世の中、結局すべて今夜の肴
「お酒、ちょっと控えなよ。体に悪いし、お金掛かるよ」
昨日、知人男性に突然言われた。
そして、なぜかその後にデートに誘われた。支離滅裂だ。
それで、ふと思い出した。
―あなたのストレス発散方法は何ですか?
私の女友達の多くは『泣く』と答える。
……どうやって、泣くの?
泣き方が分からないのだけれど。
20代後半だったとき。
多忙すぎて、仕事には喜怒哀楽を持たないようにした。すべての出来事に一喜一憂していては、心がもたないと思った。
気付けば、泣き方が分からなくなった。
怒りや悔しさ、むしゃくしゃするとき、私はお酒を大量に飲む。
どうにも出来ない思いを、お酒で緩和させる。
嫌なことや人に遭遇するたびに
「今夜のいい肴ができたな」
と言い聞かせることで心を落ち着けることが、よくある。
私は、大酒飲みだ。二日酔いも滅多にない。
睡眠欲さえなければ、お酒を永遠に飲める。と、本気で思っている。
家に帰ればまずは「プシュッ!」と缶チューハイを開け、
半分くらい一気に喉に流し込んでから部屋着に着替える。
多忙だったとき、私は、お酒とまさしく『大親友』になった。
ほとんど毎日のように飲み歩いていた。本当に、よく飲んでいた。
仕事で遅くなってお店が開いていなければ、
帰路でコンビニに寄って、度数の高い缶チューハイを買い込んでは
眠気に負けるまでずっと飲んでいた。
そのときに比べれば今はお酒の量は減ったかもしれないけれど
今でも、嫌なことがあった日の次の朝は、度数の高い缶チューハイ(ロング缶)の空き缶が自宅の床に何本も転がっていることがある。
お酒は、いつも私を救ってくれる。
何も考えないでいることを許してくれる。
……なんだか書いているとアル中のようだが、
昼間に手が震えたりすることはないし、
健康診断の前の日はちゃんと飲まない(念のため)。
それでも、最近気づいたこと。
お酒を飲む(飲めてしまう)女は、本来流すはずだった涙の分だけ
お酒を飲んでいるのかもしれない。
クサイようだけど、結構本気。
近頃、お酒を悪いもののように取り上げられがちだけど、
お酒という大親友がいなくなったら、私はどうやって生きて行けばいいのだろう。
人に迷惑をかけたくないから、ぐっと堪えてお酒に話を聞いてもらっているのに。
「『お酒を飲む私』を受け入れられないのなら
恋人はおろか、あなたとは友人にもなりたくない。」と
昨日の彼に告げた帰り道、悶々とそんなことを考えながらコンビニに寄り、
今朝はまた、床に空き缶が転がってた。
彼はただ、私の肴になっただけなんだな。