🫧
睡眠薬を飲んでもうまく眠れない夜に、
君の輪郭を頭の中でなぞる。
目の形も、明るい茶髪も、見た目によらず低い声も、背筋の角度だって思い浮かべられるのに、
隣にいてもうまく笑えない
週に一度しか会えない君の
すれ違う時の香りを
小瓶にでも入れてとっておきたかった。
君の名前のシールが貼ってあるロッカーを何度もなぞった
はじめて会ってあいさつをしたとき
何も無かった世界が色付いた
毎週金曜日はスキップをして電車に乗る
君の名前をちいさくつぶやく
珍しい苗字と、よくある名前
何があっても君の苗字にはなれない
恋なんかではないと自分に言い聞かせていたのに
君が年上の男の人と歩きながら
見たことのない顔で笑っていて
ひとつ、ぱちんと
はじけて、終わってしまった
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