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神様の家系図と日本人の家系図 その1  アダムよりも古いのはなぜか その5  古代氏族の系図    土方水月   


 

【系図学(系譜学)】古代氏族の系図 その1 佐伯有清氏の古代氏族の系図  ひじかたすいげつ

 前にも述べたように、土方家の先祖は応神天皇の皇子であったが、廃太子された大山守親王であった。しかしながら、その他の先祖も同時にいたはずで、計算上は中世には1億人を超える先祖がいる計算になり、日本人全員が同じ先祖を持つといってもよい。

 先祖がよく知られた歴史上の人物であったり、天皇家につながる系譜を持ちたいと思うのは、日本人なら誰しもが思う気持ちであるとは思われるが、これは日本に限らず西洋でも同じであった。佐伯有清氏の「古代史の系図」の序には、朝日新聞のAP電の記事として「あなたの先祖はだれ」という記事を紹介している。

 その記事には、ロンドンの系譜学者協会にアメリカからの遊覧客が連日訪れているということが書かれていた。家系探査を行うのは「英国貴族名鑑」の編者であったL・G・パイン氏とその助手17名で、古記録を調査整理しており、古い家系の出産記録など550万件と結婚記録600万件と幾戦もの手記と印刷した系図と過去帳の写しを索引化しており、誰でもそれを見ることができるが、当時、調査を頼むとその金額は1日10ドルという高額であったということを紹介している。

 それによれば、自分の家系を古い先祖と思い込んでいた人がそうではないと知り不満に思う人や逆にエリザベス二世のようにそれまで知られていたよりも古い出自が分かった例もあったという。今年亡くなったエリザベス二世はこれまでは9世紀のサクソン王エグベルトの出自だとされていたのが、実際は4世紀のチュートンの族長の出であったことが分かったという。

 系図を持つ氏族は一般庶民ではなかった。天皇家につながる氏族や神につながる氏族か、戦国武将などの有名人の家柄につながる人たちで、とくに格式や土地や財産を持つ家がその系図によってそれを世襲する権利を主張するかあるいは確認するためのものであった。

 日本では多くの系図が神社や寺院に伝えられており、また名のある家には家伝書として代々継がれているものも多いが、なかでも讃岐の因支首氏の系図である「和気系図」、丹後の海部直氏の系図である「海部系図」、山城の鴨県主氏の系図である「賀茂神官鴨氏系図」、因幡の伊福部臣氏の系図である「因幡国伊福部臣古志」、但馬の神部直氏の系図である「粟鹿大神元記」、肥後の阿蘇公、信濃の金刺舎人直氏の系図である「阿蘇系図」などが古いという。

 ちなみに一般に知られる天皇家の系図も古いといえるが、それは古事記、日本書紀によるものであり、創作といってもよいものである。本当の系図は各家にあるものと思われる。また、先代旧事本紀はそのいかがわしい序が後に付けられたことで信憑性を疑たがわれてはいるが、本文には疑わしいところはないともいわれる。

 古事記日本書紀にいう“イザナギ”は「因支(いなぎ)」からとっていて、アマノカグヤマの“アマ”は「海部(あまべ)」からとっているし、“服部(はっとり)”も「伊福部(いふくべ)」であり、“大神(おおみわ)”、“大神(おおかみ・おおが)”も、「大神(おおかみ)」「神部(みわべ)」からであり、「大三輪(おおみわ)」からであった。

 つづく


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