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西山隆行 ソロライブ in 鹿児島2022
先日7/8(金)は、プロのギタリストである西山隆行さんのソロツアー、その鹿児島公演日。
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西山隆行さんについて
西山さんのライブの特色は、なんといってもメインであるアコースティックギターの表現豊かな奏法。
サムピックを基本にフィンガーピッキングと合わせたハイブリッドピッキング、さらにギャロップ奏法も組み合わせ、彼の音楽に深く根付いているというカントリーの雰囲気のほか、"ギター"という楽器が持つ魅力を余すことなく堪能できる。
西山さんは今回のようにソロで活動しているほか、オーストラリアのギターヒーロー、トミー・エマニュエル(Tommy Emmanuel)のツアーでO.Aを務めたり、ゆずの楽曲のアレンジやレコーディング、北川悠仁さんのライブにサポートギターとしても参加。
さらに今年はディズニーオンクラシックツアーのバンド部門でギターも担当するとのこと。
鹿児島で観られる機会は限られているので、11月のディズニーオンクラシックも狙ってみてはいかがだろうか。
さて今回はスタッフとして呼ばれるとは思ってもみなかったのだが、当日は仕事を早く切り上げ、前回と同じくリハーサルから入ることに。
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リハーサル
今回はO.AとしてTK_stoneと、ジャックと豆の木の二組にもご参加いただいた。
西山さんの到着までリハーサルで音響や照明の調整をしたり、物販スペースの確認などを行う。
そして18:00ごろ、西山さん到着。後、すぐにリハーサル。
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スタッフとしての連絡を受けた際も伺ってはいたが、ギターのEQやリバーブは西山さん側で調整するとのことで、こちらのミキサーはフルフラット。
な、何もすることがない…。
西山さんの思い描いている音像。それを可能にする機材たちに彼の耳。
現場ごとに違うスピーカーの特性(また配置)をその場で解釈し、イメージ通りの音に近付ける。
その一連の作業が目の前で次々と過ぎていき、あっという間に"ライブ"仕様の音となった。
これを受けて確信した。
「何もすることがない」んじゃない。
「何もしない」ことが今回のライブにおける一番の貢献なのだと。
ツアーという連日のスケジュール、さらにソロでそれをこなす上では、自分で調整するというのはむしろ必然のスキルなのかもしれない。
しかしながらそのスピードが圧倒的だった。踏んできた場数の桁が違うのだ。
初対面なうえ時間の関係上、挨拶もそこそこにリハーサルに入ったが、物腰が柔らかく、こちらの緊張も解けてリハの後半はほぼ「観客」になっていた。
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リハ後は西山さんと鹿児島で縁のある面々が顔を出し、本番まで暫し談笑。
僕も現在のミュージックシーンに関する話など聞くことができ、嬉しかった。
開幕 O.A
19:30 ライブ開演。
O.Aの1組目は「ジャックと豆の木」
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電車で来る予定だったメンバーが、この日はあいにくの天候により1人来られなくなってしまったため、特別編成でのステージとなった。
でもそう考えると、そんな中ステージが成立してしまうのはメンバーの対応力やサポートの技術があるからに他ならない。
活動頻度自体は控えめだが、僕のイチオシはボーカルの優くんの歌声だ。
現在はカバー曲が多めであるが、オリジナル曲も制作して自分の気持ちのいいキーで歌って、演奏している彼らを観てみたい。
O.A2組目は「TK_stone」
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ボーカル・トクさんの力強い歌声と、ギター・石川さんの曲の隙間に心地よく入ってくるギターがかっちり噛み合って、砂時計にもファンが多いTK_stone。
ちなみに德永さんの「TK」、石川さんの「stone」でTK_stoneというユニット名。由来がわかっている今でも響きがカッコいい(笑)。
本人にもいつも言っているが、やはり歌声が凄くカッコいい。
御年70を越えているとはとても思えないパワフルで渋い歌声。
僕も同じ歳に音楽活動をしていたらあんな歌声になれるだろうか、と憧れる一人だ。
メインステージ
O.Aの2組により場も温まり、いよいよ今回のメイン西山さんの登場。
