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【レンズレビュー】Viltrox AF 28mm f4.5 FE

はじめましてのレンズレビューです。新しいレンズで,日本語レビューがあまり見つからなかったのでせっかくならと書くことに。ややつたない作例と文章ですがお許しください。
今回使ったボディはα7C,作例は断りのない限りjpeg撮って出しです。このレンズとα7Cの相性は,もはや7Cを念頭に作っているのでは?と思いたくもなるほどです。
しかし,軽量小型という性格では純正キットズームレンズSEL2860があり,28㎜のf4.5はそちらでカバーされているとも言えます。そこで,処々SEL2860との比較も交えておきたいと思います。


 レンズ概要


中国のViltroxから出たEマウントフルサイズ対応パンケーキレンズです。基本的な要素はこんなところ。

マウント:SONY FE
焦点距離:28mm
厚み:15.3mm
重量:60g
最短撮影距離:38cm?※
AF:〇
MF:×
外装:プラスチック
絞り:f4.5固定
フィルター:装着不可
レンズ構成:6群6枚(非球面レンズ2枚)
価格:15000円程度

※私の手元のレンズ(12月頭にAmazonで購入)には0.38m/1.25ftと書いてあるのですが,インターネット上には0.32m/1.05ftと書かれたレンズが多いです。詳細は分かりません。

まず驚くのは15000円という低価格でありながらフルサイズAF対応のレンズだということ。知る限りでは,FEマウントかつAF対応のパンケーキレンズは今までになかったのではないでしょうか。
その他特筆すべき点として,後述の八角形絞りとスライド式レンズキャップが挙げられます。このスライド式レンズキャップに起因して,外付けフィルターは付けられません。
レンズキャップが取り外し式でないこと,小型軽量であることを踏まえると,スナップなどお散歩カメラに向いているような気がします。
なお,使用上の注意ですが,後玉がややマウント部より突き出ているので,外して置く際には決してレンズ面を上にしないこと。

 AF

本レンズはMF非対応ということで,AFの性能は重要になってくるところです。なにせ,「AFが使えない≒レンズが使い物にならない」ですから。

端的に言うと,中の下でした。少なくとも迅速ではないですね。迷います。特に最短付近のピント合わせは苦手なようです。これはこのレンズに限ったことではないので仕方ないのですが,28mmf4.5固定というのも相まって,後ボケを作るのはかなり苦心します。
晴れの屋外,中央部では早いまではいかずとも問題なく作動します(この点で言えば中の上か,少なくとも不満はない)が,夜間や屋内など暗所ではピントが迷って,ピント面の前後を繰り返すことがあります。また,晴れであっても周縁部の建物にフォーカスしてくれないこともあり,なんとなく不便さがぬぐい切れませんでした。
たまにですが,モニターではフォーカスエリアの枠が緑になったにも関わらず見てみるとどこにもピントが合ってないというようなこともあり,帰ってから「あれ?」となった写真もありました。

12/26追記:
夜間固定しての夜景撮影も試してみましたが、AFが迷い、フォーカスがホールドしないため、思うように撮れませんでした。イルミネーションなどの光源が近い場合はなんとかなりますが、そうでないと夜間はかなり厳しいかもしれません。

28mm f/4.5 1/500s ISO100

 画質

不満はありません。
やや四隅ではフリンジが出る傾向にあるように思いますが,線がはっきりとしており,像の流れなども感じません。等倍のそのまた先に拡大しなければ気にならない範囲だと思います(α7CRなど高画素機ではわかりません。)。
歪みもあまり感じません。海外サイトでは,ごく微量にあるものの概ね良好との記載がありました。
逆光での特徴は後述しますが,順光であればそれといって問題もなく良好な写りです。周辺減光はありますが,SEL2860に大きく劣っているという印象を受けません。
レンズの特性と直接のかかわりは薄いものの,絞りの関係上夜間の撮影ではISO感度を上げざるを得ません。ただ,フルサイズ機ならそう気になることでもないかな?と思ったりします。これは好みの問題でしょうか。

SEL2860 28mm f/4.5 1/500s ISO100
VIltrox 28mm f/4.5 1/500s ISO100
28mm f/4.5 1/640s ISO100
28mm f/4.5 1/1250s ISO100 (APS-Cクロップ)
28mm f/4.5 1/640s ISO100
28mm f/4.5 1/640s ISO100
28mm f/4.5 1/160s ISO5000
左端
左下隅
28mm f/4.5 1/50s ISO2000
28mm f/4.5 1/40s ISO2500

 逆光

逆光耐性は極めて低いですが,フィルム時代のオールドレンズのようなノスタルジックではありません。ただし,うまく画作りにも活かすことができそうです。ここは作例を用いて感想を述べていきます。

まず,昼間の逆光では画角に太陽を入れなくてもフレアが発生します。

28mm f/4.5 1/400s ISO100
28mm f/4.5 1/640s ISO160
28mm f/4.5 1/100s ISO100

光源に近い部分が白くなってしまうもの(1枚目)や,扇形に出るもの(2枚目)が多く,ごくまれに環状のフレア(3枚目)も出るようです。ただ,環状フレアは狙って出すのは難しいような気がします。オールドレンズのようなフレアを期待することはやめておくのがよいでしょう。

