風野潮さんの講演会に行ってきた話。
はじめに
7月10日に行われた風野潮さんの講演会「夢も悩みも物語にして」に参加させていただきました。
定員が80人で、応募者が多ければ抽選だったそうですが、滑り込めて良かったです。
許可を頂いたので、この記事ではその講演会の感想を記録しています!
私個人が忘れたくないから、という動機もあって書いているのですが、風野さんファンの方には特に、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします!
風野潮さん
講演会でお会いした風野さんは、赤い着物を着た素敵な女性でした。
やはり小説家というか、どことなく独特な雰囲気を持っていらっしゃいます。
靴紐がリボンになっている靴を履いていらっしゃったのが印象的なのですが、それがすごく似合うんですよ。
素敵な方だなぁと思いました。
風野さんのご両親は高知から大阪に引っ越して来たらしく、風野さん自身外遊び好きでもなかったために友達は小学生になるまでほとんどいなかったそうです。
それで、その頃から想像の中の友達と遊んだという話をお父さんにしていたと。
お父さんはその風野さんの話を「うんうん」と言って聞いてくれたそうです。
ちなみにその友達が、「らくだ山のトド子ちゃん」。
何それ気になる・・・。
風野さんのお父様は小学校の先生だったそうで、絵日記用の余った原稿用紙を家に持って帰ってきて置いておいてくれたんですって。
(今なら横領とか言って大変ですけどね。だそうです。)
その紙に、今度は「ウサギのピョン子ちゃん」たちの話を書いていたらお父様がすごく褒めてくださったそうで、「書けば褒めてもらえるんだ」という意識はその頃からあったとおっしゃっていました。
ちなみにその頃、本は何もすることがないから時間を潰すために読んでいるという感じだったらしいです。
小学校や高校で、友達と書いた小説を見せ合ったりしていたというお話があって、羨ましいとかったです。
高校生でオーケストラ部、大学でも音楽の部活動に入っていて、その経験が「ビート・キッズ」や「レントゲン」に繋がったんですね。
特に「ビート・キッズ」は、クラブで「モブキャラ」だった自分が、みんなが主役になれるロックバンドに入っていたら、という夢を投影して書かれたそうです。
体の弱い女の子じゃなくて、元気な男の子だったら、という空想から生まれた作品が多いらしい。
だから「ビート・キッズ」には、すごい勢いがあったのかなと思いました。
大人になった風野さんが、再び小説を書き始めたきっかけは「父の死」。
「退職したら小説を書く」と言っていたお父様が退職して間もないうちに亡くなったことで、「今書かないと、書けなくなるかもしれない」という危機感を持ったからだそうです。
「中学生の頃、母親と上手くいっていなかった」という話もあったんですよ。
それで、風野さんの作品に家族関係のややこしさと温かさが入っているのはそういう経験があったからなんでしょうか。
作家さんの仕事
風野さんの人生のお話の後、「氷の上のプリンセス」のジュニア編10巻~シニア編1巻を例にとって小説家のスケジュールを教えて頂きました。
風野さんの場合、シリーズものを一巻書くのにかかる時間は2週間から一か月だそうです。
意外と早いな!というのが私の感想でした。
それとは別で、ハードカバーで出すような本だと企画から何からと一年以上かかることもあるそうです。
それは忍耐力が必要そうだなと思います。
一年以上同じ作品に向き合い続けるって、大分しんどいのでは・・・と。
私なんてちょっと間が開いただけでどう書こうとしていたか忘れてしまうのに。
本文だけではなくて、人物紹介のページやコラムの文まで風野さんが書いているそうです。
小説家の仕事って、意外と幅広いんだなと思いました。
でも風野さんと画家のNardackさん、編集の担当者さんや校閲さんとたくさんの人で一冊の本を作っていくのって、素敵だなと思います。
余談ですが、私は「青い鳥文庫」が好きです。
なんとなく、「大切に作られた本」って感じがするんですよね。
単純に紙質が好きってこともありますが。
風野さんのお話の中でもNardackさんやデザイナーさんを信頼していることが伝わってきて、温かい気持ちになりました。
風野さんの今の担当編集者さんはその前にファッション誌にいた方だそうで、かすみちゃんたちの衣装をとても細かく画家さんに伝えているそうです。
だからノービス編よりもジュニア編からの方が、衣装のリアリティが増しているそうですよ。
「氷プリ」ファンの皆様、もう一度それを踏まえて見てみませんか?
シニア編一巻は、初めてスケート衣装以外の服が表紙になった巻。
この制服、男子の色味とかリボンの色とか、細かく設定されているらしいです。
シニア編に入っている「これまでのあらすじ」のページの、風野さんが描いたイメージを見せて頂きましたが風野さん、絵、上手なんですね。
瀬賀君とかかすみちゃんとか美桜ちゃんとか、誰が誰なのかしっかりわかりました。
羽生結弦選手の話
「クリスタル エッジ」の輪、葵、冬樹は、羽生結弦選手を分身させたような三人だそうです。
個人的に、この中では瀬賀冬樹くんが一番羽生くんっぽい気がしました。
気がしただけですが・・・ビジュアルが?
