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いじめ保険

いじめ保険販売に感じる違和感

 いじめ保険なるものが販売開始されたそうです。

●日本初「いじめ保険」を販売開始 エール少額短期保険
 (2019-05-25・保険市場TIMES)
 https://www.hokende.com/news/blog/entry/2019/05/25/120000
●弁護士保険コモン(エール少額短期保険)
 https://yell-lpi.co.jp/komon-i/?did=9998

 このいじめ保険なるものの広告に物凄い違和感を感じています。
 いじめ以外の離婚時の親権や養育費のトラブル、近隣トラブルも対象には含まれるので、そちらの保険でいじめの対応もできる個人の顧問弁護士保険ということなのだと思いますが、いじめを前面に出して訴求していることに違和感を感じています。

 本来であれば、学校のいじめは学校及び学校を設置する地方自治体、私立学校法人が責任を持って対応すべき事案であり、いじめが犯罪行為であることが判明した場合は、速やかに警察等に通報し、被害者は被害届を出し、司法の介入により犯罪へ対応すべきことです。

 その際に学校や地方自治体、私立学校法人が対応する際の費用の負担軽減をということであれば大いに理解はできます。
 いじめ問題に詳しい弁護士と顧問契約を締結し、普段から学校の状況を共有し、問題が発生したら弁護士が動く。その際の弁護士費用の負担軽減という位置付けのものであればです。

 「学校ではいじめが多発しています。だから家庭で弁護士に相談する際の費用が賄える保険にご家庭で加入しませんか?」
 「いやいや、その訴求の仕方は違うでしょ」と。
 学校や地方自治体等において、いじめ発生時の対応環境が十分に整備されていない実態を踏まえると子を持つ親にとっては安心材料の一つになるでしょう。だからと言って、家庭が保険として加入するようなものではないと考えます。

いじめへの向き合い方

 いじめに関しては社会が一体となって向き合うことであり、保険会社と弁護士が儲かる仕組みにすることではないのではないでしょうか。もし保険とする場合でも、保険料は学校や学校を設置する地方自治体、私立学校法人が負担する仕組みとするのが適切ではないでしょうか。
 学校単位で加入する団体保険のようにし、各家庭から数百円程度の負担をお願いする(学校経営に協力をお願いする)という形にしても良いかもしれません。私立はこの形式でも良いでしょう。

"いじめ"は犯罪

 「"いじめ"とされている行為の多くは犯罪行為です。」
 講演時にいじめに触れる際には必ず伝えているメッセージです
 名誉毀損、侮辱、強要、脅迫、殺人幇助等の行為が、"いじめ"という言葉のオブラートに包むことで犯罪行為を軽くしている現状は見直す必要があることです。講演等でも常に"いじめ"というものへの認識を変えることを訴えていますが、最初はポカーンとしている人も事例を示すと理解してもらえます。

いじめ保険発売の背景

 こういう保険が発売されるということは、"いじめ"という犯罪の抑止活動が、一部を除き行政(文科省、地方自治体)や学校で適切に対応できているとは言えないのではないでしょうか。
 いじめ問題は法制化までして取り組んでいる割に効果が出てきません。効果が出ないどころか、情報通信機器の進化でいじめ行為も進化しており、教職員や大人が対応できない範囲が拡大しているのが実態でしょう。

"いじめ"という言葉の使い方

 いじめ保険の発売を教育現場におけるいじめ問題対応の不備と認識し、今一度、"いじめ"という言葉の扱いから見直していくことが必要なのではないでしょうか。


著者:原田光久(ひかりば 代表 / コミュニケーション・プランナー) ●社会問題解決アドバイザー、新規事業開発・地域創生・経営支援 ●行政・教育機関・民間企業で研修・講演・IT推進をサポート ●連絡先:harada@hikariba.com