なぜ癌で脳卒中を引き起こす?トルソー症候群の謎に迫る
【臨床メモ】
がん患者さんのリハビリをしていると、脳卒中症状が現れることが、
稀にあります。
✅トルソー症候群とは、
・癌(悪性腫瘍)の合併症の一つ
・癌細胞が分泌する物質によって血液凝固能が亢進し、
脳卒中を引き起こす
・1865年にフランスの神経内科医トルソーによって報告
・癌患者は癌でない人に比べて、脳梗塞を起こすリスクが約2倍
✅トルソー症候群の診断
・血液検査
FDPやLDHなどが高値
・CTやMRI:脳梗塞を確認
・心臓エコーや頚動脈エコー:心臓や動脈硬化由来の脳梗塞を除外
・腹部エコーや胸腹部CT:原発の癌を探す
✅原因
・癌細胞からの凝血原(凝固因子の前駆物質)放出や、
癌細胞による静脈内皮細胞の直接障害など
・血管内に血栓が形成
・膵癌、卵巣癌、肺がんで多い
・乳癌や卵巣癌、子宮頸癌などの女性がかかりやすい癌でも
✅症状
・脳梗塞と同様
意識障害、片麻痺、一側の感覚障害、頭痛、失禁、構音障害、
失語、失認など
・MRI:血管支配域に一致しない多発の高信号を認めることが特徴
✅治療
・基本的に抗凝固療法
・最近では直接作用型経口抗凝固剤(DOAC)が注目
DOACは肝臓と腎臓の両方で代謝されるため、副作用が少ない
・癌の治療も同時に行うことが重要
✅最後に
・トルソー症候群は癌と脳卒中という重篤な合併症
・癌治療中の方は全身状態を良好に保ち、水分補給を心がけ、予防が重要
・脳卒中の早期発見と適切な治療が重要
・癌と脳卒中の両方に対して最善の治療を受けることができるよう、
医師と相談
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?