スライドで、羽生くんからの年賀状も見せていただいたんですよ。
シニア一年目の頃の。
元々、風野さんは男子フィギュアスケートが好きだったらしく、「クリスタル エッジ」を書くことになって調べたんですって。
それで見つけたのが羽生結弦選手。
なんか、いいなぁって思いました。
有名になる前の人を応援するのって楽しそう。
地下お笑い劇場とかも一度、行ってみたいんですよね。
「クリスタル エッジ」は三巻で打ち切りになってしまい、その頃に企画されたのが「氷の上のプリンセス」。
女子フィギュアスケートのシリーズを書こうという話から出来たこのシリーズに、四巻の主人公にしようと思っていた瀬賀冬樹くんを登場人物にしたそうです。
それまでの風野さんの作品では元気な男の子が主人公をしていることが多かったのですが、「氷の上のプリンセス」は女の子。
主人公のかすみちゃんは、風野さん自身がモデルになっているそうなんです。
一巻ごとに自分も持っていた悩みを乗り越えられるのが幸せだとおっしゃっていました。
これはヨルシカのナブナさんの言葉なのですが、「どんなに辛いことでも、作品に昇華してしまえばそれはなかったことになる」というのがあって。
やっぱりそういうことってあるんだなと思います。
それで、こういう理由があって、「氷の上のプリンセス」は風野さんの作品の中で他とは違う印象があるのかなと。
「氷の上のプリンセス」って、風野さんの代表作だと思うんですよね。
いや、クラブの顧問の先生は「ビート・キッズ」しか知らなかったそうなので、世代によってちょっと違いがあるのかもしれませんが。
Q&A
お話が終わった後、風野さんへの質問タイムがありました。
応募した時のメールに載せた質問を抜粋して司書さんが読み上げる形だったのですが、その場で質問できる時間もあったんですよ。
印象的なものをいくつかご紹介します。
Q.小説は何で書いていますか?また、気を付けていることを教えてください。
A.ポケットメモライターで書いています。パッと開くとすぐに書いていた途中の部分が出てきて便利だそうです。インターネットには接続できないのですが、書こうと思ってついついゲームをしてしまう人にはおすすめ。
プロットを作っても大幅にずれたりするタイプですが、唯一気を付けていることはストーリーの都合でキャラクターの性格が変わらないようにすることだそうです。
(かすみちゃんと冬樹くんの恋愛の微妙な距離が表現されるのは、これが理由なのかなと思いました。中学生から見て、かなりリアルな関係なので。)
Q.ストレス解消法を教えてください。
A.細かい作業をすること。どうしても鬱っぽくなった時には、無理矢理にでもお風呂に入ること。
Q.名付けはどうやっていますか?
A.声に出したり縦横に書いてみたりして、格好良かったりその人物にピッタリな名前を考えているそうです。
考えた名前をメモしておいて、その名前が似合うキャラクターが生まれた時に付けたりするそうです。
(名前をメモしておくという発想はなかった・・・。真似してみようかと思いました。)
Q.大学生のうちにやっておくべきだと思うことを教えてください。
A.風野さんの場合は部活動をやっていたことが良かったそうです。みんなで旅行に行ったことも楽しかったのですがこのご時世では勧められないので、とにかく本を読むこと。
心を豊かにする時間は大人になってからではなかなか取れないので、大学生のうちにやっておくといいそうです。
(社会人の世界は厳しいなぁと思いました。本を読む時間が取れなくなるとは・・・。)
Q.「風野潮」という名前は本名なのでしょうか?
A.ペンネームです。元になった詩を教えて頂きました。めちゃくちゃ格好いい文語詩で、これを好きなお父さんは確かに格好いい。というか、そういう格好いい文学が身近にあるのってすごいなぁと思います。
Q.一日のうちで、小説はいつ書いていますか?
A.午後から夕ご飯までの時間に書いているのが調子のいい時で、締切前とかは深夜になることも。
夕ご飯は次男さんが作ってくれるそうです。
ちょっと思ったのが、「孝ちゃん?」って。「レントゲン」に出てくる孝ちゃん、次男さんから着想を得ていたりするんですかね?
ちなみに長男さんはドラマーをやっていらっしゃるらしい。
「ぼっちぼろまる」さんのドラムをやっているそうです。
ぼっちぼろまるさんの「おとせサンダー」。
エレキギターが尖った感じで格好良かったです。
ごめんなさい。ドラムは勉強不足でよくわからないのですが、歯切れのいい曲でした。
ぜひぜひ、聞いてみてください。
(ちなみにこの質問は、私がしました。もうね、心臓バクバクですよ。しかも手を挙げたのが一人という。「なんでやねん、皆、手あげようや~。出しゃばりな奴やと思われたらどないしょ~。」byひかり)
最後に
講演会全体を通して、いわゆる「イマドキ」の言葉も違和感なく入っていたことが印象的でした。
「氷の上のプリンセス」は、これを聞いてから読むとまた違った印象を受けそうだなと。
自分の意志で行った講演会は初めてだったのですが、楽しかったです。
そして勉強になりました!
風野さんの作品を、これからも読んでいきたいです。
好きな小説家さんが増えたぜ!やった。
風野潮さん、会場になった図書館の司書さん、ありがとうございました。
そして最後まで読んでくださった皆さんも、ありがとうございます。
今後ともよろしく、お願いします!
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