堀口恭司と世界のバンタム級【Fighter's File】
*この記事は執筆者の個人的な考えや推測が多く含んでおり、また格闘技関係者から直接話を聞いて執筆したというものではなくただの一格闘技オタクが書いたものであるため間違った情報が書かれている可能性があります。もし間違いやご指摘、誤字脱字があった場合はコメントなどで教えていただけると嬉しいです。
またこの記事内で選手や格闘技関係者の敬称を省略している場合があります。予めご了承ください。
➀はじめに
2021年のRIZINの目玉企画である「RIZINバンタム級ジャパンGP」も大晦日の出場選手が決まるなどいよいよ大詰めになってきました。明言はされていないもののGP優勝者は日本での堀口選手の次期挑戦者は濃厚でしょう。
また9月10日にBellatorへの定期参戦が決まったことで現RIZINバンタム級チャンピオンの堀口恭司への注目度は高まっています。
そこで今回の記事は堀口恭司選手の解説、堀口選手が挑むBellatorバンタム級を始めとした現在世界最注目の黄金階級である世界トップ団体のバンタム級情勢について解説していきます。
②堀口恭司 『史上最強のMade ㏌ Japan』
165㎝ 29勝3敗(15ko 3sub 11判定)
現RIZINバンタム級チャンピオン 元Bellatorバンタム級チャンピオン
元UFCフライ級ランキング3位。堀口恭司最大の特徴は世界でも唯一無二レベルの空手×MMAスタイルと強すぎるメンタルだろう。師匠である二瓶氏から授かった実践的な空手は世界で彼しかできないスタイルを作っている。またもう一人の師匠である『神の子』山本”KID”徳郁氏譲りの強靭なメンタルも強さの秘訣だ。アメリカでたった1人ワールドクラスのファイターすら音を上げる環境で研鑽を積み上げたその技術やメンタルはジムの誰もが認めるファイターである。
そのファイトスタイルは足を大きく開けて空手仕込みのステップを生かした遠くからの飛び込みを軸に構成されている。主に使う技は前の腕でのパンチ・飛び込みからのパンチ・前足を使ってのキックや奥の足で使うカーフキック・両足タックルなどであり、この構えから打撃のステップとタックルが可能な所が堀口のレベルの高さを表している。
↑堀口の両足タックルからのテイクダウンシーン(試合映像はvsマネル・ケイプ戦)
堀口恭司RIZINベストバウト3選
ではそんな堀口恭司のRIZINベストバウトと呼べる試合を執筆者の独断と偏見でピックアップして紹介する。また現在RIZINは試合の多くをYouTubeチャンネルで公開しているので興味がある方はここに挙げた試合以外も見てほしい。
堀口恭司vs石渡伸太郎2
二人の初顔合わせは2013年に行われたVTJ 2ndのメインカードであり当時堀口は修斗フェザー級王者、石渡は第2代キング・オブ・パンクラシストという国内トップ団体の現役チャンピオン同士の試合でありその注目度は高かった。そしてその試合は年度ベストバウト級の試合といわれるほどすさまじいものであったが結果は5ラウンドに堀口がKO勝利を挙げた。ここから堀口はUFCに舞台を移し、石渡は国内で猛者たちとしのぎを削りあう道を選びこの2人はもう交じり合わないと思われていた。
しかし時は2017年、場所はRIZINバンタム級GP決勝戦で2人はもう一度拳を合わせることとなった。日本の格闘技を盛り上げるために帰ってきた堀口と日本の格闘技を支え続けた石渡はまた再びその拳を交じり合わせることになる。
この2人の再開に言葉はいらない、4年前の激闘の再演か!それを超えた結末か!
堀口恭司vsダリオン・コールドウェル
この試合はRIZINバンタム級初代王者決定戦である。堀口恭司の相手はBellatorバンタム級チャンピオンのダリオン・コールドウェルであり、アメリカにおけるMMAトップ団体の1つであるBellatorが自分の団体の現役チャンピオンをよその団体に派遣するという前代未聞の出来事になった。この試合に敗北したらRIZINの存在そのものが明確にBellatorより下と位置付けられ、早い話が団体のメンツが潰されてしまう。さらに相手のコールドウェルは堀口よりも身長、リーチが約13cmも長く打撃系選手が苦手とする組技系選手でもある。
団体の威信とメンツをかけたこの試合は衝撃の結末となる。このRIZIN史上最大の試練を堀口は突破できるのか!