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開幕、挨拶代わりという「Nice to see you」から「Cat Dance」、「I go to Nashville」、「Windy&Warm」と続く。
僕も端っこの端くれではあるもののギターを弾く身としては、曲調に関係なくブレないそのリズムが圧巻だった。
強めのスイングがかかる曲もなんのその、その小気味良いビートを保ちつつアタマには正確なベース、スイングの効いたアルペジオが入る。
変幻自在とはこのことか…とギターでそれを目撃したこの日の衝撃はきっと残り続けるだろう。
ライブ披露したステージで、お客さんの歓声から曲名が生まれたという「Double rainbow」も、その情景が浮かぶようなあたたかいメロディーだった。
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ライブ中のMCではほとんど(全曲?)曲名の説明があるのも特徴的だと感じた。
歌詞がある曲と違い、詞に曲名が入ることのないソロギターというジャンルにおける、タイトルを覚えてもらうためのひとつの手段なのかもしれない。
そのおかげで、僕はこうやって曲名を交えながらライブのレポートを書くことができている。
彼のプレイに多大な影響を与えているというトミー・エマニュエル。
この日のお客さんに「知ってる人〜?」と聞くと聞いた本人も驚く、自分も含め1/3以上が手を上げ、そのトミーの曲である「Angelina」や「Struttin」など4曲をカバー。
途中MCで、
「念願のトミーのギタースコアを手に入れたが開いて2秒で閉じた」
というエピソードが面白かった。
難しいスコアあるあるではあるが、それは五線譜がほぼ塗りつぶされているレベルであったと想像できる(笑)。
怒涛のトミー・エマニュエルメドレーのあとはオリジナル曲の「Gift」。
それまで演奏の随所にあったパーカッシブな要素がなくなり、ギター一本なのにガラリと世界が変わったようにアルペジオメインの美しいメロディに彩られた。
そして最後は故郷である和歌山、そして世界遺産である熊野古道をイメージして作られた「Annual rings」。
タイトルは「年輪」を意味し、これまで巡礼する人たちを長い間受け入れ、見守ってきた樹木の器の大きさ、あたたかさがメロディから香ってくるようなゆったりと聴き入るような曲だった。
一度のステージでこんなにもソロギターの可能性、幅、表現力を知ることになるとは。
十二分に堪能したが、客席からのラブコールは止まらず、退出する間も無く(笑)アンコール。
観客の声に満面の笑みと演奏で応えてくれた。
大歓声の中、ライブは幕を閉じる。
閉幕
次の日は宮崎でライブとのことで、打ち上げは難しいかな…と勝手ながら思っていたが、お酒は大好きとのことで喜んで参加してくれた。
今日のライブの感想や過去に鹿児島でライブしたことを振り返ったりと、客席と話題は尽きない。
皆楽しそうにお酒を飲み、談笑が続く。
冒頭のディズニーオンクラシックの話、彼がライブのMCでも言っていたが
「40歳も過ぎて社会的に怒られるということも少なくなった今、ディズニーという一流のプロフェッショナルが集う公演でしごかれるのも良い経験になる」
と、現在もバリバリにハングリーな精神も僕は魅力的だと思った。
これからもっともっと進化していく西山さんのステージをまた観たいと思う。
ライブ後の小話
ステージが終わり、盛り上がりもひと段落したところで演者観客問わずのフリーマイク。
常連さんの演奏も多い中、初めて見る西山さんのファンだという青年が現れた。
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彼もソロギター奏者で、「鹿児島にもこんなギタリストがいたのか!」と場内をざわつかせた。
現在ギターを始めて2年とのことだったが、2年でこんなに…!と練習の密度の高さが窺える演奏。
鹿児島の貴重なソロギター人口としても、彼の演奏をまた観たい。
西山さんにとってもソロギター人口は貴重だったようで、彼の演奏直後「アドバイスするよ!」と言って静かな店の表まで行ってしまった。
僕は店内の持ち場を離れられなかったが、正直僕もそのアドバイスを聞きたくてしょうがなかった(笑)。
おわりに
大盛況で幕を閉じた今回のライブ。
しかし先にも書いたが歌モノの圧倒的な量に比べてソロギターというジャンルは少数派だ。
その人口の少なさ故に「受け入れられないジャンルなのかな…」とか「ソロギター大好きだけど参考にできる資料やライブが少ない」と感じている方は西山さんのライブに訪れてみてはいかがだろうか。
現在ツアーで全国を回っている最中なので、facebook、Twitterで情報を確認すると、すぐ近くでライブがあるかも。
CD・教則本 等