車で弾き語り-海と山椒魚
車で弾き語りシリーズで恒例となってきた米津さん、その中でさらに恒例のYANKEEから選曲。
あれ…もしかして今のところ全部?
今回は
海と山椒魚/米津玄師
このタイトルで思い出すのは、井伏鱒二の短編集「山椒魚」だろうか。
(※これから読んでみようと思う方はこの先、オチ以外だいぶネタバレにつき注意。)
この短編集の中でも、タイトルにもなっている「山椒魚」はかなり短いので読みやすいと思います。
山椒魚の棲家である岩屋。
その中で数年暮らした山椒魚はいつしか岩屋の入口よりも体が大きくなってしまい、一生その中で暮らすのだとにわかに悟る。
入口を壊そうと試みたり、それが出来ないと知ると岩屋に迷い込んだ者も同じ目に合わせてやろうと入口を塞いで意地悪をしてみたり…。
ある日同じように迷い込んだカエルを閉じ込める。そのカエルはかつて岩屋の入り口からかすかに見える外の世界を、自由に飛び回っていたカエルだった。
羨望と嫉妬の眼差しでそれを見ていた山椒魚は、岩谷から出すまいと躍起になる。それに応じるようにカエルも山椒魚と貶し合いの口論が続く。
しかしそんな口論も1年が過ぎ2年が経つ頃にはお互いもう言葉もなかった。
疲れ果てた末、山椒魚はカエルに尋ねる。
「お前は今どういうことを考えているようなのだろうか?」
その問いにカエルは…。
というお話。
「海と山椒魚」がこの作品にインスピレーションを受けているかは定かではないが、「山椒魚」のスピンオフと考えるのが個人的に楽しい。
「あなた」にどういう役を割り当てるか。「俺」はどういう経緯で岩谷の影にいるのか。
狭い岩屋の中から、海というかつて自分も居た広い世界に思いを馳せる。
やりきれない思いとノスタルジーを常に匂わせる、そんな歌だと思う。