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リンクルー2ー present

「ねーねー、どこ行くの?」
道行く女のコに声をかけまくる。
「ちょっと!!藤内くん!!!」
渚さんと数回目のデートだ。
「藤内くんて、ほんと困った男だよね」
渚さんが溜息混じりに言う。
「ナンパはオレのルーティンワークなんです♡」
「私とデートの時ぐらい止めたらどうなの?」
「何、渚さんらしくもない、ヤキモチ?」
「違うわよ!!その···信じてるし」
「渚さんはオレのミューズです♡」
「調子いいわね!」
渚さんの手をパッと握る。照れたような態度がたまらなく可愛い。オレはこの人に4年片思いしていた。
知ってるかな、オレがナンパする時って、サイコーに嬉しい時だって。

今日は渚さんの誕生日だ。5階フロアは渚さんのいる部署だ。初めて来た。照れが働いて、今まで来れなかったのだ。しょっちゅう来てたら、ヘンな奴に見られるだろうな、と思って。
「河内渚さんは?」
「あ、渚さんの彼氏さんですよね?渚さん休憩室に行ってると思います。」
「ありがと」
「あ、でも···」
「何?」
「···何でもないです!」
「?」
気にはなったが、大して聞きもせず、休憩室へ向かった。
ここが渚さんの仕事場か···。何気ない販売機も渚さんが買って、休憩していると思うと感慨深い。
休憩室に行くと、渚さんの、デザインされた靴が見えた。
「渚さ···」
「君の力が必要なんだ、渚」
慌てて隠れた。誰か居たのか。
「···でも···」
何だこの雰囲気。
「君がいなくなってから、寂しくなったよ。飯を作ってくれる人もいない。今、売れてるじゃないか、うちの雑誌。忙しくてさ。灯りが点いてた方がいいんだ。」
「あなたは勝手ね、そう言って私を振り回す。行くわね。」
「渚!!」
「離して!!!」
何だこれ!!何でこいつ、渚さんを抱きしめてるんだ!?
飯って何だ!?
···バンッ!!!
オレは我慢ができず、壁を蹴った。
「···!!!藤内···くん!⁉」
トントントントン···
「待って、藤内くん!!何でここに!?違うの!!違うの!!」
オレは何なんだろう。渚さんのこと何も知らない。
無視して階段を下りた。答えることが出来なかった。
くしゃっと、箱を握りつぶした。


「ねぇ、遊ばない?」
知らなかった、オレってムシャクシャしてる時もナンパが出来るのか。
会社の帰りに数回目でゲットした子を持ち帰った。
「わー、キレイな部屋ねぇ」
「インテリアの部署で働いてるからね」
「カラダもキレイなの?」
「見たい?」
···オレって最悪。

「じゃあね、結構良かったわよ」
「ゆかりちゃんも上手い···」
玄関のドアを開けると、
「!!!」
外階段の下に目を丸く見開いた渚さんがいた。
「···あ···渚さんっっ!!!」
「離して!!!」
「ごめん、渚さん!!!」
「どうせ私はおばさんよ!!若い子と浮気したくなる気持ちもわかるわ!!でも何でよりによって誕生日に···!!!」
渚さんはボロボロボロボロ涙をこぼした。
「そんなに泣いたら、目が落ちちゃうよ···」
「何で、浮気すんのよ···!!!しかも、若い子と···」
「年上は抱けなかったの。オレ。渚さんを思い出すから」
「···ばか!!!」
渚さんをしっかり抱きしめた。
「好きだよ、渚さん。ショックだったの。あの男、誰?」
「元のダンナよ。3年前に別れたの。」
「なんだ···。オレ渚さんのこと何も知らない。これから、いろいろ知りたい、渚さんのこと」
「うん···うん···。」
しっかりと渚さんを抱きしめて、キスをした。
「中に入ろうか」
「···うん···」
「ごめんね」
「私も好きよ」
初めてお互いの気持ちを言った気がする。


「改めまして!渚さん、ハッピーバースデー!!!はいコレ」
「なんでプレゼントくしゃくしゃなの?」
「オレが握りつぶしたから♡」
「···いいわよ···と、カギ?···!もしかして!」
「はい♡オレの部屋の合カギです。いつでも飯作って待っててくださいね♡」
「ちょーしいいんだから!···と···こっちはお守り?」
「はい♡」
「え?安産祈願?」
「はい♡将来を見越して♡」
「早いわよ!!」
「丈夫な子を産んでねー!!さ、出掛けよーか!渚さん、前から行きたい店あったんでしょ?」

渚さんはわかったかな。お守りの意味。なんて。
『いつでもウチで、子作りしましょーね♡』
『ばかたれ!!』

「いい誕生日だわ、ありがと···ゆうや」
「!初めて名前で呼んでくれた!」

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