薄野小噺 #59 夜の店って客の横でニコニコしながら酒を飲むだけの簡単なお仕事でしょ? って思っている人は生き残れない。
『ホント、最近の子はマトモに喋ることが出来る人が少ないんだわぁ……』
配達先でベテランママがアルバイトの女の子の愚痴をワタクシにこぼす、コロナ前はたまにですがありました。
んで、
なんだかんだで話を聞くとワタクシからしても「そりゃあ酷いな」と思うようなこともありましたし、逆に「まぁ経験の浅さからくるものだからしゃあないわな」なんて思うこともありました。
まぁでも、そのようなやりとりは残念ながら
20年前からあるんです。
なぜなら自身が20代前半の頃、上司に連れて行かれた先のスナックのママさんも同じことを言っていたからです。
社会人あるある
『最近の若いモンは……』
と、似たような感じなのでしょうね。
更に加えて、古くからいるススキノの住人はこう言います。
『昔のクラブは周2回、30分ほど早く女の子を出勤させて勉強会をしたもんだ』
なるほど、と。
確かに昔のススキノには高級クラブというものが乱立している時代がありました。
飲み代は高いが客の満足のゆく接客をする。
そういった話も良く耳にしましたし、元ナンバーワンと言われた人が独立して開業した某スナック(現在はママが病気により引退したためありません)はスタッフの年齢層は高かったものの、配達に行く度にお客さんで一杯というのも目にしております。
そう、夜の店は
会話の上手さがかなりのウエイトを占める。
と言っても過言ではないのかもしれませんね。
良い例として、こんな話がありました。
とあるスナックに配達で訪れた時、裏方の人がため息をつきつつワタクシに愚痴をこぼしました。
『あの子、顔は良いんだけどお客さんが続かないのよ』
話を聞くと、大して話も出来ないのに酒だけは飲む。
当然、飲んだ分の支払いはお客さんです。
1回、2回は来てくれるらしいのですが、3回は続かないのだとか。
件の方、
ススキノの住人を見まくっているワタクシ目線からでも美人です。それもかなりの。
「へーぇ、綺麗な方なんですけどねぇ」なんて呟いたところ、その方が真顔になると言いました。
『いいかい兄さん。裏方だけどアタシもススキノは長いこと見てきたけどね、ここでやっていくにはお客さんに寄り添う会話が伴ってこそなの。顔だけで乗り切れるほど甘い場所じゃないのよ』
……そんなもんなのか。
とまぁ、これは10年前くらいの話ですが、このやり取りは鮮明に覚えております。
それからというもの、
このことを踏まえつつワタクシ、ススキノのママさん達を観察しておるわけですが、必ずしも饒舌であることや丁寧な言葉遣いをしなければならないというわけでは無い。ということ。
大切なのは
お客さんにいかに寄り添うか。
あと、客層に合わせた雰囲気作り。
ワタクシとてただの酒屋の配達員という立場のため、全てを知るというのは不可能ですが、金銭の受け渡しという短い時間の中ですが漏れ見える些細な所作というものが歴戦のママには見られるんですよね。
いやホント、正直な気持ちですし
媚びているわけではありません。
そんなわけで、ワタクシ自身も夜の店未経験ながらススキノで店を構えてしまった身として、拙いながらも日々、試行錯誤をしておるわけですよ。
閉店後、その日のお客さんとの会話を思い出しつつ
「あの発言はマズかったから改善せにゃな」
と、反復し改善に努めております。
まーでも、微妙に納得がいかないのがワタクシがガンで入院中にピンチヒッターで奥さんが立った時に来た常連さんから未だに
『マスターより奥さんの方が接客は上手いよね』
って言われることですよ。
こればっかりは才能としか言いようがありませんね。
普段『努力と練習は嫌い!』と豪語しているワタクシですが、こればっかりは努力と練習は頑張らにゃあと思っておるわけです。
そんなわけで、
出来うる限りレベルアップは目指しますので、これからもひいじいCAFEをよろしくお願いします。
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