堀口恭司vs朝倉海2
この試合の前にある試合を見てほしい。その試合は当時RIZIN&Bellatorの王者であった堀口が衝撃のKO負けした試合である。
対戦相手は当時まだ無名の選手であった朝倉海であり、下馬評は堀口圧倒的有利だったが朝倉海は人生最大のチャンスを己が拳でつかみ、堀口は人生初のKO負けをした。もちろんリベンジマッチが期待され大晦日のRIZINで行われる予定だったが、ここで堀口に前十字靭帯断裂というキャリア史上最も大きなケガが襲った。このケガは格闘家の選手生命を左右するレベルであり、特に堀口のようにステップを多用する選手がなった場合は以前のような動きができない場合がほとんどである。
しかし堀口は持ち前のメンタルと驚異的な回復力でまたリングへ戻ってきてくれた。その復帰戦は2020年大晦日に行われ相手は朝倉海とのリベンジマッチである。堀口が療養中の間朝倉海は覚醒したようにKO勝ちを量産してスター街道を走ってRIZINの中心となりバンタム級チャンピオンにまで昇り詰めた。この試合の下馬評は前回と違い全くの五分で割れており、選手、関係者やファンも結末が読めない名試合になることを予感させられた。
史上最強の挑戦者と史上最強のチャンピオンの決戦は日本格闘技史に残る名試合となった。最強同士の決戦は僕らの想像を簡単に超えていった。
③世界のバンタム級 UFC編
この章からは世界のバンタム級事情を書いていこうと思います。まず最初の団体は現在規模・選手の実力・知名度ぶっちぎりの第1位UFCです。
(もしUFCについて興味がある方は執筆者がUFCについて書いた記事のリンクを貼るので興味ある方はそちらもご覧ください!)
そのUFCで日本時間の10月30日23時から行われるUFC267でバンタム級暫定王座決定戦としてピョートル・ヤンVSコーリー・サンドヘイゲンが行われます。
この試合が行われる経緯は本来この試合はピョートル・ヤンと現王者であるアルジャメイン・スターリングとの試合だったのですが、アルジャメインのケガによりサンドヘイゲンとの試合になりました。
さらに付け加えると、この試合の始まりは今年3月に行われたUFC259で当時バンタム級チャンピオンだったピョートル・ヤンと挑戦者アルジャメイン・スターリングの試合からストーリが始まります。その試合でヤンがUFCでは反則であるグラウンド状態での頭部への膝蹴りを行ってしまったため、反則負けとしてアルジャメインに王座が移りました。それを受けて今回のUFC267で両選手のリマッチが行われる予定でしたが、アルジャメインのケガにより急遽サンドヘイゲンとの暫定王座決定戦が行われる運びとなりました。
ピョートル・ヤン 『No Mercy』
170cm 15勝2敗(7ko 1sub 7判定)
元UFCバンタム級チャンピオン・元ACBバンタム級チャンピオン
現在バンタム級世界最強の元チャンピオン
ロシア最恐非情系ファイター。一流のボクシング・ムエタイ・レスリング・サンボスキルを持ちそれを高いレベルでミックスさせたMMAを行うヤンは、格闘技大国ロシアで最強と言われる団体のACBでチャンピオンとなりUFCにやってきた。ファイトスタイルは立ち技でプレッシャーをかけて相手との距離をつぶし強打を打つ、または首相撲や近距離での膝というムエタイでの技術を混ぜ非情なまでに淡々と相手の心を折るものである。試合中眉一つ動かさず相手を破壊するファイトは見てる観客すら恐怖を感じてしまうほどである。
そんなヤンの執筆者的ベストバウトはvsジョゼ・アルド戦である。この試合は元UFCフェザー級絶対王者ジョゼ・アルドとのタイトルマッチでありヤンの試合での対応力の高さが見える試合である。試合終盤からのヤンのすさまじい追い上げは必見!
ちなみにヤンの2つ名の『No Mercy』の意味は『慈悲はない』。
コーリー・サンドヘイゲン 『SANDMAN』
180cm 14勝3敗 (6ko 3sub 5判定)
現UFCバンタム級ランキング3位
バンタム級の名勝負男。キックボクシングでもチャンピオン経験があるほど高レベルの打撃をベースにしたスタイルでUFCファイト・オブ・ザ・ナイト1回パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト2回とるほど派手な試合をするファイターである。その打撃はスイッチ・回転系の蹴り技・飛び膝など多種多彩であり対戦相手は対策が難しい相手である。またバンタム級ではデカい身長180cm、リーチ175cmは相手の間合いの外から打撃をブチ込むサンドヘイゲンのスタイルに適している。
そんなサンドヘイゲンの執筆者的ベストバウトはvsマルロン・モラエス戦である。この試合では格上であるモラエス相手にサンドヘイゲンが臆せず自分の強さを押し付けた試合である。フィニッシュシーンは超衝撃的なため瞬き厳禁!
ちなみにサンドヘイゲンは虐待やネグレクトなどの被害にあった子供たちを助ける施設で働いている。
④世界のバンタム級 ONE編
続いての団体は現在アジア最大級の団体ONE Championshipです。ONEは2011年に始まった格闘技団体でシンガポールを中心に活動しています。日本からも青木真也、平田樹、若松裕也など多くのファイターが所属しています。そのONEで2021年12月5日の大会でバンタム級王座決定戦としてビビアーノ・フェルナンデスVSジョン・リネカーが行われます。(この大会は2022年初頭に延期となりました。)
ビビアーノ・フェルナンデス 『THE FLASH』
170cm 24勝4敗(2ko 9sub 12判定 1その他(相手の反則により勝利)
現ONEバンタム級チャンピオン・元DREAMフェザー級・バンタム級王者
ブラジルの関節王が2年ぶりの防衛線へ。DREAM参戦など日本でも知名度があるビビアーノが2年ぶりの試合へ向かう。そのスタイルは寝技を最大の武器としてスピーディーなグラウンドの展開を作って一本勝ちを量産している。日本ではDREAMで今成正和、大塚隆史などから勝利を挙げている筋金入りのグラップラーで、ONEではタイトルを7回防衛している現在40歳のベテランチャンピオンだ。
そんなビビアーノの執筆者的ベストバウトはvsケビン・べリンゴン4である。この試合は4回目となるべリンゴン戦であり、ビビアーノの寝技になってからの強さが際立った試合である。フィニッシュまでもっていくビビアーノのぶっ飛んだ寝技に注目!
