長崎県高等学校総合文化祭演劇部門県大会 演劇発表会県大会 感想
〇はじめに
長崎県大会2日間お疲れ様でした。
木・金と平日に渡っての公演でしたが、ホールにはたくさんの観客がいらっしゃいました。
今回の演劇は勉強も兼ねての観劇でしたが、本当に色々な高校の演出を知れていい経験になりました。
身勝手ながらも各校の作品の感想を書かせて頂きますが、「そんな風に受け取ったのかー」くらいで見て頂けると幸いです。
〇「偏晴風」聖和女子学院高等学校
まず、緞帳が上がってすぐに目に入ったのは散らかっている部屋。それだけでどんな風に話が展開していくのかワクワクしながら見ていました。
話の流れは、小説家の響さんが色んなことで悩んでいる高校生達の"話を聞いてあげる"という話でした。脚本の流れとしてはよくある流れだなとは思ったものの、ただ一つだけ"話を聞いてあげる"にすごく思い考えさせるものがありました。
特に考えさせられたのは絢華さんの言葉でした。これまでは"話を聞いてあげる"に重点を置いていた響さんが唯一行動をうつした場面で、でも、意味が無いことを絢華さん自身が知っている。そんな中で響さんは話を聞いてあげるのですが、自分自身見ていて思ったのが、「いじめ問題は根本的な解決はないけれど、話を聞いてあげるだけで救われる人がいるんだな。」と、また新しい視点を見つけることができました。
好評でもおっしゃられましたが、この作品は全体的にふわっとした雰囲気があって、自分はそれを人と人との適切な距離感なのかなと解釈しました。
いやー、本当に見ていて面白かったです。
あと、余談なのですが、葉鳥くんが凄い良い味を出していました。良かったー。
聖和女子学院高校の皆さん本当にお疲れ様でした。
〇「零れ話」長崎日本大学高等学校
こちらの作品はまた違った作品の面白さがありました。
まず、なんと言っても演出が素晴らしい。演出一つ一つがびっくりさせられるのが多くて「自分もまだまだ知ることがあるんだ」と、実感しました。キャストの性格もはっきりしていて見ている側は、とても楽しんで見ることができました。
話の流れは、ロボ研でコンテストに向かって至って平凡に制作している中、ある1つの出来事で様々な問題や疑問が生まれる話。前半と後半に緩急があって、重要な所のシーン、コメディ要素のあるシーンで丁寧に作り込まれているなと感じました。
伝えたいことがはっきりしていて見終わった後も余韻に浸っていました。先輩の大事な人の思い、そして、タイムマシーンができるまでの流れ、全てにメッセージ性があって考えさせられました。
続きが見たくなる作品で、60分以内がもどかしく感じました。
余談なのですが、私、「ライチ光クラブ」のジャイボが好きなのですが、ヨシ子(ヨシ男)さんがその役に似ていて内心「めっちゃ推せる!!」ってなりました。生徒会の人が入って来て焦って「今はヨシ男って呼んで欲しい」は好きでしたね笑。
長崎日本大学高校の皆さん本当にお疲れ様でした。
〇「Remember you」長崎南山高等学校
緞帳が上がってすぐに目に入ったのは、ドリブルをしている男子高校生。またこれは新しい始まり方だったなと思いました。
話の流れは、「修学旅行には行かない」と言ったサクヤくんの過去を追うような形で物語が始まりました。13年前に起こった津波災害がメインで長崎で起きた原爆もリンクして話が進んでいき、手話をするシーンだったり、津波がくるシーンだったり、細かく演出がされていてとても引き込まれる作品の作り方をしているなと思いました。
その中でも好きだった言葉があります。それは、サクヤくんが言った「言葉はいらないただ頭を下げろ」という言葉です。戦争を経験していない私たちにできることだと思います。その言葉を辛い過去を持っているサクヤくんが言うからこそ伝わる度合いが違うのかなと………。
サクヤくんが打つドリブルも悲しみが行動に出ているようで虚しくなりました。
前半は面白要素が多くて後半は伝えたいこと言う、そのメリハリが観客にとってとても見やすくて伝わりやすくて、見ていて飽きないなと思いました。
他の県の高校演劇に見られない題材が多くて見ていて勉強になりました。
長崎南山高校の皆さん本当にお疲れ様でした。
〇「わが故郷へ」諫早商業高等学校
第一印象は「生徒創作でここまでしっかりとした作品は初めて見た」です。やはり、制作なので流れが飛んだり止まったり間延びするのが良くあることなのですが、諫早商業高校さんは流れがしっかり掴めていて相当練習したのだろうなと、思いました。
時代は長崎県大村市を舞台にした太平洋戦争末期、日々過ごして行く中での命の尊さや友人との突然の別れが当時の時代背景で描かれていました。それぞれの思いが、観客に伝えるメッセージとしてこちらも考えさせるものが多かったです。
