グロースについての9つのPrinciple
こんにちは、Hikaru Kashidaです。
メルカリという会社で、主にサービスのグロースのためのデータ分析をしています。最近は、ピースオブケイクという会社でnote(あなたが今見ているこのサービスです!)というサービスのグロースのための顧問なんかもしています。
こちらに自己紹介などを書いているので、お前誰よって思った方は見てみていただけると幸いです。
さて、TL;DR ー 長いので先に結論を...
本文が長くなったので、5行でクイックに結論を書いておきます。
・Growth Hackという言葉が前に流行したが今となってはどうでもいい
・シリコンバレーではGrowth Teamが存在する会社が多い
・グロースはPMFのあとに始まる
・僕の考えるグロースの全体構造は下図みたいな感じ
・いちばん最後に、僕の考える「9 principles of Growth」を書いた。長いと感じる人は、間を読み飛ばしてそこだけ読んでほしい
目次は次のとおりです。
間が長いので、結論(9つのPrinciple)を知りたい方はそこまで飛んでしまってください。
お願い
ということで結論の章まで飛ばしてしまっても構わないのですが、その結論に至るまでの文章でUSなどの良質な情報源の翻訳などを織り交ぜながらグロースについての現況を綴っているので、時間のある方は上から順に読んでいただけると幸いです。
あと、時間がなくてあとから読むよ!っていう方はブックマーク代わりにSNSにシェアするか、noteのスキボタンを押して貰えると喜びます。
注意
この記事には海外の文献を適当に意訳したものがいくつか登場します。
意訳が嫌な方は原文をご自身で読んでください。
では本文に入ります。
以下、常体(だ、である調)で書きます。
この記事はなにか
"グロース(Growth)"という言葉が好きだ。
noteのグロース戦略顧問に、樫田光さんが就任しました でも表明したように、自分のタイトルの一部として使うこともある。
ところで、グロースとはなんだろう?
英語一般の意味合いとして「ビジネスの成長についてのsomething」というニュアンスは理解できると思うが、"具体的にどのような概念または活動のことを指すのか” について語れる人は多くないのではないかと思う。
実のところ今や"Growth"という概念と言葉は、USのスタートアップやソフトウェア企業ではかなり一般的であり「Growth Team」や「Head of Growth」といった形で組織内に実装されている。
LinkedinでUS Regionで「Growth」や「Head of Growth」などを検索するとかなりの数のJob Positionが出てくる。
2020/1月現在でのLinkedinでの検索結果
しかしながら、日本ではだいぶ事情が異なるように思える。日本地域で同じ検索をしてもGrowthを冠したJob Titleほとんど出てこず、出てきても外資系の企業ばかりだ。(2020/1月現在)
この状況にやや危機感的なものを勝手に感じ、この記事を書くことにした。
日本語で「グロース」とGoogle検索すると、上位に表示されるものはほとんどが「グロースハック」に関する記事になっている。(こちらも2020/1月現在)
「グロースハック」は数年前にIT業界で流行った言葉で、「ある種の集客方法や顧客獲得についてのスタンス」のことであるのだが、詳細は後述する。
グロースハックは、日本でもいくつかの特化した書籍が出ており言葉としては国内でもIT業界内ではそれなりに市民権を得ているのではないかと思う。
参考:グロースハックに関する日本語での有名な文献
Sean Ellisの「Hacking Growth」の邦訳「グロースハック完全読本」
Ryan Holidayの「Growth Hacker Marketing」の邦訳「グロースハッカー」
ここで重要なのは、「Growth」を「Hack」するという、あくまで手法論のひとつであるGrowth Hackが言葉として有名なのに対して、その目的である「Growth」そのものについては(日本語では)非常に情報が少ないということだ。
幸いなことに、グロースハックという言葉を生み出した本家のUSでは「グロース」そのものについて書かれた情報も多く存在している。
また、「Growth」関連のタイトル(VP of Growth)を持った上級幹部やGrowth Teamなどはシリコンバレーの有名企業であれば、存在していることは多い。(例えば、Andy JoshはTwitter/Facebook/QuoraでGrowthチームを歴任している)