ちなみにビビアーノは幼少期ブラジルの路上で生活するほど貧しい生まれである。
ジョン・リネカー 『HANDS OF STONE』
160cm 34勝9敗(16ko 4sub 13判定 1その他(相手の反則により勝利)
現ONEバンタム級1位
オクタゴンから飛来した石の拳。UFCのフライ・バンタム級で活躍したハードパンチャーがONEへやってきた。リネカーは近距離での強烈なパンチ、相手の逆転の芽をつぶす必殺のギロチン、そして何より打撃の打ち合いでひるまない勝負根性を武器にUFCの舞台で12勝4敗の戦績を挙げてONEへやってきた。その実力は前評判以上でONEでは元王者ケビン・べリンゴンをkoで倒すなどで3連勝を上げている。
そんなリネカーの執筆者的ベストバウトはvsケビン・べリンゴン戦である。回転系の蹴り技でうまく距離を作るべリンゴン相手にどうリネカーが距離をつぶしてパンチを当てるかは必見!
ちなみにリネカーの現在の練習拠点はアメリカン・トップ・チームで堀口恭司と同門である。
⑤世界のバンタム級 Bellator編
そして最後に紹介する団体はアメリカでUFCに次ぐ規模・実力を持つ世界トップクラスの団体Bellatorです。RIZINと協力関係にあるBellatorは日本でも身近に感じるトップ団体の1つであり、選手の交流も盛んです。そのBellatorで日本時間12月4日の大会でバンタム級王座決定戦としてセルジオ・ペティスVS堀口恭司が行われます。この試合が組まれた経緯は2019年の堀口恭司のBellatorのベルトを返上したところからストーリーが始まります。RIZINバンタム級チャンピオンとなった堀口恭司はBellatorへ殴り込み、タイトルマッチをものにしてチャンピオンになりました。しかし前述しましたが、堀口恭司は前十字靭帯断裂という大けがでチャンピオンが防衛できないとして自分が持っているベルトを返上しました。そのあとチャンピオンになったのがフアン・アーチュレッタでその選手を倒して現在のBellatorバンタム級チャンピオンになったのが今度対戦するセルジオ・ペティスです。
またBellatorは2022年にバンタム級のトーナメントを行うのではないかという噂が流れています。今回対戦するセルジオ・ペティス、堀口恭司を始め元ACBバンタム級チャンピオンであのピョートル・ヤンと1勝1敗の戦績を持つマゴメド・マゴメドフ、その選手に勝ったラフィオン・ストッツなど続々とトップレベルのファイターが集まっているこれからのBellatorに注目です。
↑前Bellatorバンタム級チャンピオンフアン・アーチュレッタ
172cm 25勝3敗(11ko 1sub 13判定)
相手をケージに押し付けるスクランブルファイトが強くそれを試合中ずっと行えるスタミナが最大の武器。過去にはBellatorフェザー級王座挑戦経験もある。
セルジオ・ペティス 『THE PHENOM』
167cm 21勝5敗(3ko 4sub 14判定)
現Bellatorバンタム級チャンピオン
元UFCフライ級1位。幼少期からテコンドーを習いUFCでも現UFCフライ級チャンピオンであるブランドン・モレノを倒すほどの実力者だ。その最大の武器は正確無比なジャブとカウンター、何よりも練習に向かうまじめな姿勢だろう。RIZIN男塾塾長石渡がアメリカへ出稽古へ行った際のセルジオとの練習秘話を語ったが、試合の対策の際に誰よりも緻密に対策を立てて練習していると驚愕したほどである。
そんなセルジオの執筆者的ベストバウトはVSフアン・アーチュレッタ戦である。変則的に動くアーチュレッタに対してセルジオがジャブと間合いをコントロールするステップ、打撃のカウンターで試合を支配した。試合運びの緻密さは必見!
↑この動画の1:46:54からフアン・アーチュレッタVSセルジオ・ペティス。
ちなみにセルジオの2つ名の『THE FENOM』の意味は『非凡な人』。
⑥おわりに
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。今回の記事はいかがでしたでしょうか。これから世界でもどんどん加速していく黄金階級バンタム級の戦いに執筆者も目が離せません!またRIZINバンタム級トーナメントもいよいよ大詰めとなり大晦日を残すまでになりました。波乱巻き起こるトーナメントでいったい誰が優勝するのか⁉皆さんが夢を託す選手は誰でしょうか!その熱い思いを絶やさずに大晦日まで待ちましょう!!
ここまで読んでいただきありがとうございます!