その中でも雅子さんが手紙を読むシーンがすごく印象に残りました。雅子さん役の子の迫力のある演技が、本当に高校生がしているとは思えないほど、心を掴まれる演技でした。源ちゃんの使命だったり、雅子さんの心の葛藤だったり、しっかり作り込まれていて世界観に入ることができました。
演出も素晴らしくて新しく学ぶことが多かったです。
諫早商業高校の皆さん本当にお疲れ様でした。
○「少年よアイスを抱け」長崎北高等学校
こちらの高校演劇は、冊子の概要に書いてある、「今回の劇は、長崎名物ちりんちりんアイスが題材です。」で、どのような展開になっていくのだろうと楽しみにしていました。
話の流れは、「戦後に残した被爆者達の差別や偏見」を題材に話が進んでいきました。そこでは、平和教育を受ける意味を問う高校生達とちりんちりんアイスを売るお兄さん、そして1人だけ周囲から浮いた高校生。お兄さんがちりんちりんアイスを売る理由やその高校生がちりんちりんアイスが嫌いな理由、全てにちりんちりんアイスが絡んでおり、そこから生まれる現代の課題がなんとも考えさせられる話でした。
その中でも見開き1ページに及ぶ(講評情報)被爆者の語りが印象に残っています。その語りは高校生が演技をしているはずなのに戦時中の苦悩や悲しみ、言葉に表せないほどの思いが観客の心にダイレクトに刺さりました。それは、しっかりとした脚本分析をしているからだと思いました。
そして、「差別がある限り戦争は終わらない」、原爆が残したものがどれだけのものか演劇を通して改めて考えていかなければならないと思いました。
ちりんちりんアイスと"ちゃんぽん"がすごく食べたくなる演劇でした。
長崎北高校の皆さん本当にお疲れ様でした。
○「八月の桜」創成館高等学校
こちらの作品は、他の高校と違って結末が分かっているのだけども、女子高生達はただただ普通の日常を送っている。そうしている間も刻一刻と時間は進んでいき最後は……………と、ノンストップでの劇で終始目が離せませんでした。
時は、昭和二十年八月九日。当時、三菱兵器製作所大橋工場では多くの学生が働いていました。同じ学校の深堀桜子と岩永妙子、そして田川節子は工場内にある「紙屑再生工場」で働く毎日を過ごしていました。その毎日の日常の中にも戦争の背景が描かれており、広島の原爆の話や赤紙などの話も…………。そして、時間は刻一刻と進んでいき、昭和二十年八月九日午前11時2分が経とうとしていた。(冊子のあらすじを要約)
見ていて計り知れない悲しみが胸に突き刺さりました。彼女達を見れば見るほど「この時間が続いてほしい」「あの時のタップダンスの時のように笑っていてほしい」と作品としての運命に抗うような思いが脳裏を駆け巡りました。
20分が経った時点で彼女達の役柄として愛着が湧いてしまい。その時はどうしようもない感情でした。
これらは確かに日本で起きた戦争の跡です。平和学習としてこれからも考えていかないといけない。演劇をみてそう思いました。
終わった後も彼女達の顔が忘れられませんでした。
創成館高等学校の皆さん本当にお疲れ様でした。
○「つなぎたい→未来」佐世保東翔高等学校
四本連続で戦争や平和をテーマにした作品だったのもあるのですが、最初のきらりさんの1人芝居でどのように展開していくのだろうとワクワクしながら見ていました。
舞台は、大学の教室前の廊下。そこでは、4人の献血サークルメンバーと共に2日間行われる文化祭の準備をしていた。それぞれ、「人の為になりたい」「もっと献血のことを知って欲しい」という思いを抱えている彼女達はこの文化祭を使って献血を勧めようとしていたのだが、そう簡単には上手くいかず1日目が終わってしまう。このままではいけないと思い試行錯誤するのだが、その過程できらりの過去が明かされていき……………。
まずはなんと言っても観客の意思疎通を測るのが上手いかったです。舞台上で1人芝居、それだけですごく緊張するはずなのにそこから会話をするという、純粋に凄いなと思いました。
そして、「献血サークル」といういかにもちょっと怪しそうなのに、後半につれて活動している意味を知っていくとやはり、心を動かされてしまいました。それは、あんなに明るくて前向きなきらりさんが話の軸だったからかもしれません。
脚本の作成の視点がいい意味で新しくてもっと幅広く世の中を見ていかなければと思いました。
また違う作品も見てみたいです。
佐世保東翔高校の皆さん本当にお疲れ様でした。
○おわりに
改めて、長崎県大会2日間お疲れ様でした。
長崎県だからこその名物だったり、戦争や平和をテーマにした作品だったり、色々学ぶことが多かったです。長崎、いいところだなぁと思いました。帰りはしっかりちゃんぽんとちりんちりんアイスを食べて帰ります笑。
九州大会にいく代表高校の皆さん頑張ってください。
以上、長崎県高等学校総合文化祭演劇部門県大会 演劇発表会県大会 感想 でした。