この記事では、主にUSの情報源を参考にして「Growth」という言葉についての定義や現状の環境を読み解きつつ、自分なりに解釈した"グロース"の意味合いについて語ってみたい。
グロースハッカー
前述の通り、グロースという言葉は日本でGoogleで調べると「グロースハック」に関する記事が多く出てくる。
グロースハックは一時期、Web/Mobileのスタートアップ界隈で人気を博した一種のバズワードだが、これは具体的には特定の職種/職能を指している。
まずはこの言葉(Growth Hack)について知るところから始めてみよう。
“Growth Hack”という言葉が初めて提唱されたのは2012年、Dropboxの初期のグロースを支えたSean Ellisの記事 Find a Growth Hacker for Your Startup の文中であると言われている。
さらにGrowth Hackerという概念をより広く普及したのはUberのグロースを担当していたAndew Chenの記事、Growth Hacker is the new VP Marketing であった。このポストでは、AirBnBがCraigslistへ自動投稿するようなハックを行い、見込み客を捕まえてきたという、非常に有名なグロースハックの事例が紹介されている。
その他にこの時代に語られたグロースハック施策として有名なものは、
・Hotmailがメール下部に署名を入れた
・Dropboxが招待プログラムを行った
などといったハック施策だ。2020年現在でも、グロースハックについて調べると日本語ではこれらの情報が繰り返し出てきて、逆にそれ以外の目新しい話はあまりない。
さて、グロースハックとは一体何なのか。
いくつか定義の流派はあるものの、比較的よく語られるのは次のようなクライテリアである。
正直なところ、個人的にはこれらは単に「Hack」の精神が表出した特徴を並べているだけという話で、要諦は「Growthを"Hack"するという精神」でしか無いと考える。この点は強調しておきたい。
つまり大目的であるグロースをいかに「低予算で」「素早く」「根拠を持って」「常識とは異なる方法で」行うかという手法論の話であるので、もし他にも目的(=グロース)を達成できる方法があるなら、Hack的であること自体は従属的である。
誤解を恐れずに言えば「Growth Hack」は重要でもなんでも無い。
グロースという山が大事であり、その山を登る上でGrowth Hackは面白い道のりである、というだけだ。
ではグロースとは何なのか?
グロースにまつわる環境
先述の通りSilicon Valleyでは「Growth」を冠したタイトルやチームを設置する会社がかなり一般的になっている。
USではGrowth Hackerという名称はそもそもあまり好まれておらず、言葉としてはやや古いものになっていると、現地を見ている人からは聞いている。(興味がある人はAndy Johnsの「Post mortem on growth hacker(グロースハッカー検死報告)」なども読んでみるといいだろう。)一方で、先述のようにGrowthという言葉やチーム自体はかなり当たり前の概念と化しているようだ。
USでの状況については、Andrew Chenの2018年のこの投稿をみてもわかる。 同記事から印象的だったセンテンスを引用してみよう。
"... be able to popularize the terminology and ideas around “growth hacking” in an essay I wrote in 2012. And these days, it’s spread and become its own ecosystem. Teams focusing on user growth have spun up across some of the best companies in the ecosystem! As of early 2018, when I had presented this, these were some of the companies that had growth titles or formal growth teams. Of course “growth hacking” has changed a lot – it’s no longer about hacks as much as a much bigger umbrella as it’s become a more professionalized, formal function within a team.
