五感で感じることが増えて、体も心もよろこぶのがわかる。秋を感じるために、どこまでも歩いていけそうな気さえする。

読書の秋、食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋というように、いろんなことを楽しみたくなるのもよくわかる。だって、ちいさなことに心が反応する余白が生まれる季節だから。自然の心地よさを存分に味わえるから。

わたしもこの秋は、美術館に行ったり、満開のコスモス畑を見たりしたいな。カメラを持って散歩したり、ベランダでお月見をしたり、くだもの狩りも楽しそう。

感性をめいっぱいにひろげて、心を動かしたい。まだ夏の暑さは続きそうだけれど、五感を使って秋をみつけていくのが楽しみでもある。

冷房を消して、秋の涼しい風のなかで過ごせる日々が待ち遠しい。


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