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中山連山ハイキングの記録

 1週間前のことになるが、兵庫県宝塚市の中山連山へハイキングに出掛けたので、その記録をつけておこうと思う。

 暫く前から、休日に暇を持て余すことが増えていた。何か新しいことをしようと思い、自分の好きなものを振り返った結果、自然の多い場所に出掛けた時のことをよく覚えていることに気が付いた。それで、ハイキングを始めることにしたのである。

 「鉄は熱いうちに打て」ということで、2月の半ばに神戸の須磨アルプスへ出掛けた。その後装備を充実させたのだが、天気に恵まれなかったり予定が立て込んでいたりして、なかなか第2弾を敢行できずにいた。そして先週やっと時間が取れたのだった。

 今回向かった先である中山連山は、兵庫県宝塚市にある古刹・中山寺の北側に連なる一群の山々である。僕は阪急宝塚線の山本駅を出発し、万願寺西山・長尾山・中山最高峰の順に、縦走路を東から西へ回った後、中山寺奥之院を経由して中山寺本堂へ出るルートを取った。

 須磨アルプスのハイキングに続き、今回もコース選びの際には『大人の遠足BOOK 西日本3 日帰り山あるき 関西』を参考にした(9 中山連山)。また、実際に歩いている途中は、「YAMAP」というアプリから地図をダウンロードし、所在地とルートを確認していた。

 ではここからは、ハイキング中に撮った写真を使いながら、当日感じていたことなどを振り返っていこう。

出発地点である阪急山本駅。出発時刻は10時30分だった。
まずは案内板も出ている最明寺滝を目指す。
15分ほど歩くと住宅街が途切れる。そこから先はすっかり山道だ。
最明寺滝到着。
落差は10mほどらしいが、険しい岩の間を水がザーッと流れ落ちる様は迫力があり、暫く足を止めて見入っていた。
本流が勢いよく流れ落ちるのに対し、端に逸れた水はゆっくりと岩肌をつたっていく。たったそれだけの違いに、なぜか強く惹き付けられた。
途中の丁字路まで引き返し、今度は中山頂上へ向かう。
木々に囲まれた山道を進む。

 やがて、行く手にいきなり巨大な岩が現れた。山本駅を出発して1時間余り経った頃のことである。ここから暫く、岩場の急斜面が続く(グーグルマップでは「宝塚ロックガーデン」と紹介されている)。コース一番の難所である。

急な斜面を前にして、少々怖気づく。気持ちを整えるため、麓の空き地で長めの休憩を取った。
先ほどの岩場を別の角度から撮影。後方の住宅地とは殆ど離れていない。改めて、山と街の近さに驚く。
岩場に取り掛かる。短いながらもロープが用意されている。
岩肌むき出しの道を進む。

 そして——

最大の難所と言うべき場所にやって来た。
登り切ったと思ったら、まだ半分くらいしか来ていなかった(写真左端に見切れている岩と、1枚上の写真中央右上部に出っ張って見える岩が同じもの)。
横を向くとこんな感じである。

 実を言うと、中山連山を訪れるのは今回が初めてではない。小学校高学年か中学生の頃、ハイキングで一度来たことがある。その時もこの岩場を登った。それまで木々に囲まれた山道しか知らなかった僕にとって、岩の急斜面との出会いは衝撃的だった。

 ともあれ、一度経験している岩場なので、見た目のいかつさに比べれば、恐怖心はそこまで強くなかった。ただ、デスクワークで姿勢を崩し、反り腰気味になっている現在、下手に気を抜くと体が後ろに反ってしまう。それだけは避けなければならなかった。

 両手でしっかり岩を掴み、足場がしっかりしていることを確かめながら登っていく。息が上がり、汗が滲んだ。それでも、登った先に待つという素晴らしい眺望を楽しみに歩を進めた。

なだらかなところに出た。振り返ると、大阪湾までの街並みが一望できた。良い眺めだと思った。
ぬか喜びだった……
鉄塔の下に辿り着く。今度こそ本当に岩場の頂上だった。振り返ってみる景色は一段と高かった。大阪国際空港がくっきりと見える。
ちょうど12時を回り、時報が流れてきた。アニメ『鉄腕アトム』の主題歌だった。宝塚は、手塚治虫さんが生まれ育った街である。

 大阪平野を一望しながら、長めの休憩を取った。汗を拭き、水分を補給する。それから気持ちを整えて、先に進んだ。

先ほどの岩場がウソのような道だ。
暫く進んだところで、中山連山の麓に造成された住宅街が見えた。ここに来る途中で万願寺西山の頂上を越えたらしいのだが、どこなのかよくわからなかった。
尾根づたいになだらかな道が続くのかと思っていたら、いきなり急な下りが現れてうろたえた。
下りて来た道を振り返る。ここもなかなかの険しさだ。
この光景を前にした時、恐竜の絵本に描かれていた太古の大地の姿を思い出した。大袈裟な連想に違いないが、思ってしまったものはしょうがない。
この辺りの山道は、土に覆われた場所も少なくなかったが、僕の写真フォルダに残っているのは岩肌が露出した部分の写真ばかりだった。岩が剥き出しになっている方が、険しい場所に挑んでいる気がして、心が燃えたのかもしれない。
一人で山に登り、岩の写真ばかり撮る。この状況にぴったりの言葉はないだろうか……一人、ぼっち、岩、ロック……そうだ、「ぼっち・ざ・ろっく」というのはどうだろう!——すみません、何でもありません。本家好きなのに本当にすみません。……みたいなことをずっと考えていた。