(意訳)
.... 2012年に書いた記事で「グロースハック」というアイディアと用語を有名にすることができた。そして最近は「グロース」に特化したチームが最高峰の企業内で独立して組成されるようになった。2018年の時点でいくつかの会社ではグロースのタイトルやチームが存在している。
グロースハックは大きく変化をし、それはもはや単なる「ハック」ではなく、より大きな概念の一部となった。組織内でより専門的で公式な機能となったのだ。
※ 注) 意訳が嫌な人は是非原文で読んでください。
ここに書かれていることは、要は「グロースハック」というのは過去の話で、それはあくまで「グロース」の一部だ、という認識と、グロースを専門とする「Growth Team」が組織内で組成され始めている時代背景についての言及だ。
また記事の中で、グロースチームが存在するいくつかの代表的なITベンチャーの名前が登場している。簡単にまとめてみた。
ここで名が挙がった企業のGrowth Teamについて理解するために、いくつかの代表的な会社に関する記事を紹介してみる。
case1. Facebook
Andy JohnsがFacebookでGrowth Team Managerを務めていた立場から、What is Facebook's User Growth team responsible for で同社のグロースチームの役割について答えているので、部分的に引用してみる。
facebookのグロースチーム
10億+ MAUへのスケールの道筋を描く
The user growth team was tasked with figuring out how to scale Facebook to 1 billion or more monthly active users
グロースに向けた過程の理解と最適化を定型化する
growth team was responsible for formalizing the process through which the company understands and optimizes towards growth.
データサイエンスチームと蜜に働く
The user growth team works very closely with the data science team to ask the right questions about what drives growth
ユーザ獲得とリテンションの両方を最適化する
there is a subset of the growth team...(中略)...does a really rigorous job at optimizing those channels for both user and advertiser acquisition and retention
プロダクト(新機能, 最適化)の開発に関与する
anything you can think of on Facebook.com have likely also been influenced one way or another by the growth team, either in developing new experimental products or helping optimize the products that were built by other teams
文化を作る
: リスクを取り、データに基づき、大きな目標に最短で向かう文化
The growth team plays a critical role in representing the data-driven approach at the company and establishing an aggressive and acceptable appetite for risk, moving fast in the direction of big goals, and utilizing data to help explain why the company may or may not be growing at any given point in time
マネタイズをする
There are many similarities between driving user growth and monetization.
こちらの回答は、少しシニアな目線というか、実務的なこと以上により概念レイヤー/経営アジェンダとしての視点から書かれているような気がする。Andy Johnsの目線の高さゆえだろうか。
case 2. AirBnB
AirBnB内にもグロースチームが存在している。
社内でームの立ち上げに関わったMona Gandhiの記事Growth is NOT Marketing, the Airbnb Theory を参考にしてみる。
単なるマーケティングではない ー それ以上のものである
‘Growth is not marketing’ – May sound like a controversial statement, but....(中略).... growth is not just about marketing campaigns, running Google ads or acquiring new users – it’s bigger than this.
"Distribution"がグロースの重要要素である
In the early days of Airbnb, Mona and her team thought of distribution as the driving factor of growth.
Acquisition, Retention, Monetization の3つがある
They broke the concept of distribution into three buckets; Acquisition, Retention, Monetization.
Retention - 穴開きバケツを塞ぐ
Not fixing retention early-on is equivalent to pushing newly acquired users into a leaky bucket, with no hooks to engage them or bring them back. As a result, product usage goes down and monetization never kicks in.
Monetization
The Airbnb growth story largely revolves around how the team leveraged strategies to drive customer retention, product monetization and distribution through the right channels with just one goal in mind – making it big.