28mm f/4.5 1/2500s ISO100

また,八角形絞りの関係で8本の光条が出ます。遮蔽物がない場合はかなり長くはっきりと出ます。クロスフィルターが一体になっていると思えばお得といえるかもしれませんね。僕は割と好きです。
ただ,注意点として,周縁部に光源を置くと以下のように中央に向かって弓なりになり,フレアが強く出ます。また,個体差かもしれませんがやや水平ではないようです。

28mm f/4.5 1/1000s ISO100

特に風景だとこの逆光耐性はマイナス点かもしれません。どうしても太陽が周縁部へ配置されてしまうので,フレアが大きくなってしまいます。

Viltrox 28mm f/4.5 1/2000s ISO100
SEL2860 28mm f/4.5 1/1600

上がViltroxの28㎜,SEL2860の広角端ですが,Viltroxでは左上の太陽が明るすぎて,空の明るさを合わせると地面が暗くなってしまいます。さらに,観覧車も一部分食われていますね。SEL2860がさらに絞れることを考えると,綺麗に風景を収めるという点では後者に軍配が上がりそうです。

ただし,半ば当たり前ではありますが逆光が全くダメというわけではないことも付しておきます。いい写りです。

28mm f/4.5 1/800s ISO100

中央寄りの光条は魅力的です。28㎜の広角ではどうしても画面内に主役が見出しにくいところですが,強烈な光条は画にインパクトを与えてくれること請け合いです。
また,冒頭で「かなり長くはっきりと」した光条が出ると書きましたが,イルミネーションなどでくどさを感じるほどではありません。

28mm f/4.5 1/1250 ISO100
28mm f/4.5 1/500s ISO100
28mm f/4.5 1/500s ISO100


28mm f/4.5 1/40s ISO640

 ボケ

先にも書いた通り,近接AFが弱いこと,28㎜のf4.5固定であることからボケはかなり限定的です。また,八角形絞りの関係でボケも八角形です。そのため,ややボケはうるさいかな?という印象を抱きました。

中央
左上隅
中央右

完全な八角形ボケではなく,中央に向かって角が取れていますが,やはり丸ボケとは雰囲気が違います。ただ,これはこれで面白いですね。

28mm f/4.5 1/320s ISO100
中央付近を等倍に拡大

昼間でも八角形のボケになっていることは確認できます。

 周辺減光

Viltrox 28mm f/4.5 1/500s ISO100
SEL2860 28mm f/4.5 1/500s ISO100

設定を合わせて撮影すると一目瞭然ですが,かなり周辺減光があることがわかります。絞りが固定のため,常にこの周辺減光は付きまといます。私は好きなのでそれでよいのですが。ボディ側でレンズ補正を効かせています。

28mm f/4.5 1/1000s ISO100
28mm f/4.5 1/500s ISO100 Adobe Lightroomにてレタッチ

 携帯性

文句ないです。ダウンのポケットに入ります。流石にGRⅢのような軽さ,小ささとまでは言えないものの,カバンに忍ばせてちょっと撮ることができるフルサイズといえば,無二の価値です。グリップ面とほぼツライチであるため,小箱のような感覚で収納できると思います。この点,いくらSEL2860が小型だとは言ってもかなり出っ張りますので。
スライド式のレンズキャップというのも,紛失,レンズキャップを落として壊した,知らない間に外れていたなんていう悲惨な事故を防ぐと同時に,撮りたいと思ってから撮るまでの時間を短縮してくれます。右手でグリップを持ちながら,中指か薬指を伸ばせば片手でも開閉可能ですし,ふらっと歩いてふらっと撮って……にはもってこいです。素晴らしい。
ただ,一点懸念点があるとすればキャップのレバーが出っ張っていることでしょうか。これが折れでもしたらレンズの利便性は大幅に低下するか,最悪の場合使用すらできなくなってしまいます。これがプラ製で出っ張っているのは正直なところ怖いです。


総評

良かった点

・軽量小型,フルサイズAF対応
・安価
・光条
・スライド式レンズキャップ

悪かった点

・遅くて迷いがちなAF
・MF非対応
・物足りないボケ
・f/4.5の固定絞り
・抑えられないフレア

 私はSEL2860を持っている方にも購入するだけの値打ちがあると思います。やはり携帯性はかなり大きな要素です。どんなレンズよりも高い携帯性能です。そのうえ描写がしっかりしている。ほかにレンズを買いあさったわけではありませんが,この価格でこの性能はお値段以上ではないかとすら思います。個人的な事情で恐縮ですが,カバンにPCやハードカバーの本などを入れて出かけることが多く,SEL2860をつけていても邪魔だな…と感じることが多かったです。
 最初から写真を撮りに出かけるならばカメラバッグに機材を詰めていけば話はおしまいです。三脚にカメラをセットして,しっかり狙った画を撮るなら,レンズは重くたっていいんです。(そうした用途をお望みの方にはお勧めできません。なんてったっていじくれる項目が3個も削られていますから!)でも,なんらかの,例えば学校の帰り道やちょっとした用事の行程で写真を撮りたい風景に出会ったとき,カバンから取り出して気軽に撮れるフルサイズがあったら魅力的じゃありませんか?そんな,自分のカメラを普通の傘から折り畳み傘に変えてくれるような面白さがあります。くれぐれも,駅のベンチにお忘れなきよう。

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