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おじさんとの夏休み 13話

「ねえねえ」
 え?俺っすか?って、誰っ!
「君さ、この上の時臣の部屋にいるよね?」
 派手な柄のシャツきて、きったない金髪の今どきロン毛。見るからにまともそうじゃない…んだけ…ど。
「あ、ごめんね。俺、時臣ときおみくんの友達で春樹って言います。驚かせちゃったね」
 おじさんの友達?まあ、こんな人も友達にはいそうだけどさぁ…
「なんですか?おじなら今部屋にはいませんよ」
「おじ?君時臣くんの甥なんだー。へえ〜そうなんだ」
 なに…なんか値踏みされるみたいな目つきされた。
 余計な事言わないほうがいいな…おじさんとか言っちゃってまずかったかな。探偵だし…危ない事じゃなければいいけど。
「あ〜時臣くんいないんだ。ざんね〜ん。じゃあ君でいいや、ちょっと僕と出かけない?」
 は?
「え?なんでです?無理…」
「え〜俺時臣くんの友達よ?信じてよ」
 信じてよって言う人は信じられないんだよ!
「ちょっとそこまでだからさ。買い物付き合って欲しいんだよー。知り合い見つけたから嬉しくなっちゃった。一緒に行ってよ」
「俺は知り合いじゃないですし…勉強あるんで行けません」
「つれないな〜いいじゃんいいじゃん?」
「おい、春樹。いい加減にしろ」
 え?
「時臣く〜〜ん、久しぶり〜〜」
 急に声変わったぞ…抱きつかれておじさん迷惑そうだ…そりゃそうだ。
「お前な、なんでここにいるんだよ。俺のそばに来るなって言ってあんだろうが。飛田とびた呼ぶぞ」
「えっそれだけはやめて、時臣くん」
 やっぱおじさんだった。助かったー。この人キモくてやなんだよ。
「おい、ちょっと部屋に戻ってろ」
 おいって、甥にかかってんの?
「え、あ…うんわかった」
 アイスコーヒーまだ残ってんのにぃ〜
「あ、琴ちゃん。グラス借りてっていいかな」
「はい〜いいですよ〜」
 おじさん!俺の心読んでくれたの?琴ちゃんは個人経営のこのお店の看板娘さん。マスターは琴ちゃんのおじいちゃんなんだって。
「ほれ。これ持って部屋行ってろ。俺はこいつを返してくるから」
 返す?まあいいやキモかったし。
「ねえ時臣くん、ごめんねごめんね。許して。甥っ子さんなんだって?もう声かけないから、返さないで」
「甥って…そんなこと誰に」
「本人」
 おじさんは顰めっ面で俺をみたから、俺は
「部屋行ってまぁす…」
 って逃げちゃった。ごめんなさいっ!後で謝らなきゃ!
 その後おじさんは、春樹とやらをとある場所へ連れてゆき、18時頃にやっと戻ってきた。
「はぁ〜〜〜つっかれた!同じとこ行ったり来たりもうめんどくせー」
 ブルーのシャツの前をはだけて、エアコンの下で前をパタパタしてる。
「お疲れ様」
 唯希いぶきさんがビールの缶をダイニングテーブルに置いた。
「唯希サンキューな、春樹のこと教えてくれて」
「いえいえ、あたしもちょっとコーヒー買いに行ったら、悠馬君が絡まれてて。誰だろうと思ったら春樹だったからボスに連絡したの」
 あ、そういうことだったのか。
「俺もちょうど駅出たところだったからすぐに駆けつけられて良かったよ。あいつしつこいから、悠馬こいつじゃ手に負えないだろうと思ってさ」
 ビールをプシュッと開けたおじさんは、俺に向き直って一口飲むと
「お前な、あんまり甥とかそういう個人情報はダメだぞ、言っちゃ。しかも初対面の相手に」
 やっぱそこ来たかー。
「はい…それは反省してます。つい、おじって言っちゃって」
 おじさんは苦い顔をしながらビールを飲んでいたけど、少しため息の後
「唯希、この前の写真残ってるか?スマホ画像でもいいけど」
「あ、あるよ。スマホ画像だけど」
 唯希さんのスマホケースは、見た目を裏切らない可愛い装飾がゴッテゴテにされたカラフルなものだ。
「はい、これ」
 おじさんに画面を出して渡すと、おじさんはそれを俺に向けて見せてきた
「あれ、さっきのキモ男…?」
「こいつ春樹。今手配書がわりに各所に写真ばら撒いてるんだよ。お前来た日現像してたろ?あれ。こいつあぶねーやつでさ、お前さっき連れてかれるとこだったんだぞ」
「え?」
 いいいいきなり物騒なこと言われても…え?どういう事?

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