case3. Linkedin
Head of Growthを務めたAatif Awanの Growth Hacker is Dead, Long Live Growth を読んでみたい。こちらはスライド形式でサクッと読めるので、要約などは乗せない。各人で読んでいただければと思う。
ちょっと情報量が多かったかもしれない。兎にも角にも、なんだかグロースチームはかなり色んなことをやっているようだ。
何でもかんでもやっていて、もしかしたらサービスに関することなら、ほぼ全てのことをやっているのではないのか、という気もしてくる。
グロースは何のためにあるのか
結局のところグロースチームは何でもかんでもやっているのでは ー そんな気分になったところで「Growth」が何を扱っているのか、を「Growthとは何を扱わないのか」という視点から考えてみたいと思う。
結論は書いてしまうと非常に簡単だ。
① 初期のプロダクト開発、PMFに至るまでの活動は"グロースではない"
② PMF以後にサービスについて行う活動のほぼ全てがグロースに含まれる
PMFとは "Product Market Fit"の略で、知らない方のために一言で説明すると「プロダクトがなんか良い感じになること」を指している。色々と説明したいところだが長くなるので、PMFについては別のnoteで書いてみたいと思う。
まず前半部分(①)について。
PMF前の活動はグロースではない。
Andrew Chenのこちらの記事 You don't need growth hacker で「PMFの前にはGrowth Hackの要素は必要ない」ということが書かれている。趣旨としては、Retentionが低いバケツの穴開き状態でGrowth Hackをしても意味がないとういうことだ。(= Leaking Buckets)
PMFとGrowthの関係はSean Ellisの「The Startup Pyramid」に端的に書かれている。記事からこちらのピラミッド図を引用させていただく。
この図はGrowthが「何でないか」を端的に表している。
つまり、P/M Fitの以前に行う活動は基本的にはGrowthではない。
基本的にはP/M Fitのために行われる活動は、リサーチなどを含めて多岐に渡るが、基本的にExecutionという意味では「プロダクト/サービスづくり」と「最低限のマーケティング」の2点に集約されるだろう。これらはグロースには属さない。
なお、Sean Ellisはこちらの記事でもP/M Fit前にGrowthの活動を行うのは間違った考えだと念を押している。(ただしネットワーク効果がある場合は別だとも述べている)
同様に彼の記事からの引用になるが、milestone to startup success の中では、「グロースの前にやっておくべきこと」について書かれている。時間に余裕がある方は読んでみてほしい。
次に後半部分(②)について。
PMF後のサービスについて行う活動のほぼ全てがグロースに含まれる
企業活動は多岐にわたるので「全て」がグロースに属すというのは無理があるが、実際のところ「かなりの部分」が “グロース” に含まれる取り組みにになるはずだ。
PMFを迎えたあとに実際に何が起こるのか?
おそらく、
- 効果的な集客チャネルを見つける
- 実際に集客施策を打つ
- プロダクトをさらに磨く、(必要なら)機能を追加する
- 上記に必要な分析を行う
- 事業パートナーを見つけできることを増やす
- CSをより強固なものにする
- などなど
だろう。
これらは全て事業の成長(=グロース)につなげるためのパーツだ。
再三の発言になるが、サービスにとって「グロース」は超重要な過程であり機能であり活動である。
こちらの記事 Growth Hacking is for Smart Marketers – Not Just Startup では、 PMF後のGrowthの重要性について次のように語られている。
Startups live and die by their ability to drive customer acquisition growth. Of course many startups are doomed to failure and can’t grow because they never reach product/market fit. But even with product/market fit, traction is tough. Startups are under extreme resource constraints and need to figure out how to break through the noise to let their target customers know they have a superior solution for a critical problem...
(意訳)
スタートアップでは、ユーザ獲得のためのグロースが生死を分ける。
もちろん、多くのスタートアップは残念にもP/M Fitすることなく息絶え、成長フェーズを迎えない。しかし、....
スタートアップはPMFしたとしても死にうる。
これはまさに、PMFに並んで「Growth」がスタートアップを大きく育てる上でのもう一つの重要なファクターであることを意味している。
グロースの重要性については先述のLinkedinのGrowth TeamのStatementを読んで見るのも面白いだろう。
“Marketing is a very small aspect of growth. If you look back at the history of how the internet companies evolved, you will see a trend of what increases your probability of being successful. 1990’s, building great technology was leverage enough to make it big. Fast forward to 2000’s, simply building great tech wasn’t enough. Design sensibilities and user experience started playing an important role in being a successful online company. But today, having great tech and a good product has become more mainstream. So most companies which are doing decently well, have both. Then what becomes your differentiator? It’s great distribution.