 そうこうするうち、岩場の頂上を出発してから1時間近く経っていた。お昼を食べたくなったが、手頃なスペースがなかなか見つからない。「空き地はまだか!」と思いながら歩いていると、突然絶好のスポットが現れた。

右側の岩場なら、他のハイカーの邪魔にならなさそうだ。

 早速行ってみると、ただ休憩所に使えるというだけでなく、眺望も素晴らしかった。僕の心は決まった。風をよけるため岩陰に腰を下ろすと、リュックから昼食を取り出した。

岩場で振り返り、左手を見たところ。北摂の山々が見える。手前に広がっているのはゴルフ場だ。
元来た道の方を向くと、木々の間から海まで続く街が見えた。
昼食は、近所のスーパーで買ったおにぎり4つ。どういうわけか、山に登ると決めてからこれが食べたくてしょうがなかった。おにぎりが山型だからかと一瞬思ったが、たぶん関係ない。

 景色を堪能しながら昼食を頬張っていると、「お邪魔していいですか?」と声を掛けられた。後から来たハイカーが、同じ岩場でお昼にしようとしていた。「大丈夫ですよ」と答えた。

 腰を下ろしたハイカーは4人組だった。中山連山には何度か登っているらしく、「ここが一番眺めがいいですね」とか「意外とアップダウンがあるので、獲得標高で言うと500mは超えると思いますよ」などと話し合っていた。立ち去り際にちらと様子を見ると、魔法瓶に入れてきたお味噌汁を飲んでいるようだった。「ああ、いいなあ」と思った。

 岩場を過ぎて間もなく長尾山の頂上を越えたらしかったが、これも万願寺西山と同様によくわからなかった。「登ったぞ」という感慨に浸れないのは寂しかったが、ともかくも中山最高峰を目指して歩を進めた。

中山最高峰までの道には、フェンスが設けられていた。
木漏れ日が降り注ぎ、枝葉の下を通る度に世界がほのかに明滅する。そんなちょっとしたことに感動を覚えたのは、やはり街中では手に入らない経験だからだろうか。

 そして13時45分、中山最高峰に到達した。山本駅を出発してから、3時間余りのことだった。

中山最高峰。辺りはなだらかな空き地になっていて、何組かのハイカーが休んでいた。

 ここから先は下りになる。最初にも書いた通り、中山寺奥之院を経由し、中山寺本堂へ抜けるルートだ。

幾つか分岐があるので、標識や地図を頼りに進む。
中山寺奥之院。建物は新しくて綺麗である。苔むした古寺を想像していたので、ちょっと拍子抜けした気分だった。
本堂へ下りていく途中にある夫婦岩。どう見ても岩が3つ以上あるので、どれがどう夫婦なのかよくわからなかった。
木々の間にのぞく街並みから、山を下ってきたことを感じる。
道端で見つけた日付。一体誰が並べているのだろう。
ハイキングコースとして見れば何も思わないような道だが、これが中山寺奥之院の「参道」だと思うと、かなり険しい気がする。

 奥之院を過ぎた辺りから、行き交う人の数がぐっと増えた。中山寺から奥之院まで登って下る人が結構いるようだった。家族で登って来る人も少なくなかった。本堂と奥之院との間は片道で3㎞、往復で6㎞になる。手軽なハイキングコースなのだろう。

 何はともあれ、無事山を下り、中山寺本堂に到着した。15時を少し回った頃のことだった。

 中山寺は子授祈願や安産祈願で有名である。妊婦さんや小さな子どもを連れた方が多く訪れるからだろう、山門から本堂にかけては、エスカレーターやエレベーターが完備されていた。僕自身はあいにく子授祈願にも安産祈願にも縁がないが、出産を間近に控えている人が身近に数人いるので、しっかり手を合わせた。

 もう1つ、中山寺の名前を知らしめているのが梅林である。何を隠そう、僕が今回の行き先に中山連山を選んだのは、どうせ行くなら梅の季節にしたいと思ったからであった。本堂での参拝を終えると、僕はすぐさま梅林に向かった。案内によると、この日既に「散り始め」とのことだったが、それでも枝ぶりのよい木は沢山あり、心ゆくまで梅の花を味わうことができた。

 というわけで、最後に中山寺の梅の写真を並べて、中山連山ハイキングの記録を締めくくることにしよう。

 今後もハイキングの記録はつけていこうと思いますので、良ければまたのぞきに来てください。それでは。

(第214回 3月17日)

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