小説 宇宙意識への扉・2
《新たな宇宙時代の幕開け》
『あっ!!』
テレビからアナウンサーの驚きの声が聞こえたと思ったその瞬間、国際映像は途切れた。
いや、国際映像だけではない。画面が真っ黒になり、聞きなれない音とともにテレビの電源が切れた。
「一体、なんだったの?あの音......。」
「さあ......。」
テレビの電源が切れると同時に、機械音も聞こえなくなった。
しばらく沈黙が続く。
俺と姉は顔を見合わせた。恐る恐るテレビの電源スイッチを押した。
「痛っ!」
静電気だろうか、しびれるような感覚が体を駆け巡った。
「あっ、映ったよ!」
テレビが2回点滅し徐々にテレビの画面に何かが映り始めた。
アルバ国際空港だ。
「映ってる?」
「そうみたい......。」
しかし、違和感がある。
「あっ!宇宙船は?」
あの見たことのない飛行船のような宇宙船がそこにはなかった。
『う......宇宙船はゆらゆらとした光に包まれ一瞬で消えました』
明らかに動揺した声が聞こえる。
スタジオでは消えた瞬間が見えていたようだ。
「凄いね、飛ぶんじゃないんだ。」
姉は買ってきた物を冷蔵庫にしまい、沸騰したやかんの火を止めてくれた。
「ワープってやつか?」
「ワープって突然出来るのね。一度宇宙空間に出てからやるんだと思ってた。」
淡々と話す。
「いろいろやり方があるんじゃないの?」
「なるほど。私はどうせだったら宇宙も見てみたいから、一度宇宙空間に出てから他の星に行きたいわ」
結構まじめに話している姉が面白かった。
「これ、本当の映像だと思う?」
「ん~。だって、これ現実なんでしょ?それともテレビ局のやらせ?」
「まさかね」
「そのうちテレビのコメンテーターに宇宙人出てくるかもね。何語でしゃべるんだろう?」
スタジオでは専門家やSF映画評論家などが興奮気味に話をしていた。しかし、首相たちとはこの後連絡が取れるんだろうか?いつまたアルバ国際空港に戻ってくるのかはおそらく誰もわからないのだろうなと思った。
少し余裕が出てきたアナウンサーも冗談を言いながら場をもたせているが、実際何が起きたのか、そもそも惑星間会議って?という疑問がまったく解決していない。
突然、テレビの画面が切り替わった。淡い光の空間が見える。そこにはすらっとした美しい女性と男性が映っていた。彼らは優しく微笑みかけている。
「ねえ、この人たちって宇宙人?」
なぜだろう。どこか人間とは違う感じがする。もしかしたらあの宇宙船に乗っている宇宙人なのだろうか。
さらに画面が切り替わり、スタジオが映し出されていた。しかし、そこには先ほどいたアナウンサーや専門家たちはいなかった。画面の上にはテロップが流れ始めた。
【臨時世界政府を作り、惑星間宇宙法に基づく新たなルール作りに着手する方針】
そして先ほどの画面に切り替わり、様々な言語に翻訳された言葉が淡い光の空間の映像とともに聞こえてきた。
『私たちは、宇宙存在たちとともにこの惑星を発展させていくため、世界宇宙法制定委員会を発足し新たな宇宙時代の幕開けを迎えます。私たちはそのために世界が一つになり協力していくこととなります』