Make distribution your differentiator. Because, distribution is growth.”
(ラフに訳す)
テック企業に黎明期であった1990年は、テクノロジーが差別化要素になった。2000年になると、それだけでは不十分でデザインやUXが重要な役割を果たすようになった。
いまやその両方は王道になり、まともに運営している殆どの会社はそのふたつを備えている。
それでは何が差別化要因になるのか?それは "Great Distribution" だ。
Distributionとはグロースそのものだ。
"Great Distribution" はニュアンスとして難しい言葉だが、ここでの「Distribution」とは、日本語でいういわば"流通"が一番近いだろう。
つまり、商品がある前提でそれをどのように効率的に市場に流通させるか、という話と思えば良い。
ここで商品がある前提 = PMFしたサービスを持つ、と考えてもよく、PMFした後にいかに「上手な流通(Great Distribution)」を実行できるかがこれからの時代の一番の差別化要因になるとLinkedinのチームは論じていることになる。
良いProduct(Market Fitted Product, PMFしたプロダクト)
+
上手な流通(Great Distribution)
の足し算によって偉大な、多くのユーザに使われるサービスは生まれる。
Great Distribution = Growth と考えていいだろう、という論だ。
ちなみに蛇足になるが、このPMFしてグロースフェーズに差し掛かっているプロダクトを自分の中では勝手にProduct Worth Spreading(PWS)と呼んでいる。
TEDのキャッチフレーズ「Ideas worth spreading = 広がる価値のあるアイディア」を文字ったものだ。ここでいうSpreadingは上記のDistributionに近いものだと解釈できる。
グロースについての9つのprinciples
だいぶ長くなったが、ここまで様々な文献を読む中で(+もちろんこれまで自分が関わった事業を通じて)自分の中に芽生えた「グロースについての考え」を書いておきたい。
これらはいわば僕なりのプリンシプル であるが、内容を更新することもあり得るし増やすこともあり得る。グロースとは繰り返し行う最適化のプロセスなのだから。
9つのprinciplesのうち、
1~3はより前提・定義的な話でしかなく、重要なことは4~9かもしれない。
1 / グロースハックを忘れ、グロースを始める
現在日本では、"グロース"という言葉は"グロースハック"を彷彿とさせることがあるが、それは過去のバズワードなので一旦忘れて良い。
重要なのは"グロース"であり、ハック的であるかどうかはHowのレイヤーの話でしか無い。
2 / グロースはPMFのあとに訪れる
サービスがまずはじめに目指すことはProduct Market Fitであり、そこにグロースの要素は必要ない。
PMFのあとにはグロースのフェーズがやってくる。ここでは、サービスに関するほぼ全ての行為が「グロース」に属することになる。
3 / ふたつめの死の谷になりうる
多くのスタートアップはPMFというひとつめの谷で死に絶える。
しかし、そこを超えたのちにも、グロースフェーズで正しい戦略と実装を行わなければ大きなサービスになることはできない。
優れたProductであっても優れたDistributionなしには成功はありえない。
グロースはPMFと並ぶ、スタートアップが力を注ぐべき2大テーマの片方の柱と言えるだろう。
4 / 必要ならお金を使って良い
かつて語られたグロースハックは「お金を掛けずにユーザを獲得すること」に主眼を置いていた。ただしそれは「ハック」の部分の要素でしか無い。
グロースでは、ユーザ獲得のために適正な(そしてそれなりに大きな額の)投資をしてもよい。そして必要であれば、単なるユーザ獲得に限らずコンバージョン率の増加や離反防止などにもお金を使うことが許される。
続く5, 6, 7 についてはこの図を見ながら読んでほしい
