継続と変則の狭間に-サンダーランドの移籍情報 22/23冬-
はじめに
チャンピオンシップ復帰後の初年度、早くも昇格PO争いに絡む大健闘を見せるサンダランド。しかし、相次ぐ怪我人、ストライカーの不在、苦渋の0トップなど、ピッチ内では様々な問題が積み重なっており、ピッチ内は至って健全ではなかった。
そのような状況下で迎えた冬の移籍市場。ここでのアプローチによっては今までの不穏を清算できるため、非常に重要な1か月となる。
ということで今回は、22/23冬の移籍市場を簡単に振り返る。新加入選手の紹介も記事の後半に載せているので、そちらも併せてご覧ください。
補強ポイント
まずは、この移籍期間で補強が期待されたポジションについて。正直、補強ポイントはあからさますぎるが…。
①ストライカー
超超超最優先事項。移籍市場オープン前日にシムズがリコールされ、この時点でストライカーはスチュワートのみ。一人で物足りるはずがないため、複数人補強は必須。それぞれプレースタイルの異なる選手であればなお良い。
②ボランチ
現在の2ボランチのうち、ニールはレギュラーとして確かな地歩を固めているが、相方のエヴァンズの32歳という年齢が少々気掛かり。バックアッパーにはミシュやバがいるものの、もう一人中盤の底の選手を獲得し、層を厚くしたい。
この2つのポジションの補強が今冬では至上命題。とりわけ、ストライカーの複数人獲得はマスト。シーズン中に0トップで挑まざるを得なくなった反省をいざ活かす時。
しかも、この両ポジションでレギュラーだったスチュワートとエヴァンズがこの月に負傷、そのままシーズンアウトが決定した。ただでさえ手薄だというのにも関わらず、これは本当に痛い。より一層補強の必要性が増した。
移籍市場を終えて
実際の成果
個人的講評
テイラーはユース中心での出場が予想されるのでひとまず省くとすると、今冬は選手のINが4人、OUTが3人という結果になった。出場機会の限られていた選手をローンで放出し、1部リーグのトップチームで燻っている若手を獲得。守備陣の若返りやボランチの強化に成功したことは素晴らしい点だと言える。
だが、残念なことに最大の問題は解決せず。肝心のストライカーの補強がゲルハルトのみと、一人しか獲得できなかったのはこの先への不安が募る。スチュワートはシーズンアウトの状態であり、残り半年のストライカー問題を20歳のローニーに託すことになってしまった。ローン修行を初めて経験する彼に対し、肉体的にも精神的にも特大の負荷がかかることが懸念される。
デッドラインデイで最終的にストライカーを獲得するはず(実際にシムズを筆頭に、誰かストライカーを獲得する動きはあったそう)だと期待した分残念ではあるが、その点を除けば充実した移籍市場だったと言えるか。
新加入選手
ここからは新たにブラックキャッツの仲間入りを果たした4人を紹介する。
全員が22歳以下と、とてもフレッシュな面々が揃う。
DF #45 ジョー・アンダーソン
エヴァ―トンのアカデミーから加入した22歳のセンターバック。左利きかつ長身ながらU18時代にはLBでプレーした経験を持つ。サンダランドの最終ラインには珍しいビルドアップに定評がある選手であり、足元の能力が優れている。
またユースチームでは守備の要かつキャプテンの役割を務めており、将来のディフェンスリーダー候補の一人であることは間違いないだろう。
MF #39 ピエール・エクワー
ウェストハムのアカデミーから加入した21歳のボランチ。長身を生かしたフィジカルでボールを刈り取り、時には自らゴールを脅かす得点力も彼の特徴である。またCBやLBでもプレー可能というポリバレント性も兼ね備える。
共にかつてアイロンズの未来を嘱望されていたアリースや、ライバルとして同じフランス国籍のミシュやバが既に在籍している。そのためチームに早く馴染めそうなのは安心材料。
FW #22 アイザック・リハジ
リールから加入した20歳のウインガー。右サイドを主戦場とし、ボールキープ・ドリブルの際には卓越した技術が発揮される。プレースタイルとしてはアマド・ディアロに近いものを感じた。
マルセイユの下部組織出身で世代別フランス代表を渡り歩き、2019年のU17ワールドカップでは主力として活躍。昨年のゴールデンボーイのノミニー(top100)でもあり、経歴は十二分。そのポテンシャルをノースイーストで解き放てられるか。
FW #28 ジョー・ゲルハルト
リーズから加入した20歳のストライカー。身長は179cm、ストライカーとしてサイズがある訳ではないが、当たり負けする心配がないほどに身体的な強度がある。それに加え、狭い局面を自ら打開できる力や、奇想天外なプレーを見せてくれるクリエイティブさも持ち合わせている。他のフロントマンとの連携が深まれば、サンダランドの救世主にもなり得る。
おわりに
新たに4人の選手を迎え入れ、殊更に若返りを見せているサンダランド。もちろん、ストライカーの補強が不十分であったことは紛れもない真実である。しかし、移籍市場が閉まり補強ができない以上は、在籍している選手たちのブレイクスルーに期待をかけるほかない。監督のトニー・モウブレイも引き続き彼らの才能を開花させる働きが求められる。
そして、今季も夏から若手の積極的な獲得・起用を「継続」した。彼らの潜在能力が引き出され、急成長を遂げたこともあり、現在は嬉しいことに昇格プレーオフを視界に捉えている。しかし、怪我人の続出やストライカーの不在という状況の中、「変則」な方法を強いられ、その状況が未解決なこともまた事実である。
しかし、この「継続」と「変則」の葛藤をくぐり抜けた先に、何か手応えを掴めると信じている。そのためにも、まずは手に入れた新戦力を活用し、チャンピオンシップで戦える程の強固な地盤を固め、来年以降のシーズンに繋げること。これが“長期的な”サンダランド復活の為に必要になる点かもしれない。
それでは、残り数ヶ月のシーズンを楽しく過ごしていきましょう。🐈⬛