小説 第二章◇宇宙時代への扉・6
《テレポート》
*登場人物*
アミュー:太陽系観察部隊の一員・惑星周波数の使い手
叔父:アミューの叔父・太陽系観察部隊の一員
「まだなの?」
「もう少しです」
「必ず来るのね?」
「はい、先ほどアルバ国際宇宙空港通信記録からSHIRAHAMA GAKUという人型男性体の乗った飛行機がこちらに向かっているとの情報を得ることが出来ました。もうしばらくお待ちください」
「もう待ち飽きたわ」
☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆
わたしはアミュー。太陽系の観察部隊に所属している。
本来ならもうわたしの惑星に帰っているはずだったわ。
なのに......。
地球時間で表すとだいたい半年前のこと。
「うそでしょ!そんなことってありえないわ!!」
突然の知らせだった。まさか、そんなことが起こるなんて夢にも思ってなかったから。
「惑星ごとテレポートしたって......」
わたしの惑星はだいぶがたがきていたのは知ってる。だから、こんな遠い銀河まで派遣されて住めそうな天体を探していた。
本来なら時間を戻して住みやすかった頃の惑星の記録にアクセスすればよかったのに。
「あいつの仕業か!!」
一緒に乗っていた叔父は怒りに震えていた。
「違うわ、みんながそう願ったから。あの人の願いだけで惑星が動くと思う?ありえないわ」
「波動がつかめなかったら、私たちは帰ることが出来ない。どうすれば.......」
叔父のいう通りだった。
惑星はある周波数を出して存在している。宇宙に無数に存在する星たちはすべて独自の周波数を持つ。だから、その周波数に合わせればすぐに行きたい惑星まで行くことが出来る。
でも、テレポートした場合は話が変わってくる。すべての条件が変わってくるのだから。そこに住める生命体も気象も文明もすべてリセットされる。
わたしたちの住む銀河では、それを”進化”と呼ぶ。
ただ、わたしたちの惑星には早すぎた。
テレポートの条件。それは《そこに住む生命体の”進化”と同時に行われる》こと。
魂の学びの場で先生から最初に教わることだ。
「早すぎた......」
叔父は肩をおとして跪いた。
「どうしたらいいの......」
わたしたちの乗っている船はある種の生命維持装置となっていた。だからいざとなったらそこからエネルギーを得ることができる。でもずっとこのままというわけにはいかない。
他の惑星に不時着するのもリスクがともなう。なるべくなら、テレポートした私たちの惑星を受信して周波数を合わせて帰還したい。
「わたし、やってみる」
「だめだ、テレポート直後はノイズが入る。神経系がやられてしまいます」
確かに、惑星を頭の中心に浮かべようとすると頭の中心が痛んだ。
「出来るところまで!!」
モニタールームの椅子に座ると、深呼吸をして意識を頭の中心においた。
『ブルー・ルーン、ブルー・ルーン』
集中力を極限まで高め、惑星周波数帯の音を響かせる。わたしの生まれ故郷の惑星周波数のシンボルを頭の中に思い浮かべながら。
船の警戒音がなった。
意図した周波数が存在しない場合、耳障りな警戒音が船内に鳴り響く。
「無効だわ。もうこの惑星周波数は存在しない」
わたしの惑星はこの宇宙の波に飲み込まれてしまった。
遥かかなたのどの次元領域かもわからないところまで。
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