5 / グロースは究極的には「LTV, CAC, Volume」の話である
サービスの成長のために登場する登場人物は煎じ詰めれば3つだけであり、それは「LTV, CAC, Volume」である。
プロダクトもしくは グロースの文脈ではよく出てくるワードやメトリクスとしてretention, conversion, churn, monetizeなどなどがあるが、これは最終的な終着地点でいえば「LTVを成すサブセット」である。
グロースとは、「LTV >> CAC *」の状況を作り出し、かつコスト上で効率的な獲得チャネルにコストを大きく投下して、それまでとは桁の異なるユーザ数(Volume)をサービス内に迎え入れるということだ。
不等号が崩れず、チャネルにいるポテンシャルユーザの数が枯れない限りは、理論的には投下コストの分だけサービスを成長させることができる** 。
* LTVやCACについては別途また記事を書きたいと思う。
* *もちろん、エコシステムが肝要で、多くの新規ユーザを入れることで成長を阻害するタイプのサービスなどはこの限りではない
6 / 故にマーケティングとプロダクトが両輪となる
LTVは本質的には「ユーザが金銭対価を払っても良いと思う価値の創出」に関する活動から生まれ、基本的にはプロダクトの世界の話だ。
CACはプロダクトをユーザに使ってもらうために必要な営業/宣伝活動から発生し、これはマーケティングの世界で起こる話だ。
このLTV-CACの双方を同じ組織の傘下に収めた形で運営を行うことがベストとなるため、グロースにおいてはマーケティングとプロダクトの融和が運命づけられている。
7 / ファンクションの融合が価値を生む
双方を分断された形でなく結合した形で行うことには大きな価値がある。
例えば、LTVを改善する活動は、許容CACを引き上げるためマーケティング戦略上の柔軟性をもたらすことになる。
また、通常最も大きな予算を持つマーケティング(主に獲得)領域がCACだけでなくLTVにも目を向けることで、サービスの外側(広告など)に全ての予算を透過するのではなく、サービスの内側(CRMなどだ)に一部のコストを投資することでより大きなアウトカムが生まれないかと考える。
そして、プロダクト開発のリソースを持つことでより効率的なCRMなどを実施することなども可能になる。
つまるところ、アクションの選択肢を大きく増やすことになる。
8 / Data Informedに意思決定を行う
グロースは、数値を始めとした「ファクト」を重視する。
理由は大きくふたつあり、
① 全てがサービスの成長に資するという前提
② 投資正当性の判断
なのだが、詳細な説明は割愛する。グロースのための数値を重視した運営が好ましいという主張自体は割と世に広く普及していると思っているので、異を唱える読者が多くないことを願う。
Data "Driven"ではなく、Data "Informed"としたのも強調したい点だが、筆者がこれについて語ると長くなるので、これも割愛させていただきたい。
ふたつの言葉の違いについては次のポストが素晴らしいので興味がある方は参照してほしい => 参照1 / 参照2
9 / グロースはチームプレイであり総合格闘技である
ここまででみたとおりグロースのフルコースは、とても一人で食べ切れる量のメニューではない。
必要なスキルやスタンスがかなり広範にわたるため、様々な職種のメンバーとチームワークを持って働く必要がある。
持つスキルセットは違えど、全てのメンバーにチームをつなぐ文化や価値観のインストールが必要になるだろう。
・Data Informed(意思決定に際してデータを材料にする)
・Try Fast, Fail Fast(やってみなはれ)
・Growth Matters(成長が全て)
など。
そして、続く
この記事では「グロース」を取り巻く状況やその定義、原理原則などについて述べた。
しかし文中に登場するいくつかの重要な概念(PMF, LTV, CAC, Retention など)については十分に深ぼって説明することができなかった。これについてはまた別途記事を書いて公開したいと思う。
また次の記事でお会いしましょう。